■筑波精工<6596>の事業概要
1. 主要事業
(1) 静電チャックとは
静電チャックとは、特定の素材基板(保持材)表面に電界を発生させることで、対象物(ガラスやシリコンウエハなど)を吸着保持する“治具(保持具)”のことである。対象物が非常に軽い・薄い素材の場合には割れやすく、あるいは反ってしまうことが多いため、長時間にわたって移動を繰り返すことは容易ではない。対象物が各種の製造プロセスを移動するような場合(例えばシリコンウエハなど)には、対象物を頑丈な治具に吸着保持させることで反りや割れといった損傷を防ぐことができる。
(2) 特色と強み
静電チャックの技術そのものは古くから存在し、様々な分野で使われているが、同社の静電チャックは以下のような特色がある。
1) 対象物が多様
同社の静電チャックの第一の特色は、対象物表面に電界を集中させることで、低電圧で高吸着力を発生させることにある。そのため、既存の静電チャックでは取り扱えなかったガラス・紙などの絶縁体の素材や極薄ウエハ等の半導体分野でも利用することができる。
2) 吸着力が強い
電界の表面集中とイオン分極の最適化により、吸着が均一で吸着力が相対的に強い。
3) 給電ユニットなしで吸着力を維持
一般的な静電チャックが給電ユニットを常時接続して吸着力を維持するのに対して、同社の静電チャックは給電ユニットを外しても吸着力を維持できる点が特色である。また、回路形成後のシリコンウエハだけでなく、将来的にはパワー半導体等向けとして有望視されるガリウムひ素、チッ化ガリウム、セラミック等にも応用可能になると見られる。なお、同社製品の中で、給電ユニットなしでも吸着維持ができる製品は「Supporter」である。
2. 製品別概要
従来は、主たる製品である「Supporter」及び「ステージ(ディスプレー向け)」とそれ以外の「その他(ディスプレー向け以外のステージ類似製品)」を製品別の区分としていたが、2024年3月期より給電ユニットから分離しても単体で稼働する静電チャックシステムの売り上げを「Supporter」、給電ユニットに常時接続して稼働する静電チャックシステムの売り上げを「ステージ」としている。また、今後、自動機ユニットの販売の重要性が増すことが予想されることから、「自動機」の分類を新たに設けた。
(1) 「ステージ」
給電ユニットが付属している静電チャックを、“システム”として販売している。対象物の吸着/分離をコントロールでき、薄いガラス板、スマートフォンのディスプレー用フイルム、大型ディスプレーのODF(液晶滴下方式工法)向けとなっている。顧客は、スマートフォンを生産するメーカーに部品を納入しているメーカーや、大画面(2m×2mなど)の液晶ディスプレーを扱うメーカーなどである。
(2) 「Supporter」
主力製品である“静電チャック”の一種で、ガラスの両面に特殊な素材を挟みこみ一体形成したものである。同社既存の静電チャックが持つ特色に加え、給電ユニットから分離しても吸着力を維持する特色を備えている。給電ユニットを用いて一度電界をかけると保持力は半永久的に維持され、もう一度給電ユニットを用いて電界を解除すれば、いつでも「Supporter」と対象物を分離することができる。このように「Supporter」は、従来の静電チャックにはなかった特色を有しており、“常識を打ち破った製品”と言える。「Supporter」は、半導体の製造プロセスでウエハの把持、運搬などに利用される。既存の製造ラインの大幅な修正をすることなく、50μ厚(μ=1,000分の1mm)などの薄型ウエハの製造プロセスで発生するウエハの反りや微細なクラックによる不良品の発生を防止し、製造ラインの自動化率と製品の歩留率を向上させる。同製品の売上高は、主に「Supporter」の販売枚数×価格(非開示)である。
「Supporter」の特長を要約すると次のようになる。
・0.5mm厚と薄いため、半導体ラインにそのまま投入することが可能
・ウエハ吸着後も外部給電を必要としない
・給電ユニットから分離しても吸着力は半永久的に持続
・薄型ウエハの加工を可能とするほか、クラック等の発生を防止して歩留まりの向上を実現
(3) 「自動機」
上述のように、「Supporter」に電界をかけて半導体製造ラインに自動投入するための機器。2023年3月期までは、試験用の半自動機であったが、2024年3月期に初めて量産ライン用の自動機を販売したため、新たな分類を設けた。
3. 半導体業界の動向
(1) 半導体製造プロセス
