■主要開発パイプラインの概要と進捗状況
1. ウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」
(1) 近視のメカニズムと市場規模
窪田製薬ホールディングス<4596>は、近視の進行を抑制または改善する効果が期待されるクボタメガネ・テクノロジーの開発に注力している。近視の種類は屈折性近視、軸性近視、偽近視、核性近視などに区分されるが、その多くは軸性近視と呼ばれるもので、眼軸長が伸展することにより網膜が焦点の後ろに移動し、遠くが見えにくくなるメカニズムとなっている。このため、眼軸長を短縮させられれば軸性近視は矯正できることになる。現在は治療法がなく、屈折矯正(メガネ、コンタクトレンズ、屈折矯正手術)によって光の屈折を調整し、網膜に焦点を合わせることで視力矯正を行っている。
近視人口は生活様式の変化もあって世界的に増加傾向が続いており、最も身近な疾患と言われている。同社資料によると、世界人口に占める近視の比率は2010年の約28%から、2050年には約50%(約47億人)に上昇するとの予測もある。2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による在宅時間の増加やスマートフォン普及の影響などもあって、世界的に近視が流行しているとWHO(世界保健機関)が警告を発している。特に、強度近視の人口は2050年に9.8%、約9.3億人まで増加すると予測されており、近視抑制は国際的な課題にもなっている。
特にアジア諸国では急速に近視人口が増加し、20歳以下の近視保有率は80%を超える国が続出しており、2050年にはアジア人における近視矯正に係る費用が年間450兆円に達するとの予測もある。文部科学省が実施している「学校保健統計調査」によれば、学生で裸眼視力1.0未満の生徒の比率は年々増加傾向で、2022年は高校生で71.6%、中学生で61.2%と過半を占め、小学生でも37.9%と3人に1人以上の生徒が近視となっている。近視が進行すると、将来的に緑内障や白内障など失明につながる重篤な疾患に罹患するリスクが正視に比べて2~5倍に上昇すると言われており、根治療法の開発が強く望まれている疾患でもある。
世界の近視用レンズ市場は、2021年の244億米ドルから2025年には273億米ドルに拡大するとの予測もある。現在、メガネ型ARデバイスとして販売している「Kubota Glass」が、近視進行抑制効果のある医療用製品として認可されれば大きな需要が見込めることになり、今後の動向が注目される。
(2) クボタメガネ・テクノロジーの仕組み
クボタメガネテクノロジーとは、網膜にAR技術によって能動的に光刺激を与えて近視の進行抑制、治療を目指す同社独自のアクティブスティミュレーション技術である。自然光のような広い波長と明るさを発光するマイクロLEDとミラーレンズを使ってMyopic defocusという周辺網膜より手前にピントを合わせた画像を投影することで眼軸長の伸展の抑制または短縮を促し、近視の進行を抑制する仕組みである。既にヒトでの概念実証試験を行い、眼軸長の伸展を抑制する効果が確認※されている。他社製品で子どもを対象とした臨床試験データはあるが、成人を対象とした試験を実施して効果を確認したのは、同社が初めてとなる。
※米国の眼科専門研究所にて、21~32歳の近視傾向のある被験者12名に対してクボタメガネ・テクノロジーを用いた試作機である卓上デバイスにて眼軸に与える影響を検証した結果、対象眼と比較して眼軸長の短縮効果が確認されたことを2020年5月に発表した。また、18~35歳の25名の被験者を対象としたウェアラブルデバイスでも同様の効果が得られたことを同年8月に発表した。
2021年には台湾で医療機器の製造許可取得及び医療機器のデザイン・開発会社として「ISO13485:2016」の認証を取得したほか、2022年には米国でも医療機器の登録を完了しているものの、まずは国内でメガネ型ARデバイスとして販売し、製品の完成度を高めたうえで海外展開を進めていく。また、同社はクボタメガネ・テクノロジーをベースに将来的にはスマートメガネやスマートコンタクトレンズ等に応用するなど、メガネのいらない世界の実現に向けた開発を推進する方針だ。
(3) 他社製品との比較
近視の進行を抑制するデバイスは各社が開発を進めており、既に医療デバイスとして米国や中国などで承認され販売が開始されている製品※1もある。Myopic defocusを用いた製品としては、MiSightをはじめ複数あるが、いずれも受動的に光刺激を与えるもので、同社のようにAR技術を応用して能動的で効果的な光刺激を与えるデバイスとは一線を画している。このため、装用時間は「クボタメガネ」が1日1~2時間で済むのに対して、他社製品は12~15時間とほぼ1日装用する必要がある。短時間の使用で近視進行を抑制する効果が得られる点は、「クボタメガネ」の長所の1つと言える。また、各社の臨床試験データを比較した場合、近視進行抑制率や眼軸伸長抑制率のデータにおいて「クボタメガネ」がトップクラスの値を示しており、有効性について他社製品より優れていることを示唆する臨床試験結果も出ている。点眼薬やオルソケラトロジー※2といった治療法もあるが、副作用やリスクの大きさが難点で普及するには至っていない。また、レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)といった外科手術も選択肢としてあるが、侵襲性が高いことが難点で眼軸長が伸びて視力が低下するリスクも残るため根治療法とは言えないだろう。
※1 米クーパービジョンのコンタクトレンズ「MiSight 1 day」が2019年に米国で初めて販売承認された。
※2 一般的なコンタクトレンズとは異なり、特殊なデザインの高酸素透過性コンタクトレンズを就寝中に装着する事により角膜の形状が正しく矯正され、日中を裸眼で過ごすことができる近視矯正方法のことで、2009年に日本でも承認された。
「クボタメガネ」の安全性については、眼光学機器の光放射の安全性を規定する国際標準化機構(ISO15004)の安全基準グループ1の規格を満たし、「潜在的な危険が存在しない」とされているほか、より高い安全性が求められるISO13485の小児用医療機器の認証も取得し担保されている。効能・効果が表示できる医療機器として販売するためには有効性を確認する大規模な臨床試験が必要となるため、現状は野外環境を再現するAR機器として日本で販売しているが、近視を研究する医師や学者の間ではクボタメガネ・テクノロジーが理に適っていると一定の評価を受けており、研究も進んでいる。
2023年には新たに、台湾の中国医薬大学新竹附設医院と前向き介入試験のための共同研究契約を締結した。近視の小児45例を対象に、低濃度アトロピン点眼薬0.01%投与群と「クボタメガネ」着用群のそれぞれの有効性、並びに併用療法による相乗効果の可能性を評価する試験となり(観察期間1年間)、研究結果が注目される。「クボタメガネ」に関しては、低侵襲性と高い安全性が担保されていること、6歳から自身で着脱できる使い勝手の良さ、有効性の高さに加えて、他の近視治療とも併用して利用できることも特徴であり、近視進行抑制デバイスとして将来的に市場を開拓する可能性は十分あると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
■主要开发管道的概述和进展
1。可穿戴近视设备 “久保田眼镜”
(1)近视机制和市场规模
久保田制药控股<4596>正专注于久保田眼镜技术的开发,预计该技术将具有抑制或改善近视进展的作用。近视的类型分为屈光性近视、轴向近视、假性近视、核性近视等,但其中大多数被称为轴向近视,它是视网膜由于眼轴长度延伸而移动到焦点后方,从而难以远距离看清的机制。因此,如果缩短眼轴长度,可以纠正轴向近视。目前,尚无治疗方法,视力矫正是通过屈光校正(眼镜、隐形眼镜、屈光手术)调整光的折射并聚焦视网膜来进行的。
由于生活方式的改变,全球近视人口持续增加,据说这是最熟悉的疾病。根据该公司的数据,还有人预测,近视在世界人口中的比例将从2010年的约28%上升到2050年的约50%(约47亿人)。自2020年以来,世卫组织(世界卫生组织)已发出警告,由于新型冠状病毒感染(以下简称 COVID-19)的传播和智能手机的普及,导致居家时间增加,近视在全球范围内很普遍。特别是,预计到2050年,严重近视的人口将增加9.8%,达到约9.3亿人,抑制近视也已成为一个国际问题。