一般的にメーカーが半導体(ICチップ)を製造するプロセスは、まずシリコンインゴットを薄く切りウエハを作成する。この時点でウエハの厚さは約700μあるが、この表面に真空蒸着、エッチング、アニーリング、スパッタリング、イオン注入などの方法で回路を形成する。パワー半導体に特徴的なプロセスとして、この後回路側の面に保護用のテープを貼付した後、裏面を研磨して100~150μまで薄くする。この薄化後にさらに裏面へのイオン注入やアニールなどの工程が必要となる。これらの工程を何度も繰り返してようやく1枚のウエハの回路作成が完了する。したがって回路作成には、通常は6~10日ほどかかるが、複雑な回路では1ヶ月近くかかる場合もある。
この間、ウエハは真空状態や高温のプロセスなどを何度も繰り返し移動するが、裏面研磨後のウエハは非常に薄く、回路形成によるストレス蓄積等のため反りや割れといった損壊が発生しやすい。そのため回路生成プロセスにおいては、ウエハの表面(表面の回路が形成された面)に保持材を貼り補強してから裏面の回路形成プロセス間を移動させる。そして最後に回路裏面の回路形成が終了した後に、この保持材を分離する。従来は、この裏面保持の方法として保持材を接着剤で貼り付けて補強することが一般的であった。しかし、今後自動車分野でのパワー半導体(IGBT等)の需要が高まるとウエハはさらなる薄型化と大口径化が進むことが予想され、接着剤方式では薄型化(100μ以下)と大口径化(12インチ)への対応が難しいと業界では見られている。
(2) 自動車向け半導体
近年自動車のEV化が急速に進んでいる。この自動車のEV化にとって重要な要素の1つが半導体の供給である。特に動力(パワー)部分では、バッテリーから出た電気(DC=直流)をモーターで使用する交流(AC)に高速で変えるインバータが必須の部品となる。インバータ用の半導体(IGBT)では、径を大きくすることで1枚のウエハからより多くの半導体を作成できるため生産効率が上がり、1個当たりのコストを下げることが可能となる。しかし大容量(高アンペア)かつ高電圧(高ボルト)で表面と裏面の間でスイッチングを高速で繰り返すため、ウエハが厚い状態では発熱量※が増える。したがって、発熱の原因となるオン抵抗値をできる限り小さくするためウエハを薄型化する必要がある。半導体メーカーは、発熱量の点から半導体をできるだけ薄いウエハで生産し、かつ生産効率の点から大口径のウエハでの生産を目指している。
※インバータに使われるIGBTやMOSFETが発熱すると、EVのエネルギー効率が低下する。
(3) 半導体の薄型化と静電チャック
IGBTの生産プロセスでは、ウエハの薄型化がさらに進むという見方もある。さらに、多くのメーカーが生産効率の点から12インチ(300mm)ウエハへ移行する可能性が高い。その結果、ウエハはより薄く大きくなるため、反りや割れといった損壊のリスクが一段と高まる。それを避けるために保持材の貼付は必須だが、従来の接着剤方式ではプロセスの中で溶剤がガス化して半導体を汚染するリスクがある。また、保持剤を取り外す際にウエハが破損するリスクが高まるなど難点が多いと言われている。
そこで注目されているのが、同社が提供する静電チャック(方式)である。前述のとおり、同社の製品は一度電界をかけると半永久的に吸着保持を維持し、真空・高温などの環境下でも保持力は落ちない。薄型化・大口径化されたウエハに対して最適な製品と言える。
4. 主な顧客と需要
同社の主力製品である「Supporter」の主要顧客は半導体のデバイスメーカーである。需要は、生産される半導体の数(ウエハの枚数)に比例する。「Supporter」は1枚のウエハが一通りのプロセスを終了した後、ウエハから外し洗浄してから繰り返し利用することができる。したがって、仮に一通りのプロセスを終了するのに6日かかるとすると、1枚のSupporterは月に5回利用できるため、ウエハの生産能力の5分の1の枚数が必要になる(例:ウエハ生産能力が5万枚/月であれば、1万枚のSupporterが必要)。なお、「Supporter」の絶対寿命は約2年間である。
同社の主要顧客については開示されていないが、同社によるとIGBTの表面パターン(回路生成)に関連した特許は米国と日本に多く、この分野では中国が遅れている。そのため中国は表面プロセスではなく、薄型化の分野(裏面プロセス)へ積極的に投資を行っており、同社の主要顧客も中国や中国台湾メーカーが多いようだ。参考として、同社公開資料「中間発行者情報」に記載された2024年3月期第2四半期の販売先別実績の上位は、WISE WELL TECHNOLOGY CO., LTD.(台湾)、売上高92百万円(売上高比率63.0%)となっている。
5. 同社生産能力と特許政策及び競合
同社製品の生産については、一部を内製し、その他の部分を数ヶ所に分けて外注する「ファブライト」方式を採用している。このため外注先は最終的にどのような製品になるかはわからない。また需要が急増した場合でも、大型の生産設備を必要とする製品ではないため、同社は「生産が間に合わない事態にはならない」と説明している。