特别是在亚洲国家,近视人口正在迅速增加,有许多国家20岁以下人群的近视患病率超过80%,还有人预测,2050年亚洲人与近视矫正相关的费用将达到每年450万亿日元。根据教育、文化、体育、科学技术部进行的 “学校健康统计调查”,肉眼视力为1.0的学生比例逐年增加,2022年,高中生占71.6%的大多数,中学生占61.2%,甚至小学生,至少有三分之一的学生是近视的。随着近视的发展,据说与正畸相比,未来患上导致失明的严重疾病(例如青光眼或白内障)的风险将增加2至5倍,而且它也是一种强烈需要开发根部治疗方法的疾病。
还有预测称,全球近视镜片市场将从2021年的244亿美元扩大到2025年的273亿美元。目前,如果作为眼镜型增强现实设备出售的 “久保田Glass” 被批准为具有抑制近视进展效果的医疗产品,则可以预期需求巨大,未来的趋势也将受到关注。
(2) 久保田眼镜技术的工作原理
久保田眼镜技术是该公司独有的一项主动刺激技术,旨在通过使用增强现实技术积极对视网膜施加光刺激来抑制和治疗近视的进展。它是一种抑制或缩短眼轴长度扩张的机制,它使用微型发光二极管将焦点投射到周围视网膜前方,该图像会像自然光一样发出宽波长和亮度,并抑制近视的进展。已经对人体进行了概念验证测试,抑制眼轴长度*的效果已得到证实。有针对儿童使用其他公司产品的临床试验数据,但该公司是第一个通过对成人进行测试来证实效果的公司。
*美国一家眼科专业研究所于2020/5年宣布,通过使用台式设备(使用久保田眼镜技术的原型)验证了对12名年龄在21至32岁之间有近视倾向的受试者对眼轴的影响,证实了与目标眼睛相比缩短眼轴长度的作用。此外,同年8月宣布,针对25名年龄在18至35岁之间的受试者的可穿戴设备也获得了类似的效果。
2021年,我们在台湾获得了医疗器械制造许可证,并以医疗器械设计/开发公司的身份获得了 “ISO 13485:2016” 认证,尽管医疗器械的注册已于2022年在美国完成,但它们将首先作为眼镜类增强现实设备在国内销售,然后在提高产品的完美程度后继续向海外扩张。此外,该公司计划促进旨在实现没有眼镜的世界的开发,例如将来将其应用于基于久保田眼镜技术的智能眼镜、智能隐形眼镜等。
(3)与其他公司产品的比较
多家公司正在开发抑制近视进展的设备,还有一些产品*1已经在美国、中国等地被批准为医疗器械,并且已经开始销售。有多种产品使用近视离焦技术,首先是MiSight,但它们都被动地提供光刺激,这使其与公司等应用增强现实技术提供主动有效光刺激的设备区别开来。因此,虽然 “久保田眼镜” 每天只能佩戴1至2个小时,但其他公司的产品则需要佩戴12至15个小时,持续将近1天。短时间使用可以获得抑制近视进展的效果这一事实可以说是 “久保田眼镜” 的优点之一。此外,当比较两家公司的临床试验数据时,“久保田眼镜” 在近视进展抑制率和眼轴伸长抑制率数据中显示出一流的值,临床试验结果表明它们在疗效方面优于其他公司的产品。也有诸如眼药水和角膜塑形术*2之类的治疗方法,但是由于这些困难,副作用和风险的程度尚未广泛传播。此外,LASIK和ICL(眼内隐形眼镜)等手术也是一种选择,但是由于高侵入性是一个缺点,因此仍然存在眼轴长度增加和视力下降的风险,因此不能说这是一种根本性的治疗方法。
*1 美国库珀视界的隐形眼镜 “MiSight 1 Day” 于2019年首次获准在美国销售。
*2 与普通隐形眼镜不同,在睡觉时佩戴专门设计的高透氧隐形眼镜可以正确矫正角膜的形状,这是一种近视矫正方法,允许您在白天用肉眼消磨时间,并于 2009 年在日本获得批准。
关于 “久保田眼镜” 的安全性,它们符合国际标准化组织的安全标准组1标准(ISO15004),该标准规定了眼科光学设备的光辐射安全性,并且 “没有潜在的风险”,此外,还获得了并保证了要求更高安全性的 ISO13485 儿科医疗器械认证。由于需要进行大规模临床试验以确认疗效,才能作为可以显示疗效和效果的医疗器械出售,因此它目前作为可再现室外环境的增强现实设备在日本销售,但是久保田眼镜技术在研究近视的医生和学者中已获得一定程度的评价,研究正在取得进展。
2023年,与台湾中国医科大学新竹附属医院签署了一项新的联合研究协议,进行一项前瞻性干预试验。该测试旨在评估每组接受0.01%的低浓度阿托品滴眼液和佩戴 “久保田眼镜” 对45名近视患儿的疗效,以及联合疗法(观察期1年)可能产生协同作用的可能性,研究结果引起了人们的关注。关于 “久保田眼镜”,它们具有微创性和高度安全性,除了易于使用和高效之外,从6岁起可以单独佩戴和拆下,它们还具有与其他近视治疗联合使用的特点,我们认为它们很有可能作为近视进展抑制设备在未来开发市场。
(作者:FISCO 客座分析师佐藤乔)