特許についても、外注の分散と同様に秘匿性を高める策を講じている。同社は数多くの特許を保有しているが、すべての技術・ノウハウを特許申請しているわけではない。申請をしていない技術の詳細は不明であり、競合会社が同社の技術を盗用して類似製品を製造することは難しい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
■筑波精工 <6596> 业务概览
1。主营业务
(1) 什么是静电吸盘
静电吸盘是一种 “夹具(支架)”,它通过在特定材料基板(保持材料)的表面产生电场来吸附和固定物体(玻璃、硅晶片等)。由于物体是非常轻或很薄的材料,因此很容易断裂或变形,因此不容易长时间重复移动。当物体通过各种制造过程(例如硅晶片等)移动时,通过吸附物体并将其固定在坚固的夹具上,可以防止诸如变形或开裂之类的损坏。
(2)特点和优势
静电吸盘技术本身已经存在了很长时间,应用于各个领域,但是该公司的静电卡盘具有以下特点。
1) 各种物体
该公司静电吸盘的第一个特性是,它通过将电场集中在物体表面,在低电压下产生高吸附力。因此,它还可用于半导体领域,例如玻璃和纸张等绝缘体材料以及现有静电卡盘无法处理的超薄晶片。
2) 吸附力强
由于电场的表面浓度和离子极化的优化,吸附是均匀的,吸附力相对较强。
3) 无需电源装置即可保持吸附力
普通静电吸盘通过随时连接电源装置来保持吸附力,而该公司的静电吸盘的特点是,即使拆下电源装置,吸附力也能保持不变。此外,预计它不仅可以应用于电路形成后的硅晶片,还可以应用于未来有望用于功率半导体等的砷化镓、氮化镓、陶瓷等。请注意,在该公司的产品中,即使没有电源装置也能保持吸附的产品是 “支持者”。
2。按产品分类的概述
传统上,主要产品的 “支架” 和 “舞台(用于显示器)” 以及 “其他(显示器以外的舞台类似产品)” 按产品分类,但是即使从2024/3财年起与电源设备分离也能单独运行的静电吸盘系统的销售是 “支持者”,通过持续连接到电源单元运行的静电卡盘系统的销售是 “阶段”。此外,由于预计未来销售自动机组的重要性将增加,因此已经建立了 “自动机器” 的新分类。
(1) “舞台”
带有连接电源装置的静电吸盘作为 “系统” 出售。可以控制物体的吸附/分离,适用于薄玻璃板、智能手机显示膜和大型显示器的 ODF(液晶滴注法)。客户包括向生产智能手机的制造商提供零件的制造商,以及处理大屏幕(2 m x 2 m 等)液晶显示器的制造商。
(2) “支持者”
它是一种 “静电吸盘”,是主要产品,通过在玻璃的两面夹住一种特殊材料而一体成型。除了公司现有静电吸盘的特性外,它还具有即使与电源装置分开也能保持吸附力的特性。一旦使用电源装置施加电场,保持功率就会半永久保持,如果再次使用电源装置释放电场,“支撑者” 和物体可以随时分开。因此,“支撑物” 具有传统静电吸盘所没有的特性,可以说它是 “打破常识的产品”。“支架” 用于在半导体制造过程中抓取、运输晶圆等。在不对现有生产线进行重大修改的情况下,可以防止在薄晶片(例如50 μm(μ=1/1,000 mm)的制造过程中发生的晶圆翘曲或细裂纹引起的缺陷产品的发生,并且提高了生产线的自动化率和产品良品率。该产品的销售量主要是 “支持者” 的销售数量乘以价格(未披露)。
“支持者” 的特点总结如下。
・由于厚度为0.5毫米,因此可以直接插入半导体线路
・即使在晶圆吸附后也无需外部电源
・即使与电源装置分开,吸附力也能保持半永久性
・除了可以加工薄晶圆外,它还通过防止裂纹等的发生来提高成品率。
(3) “自动机器”
如上所述,这是一种向 “支持者” 施加电场并将其自动注入半导体生产线的设备。在2023/3财年之前,它一直是用于测试的半自动机器,但是由于用于批量生产线的自动机器在2024/3财年首次出售,因此建立了新的分类。
3.半导体行业的趋势
(1)半导体制造工艺
通常,制造商制造半导体(IC 芯片)的过程是首先将硅锭切成薄片以制造晶圆。此时,晶圆的厚度约为700 μm,通过真空蒸发、蚀刻、退火、溅射和离子注入等方法在该表面上形成电路。作为功率半导体的一种工艺特性,在电路侧表面粘贴保护胶带后,背面经过抛光处理,使其薄 100 至 150 μm。变薄后,需要进一步的工艺,例如离子注入和背面退火。这些过程一遍又一遍地重复,最终完成了单晶圆电路的创建。因此,创建电路通常需要6到10天,但复杂的电路可能需要长达1个月的时间。
在这段时间内,晶圆在真空状态或高温过程中反复移动,但是背面抛光后的晶圆非常薄,并且由于电路形成等产生的应力积累等可能导致变形或开裂等损坏。因此,在电路生成过程中,保持材料附着在晶圆表面(表面电路形成表面的表面),然后在电路形成之间移动背面的进程。最后,在电路背面的电路形成完成后,将这种保持材料分离。传统上,通常通过在固定材料上粘贴粘合剂作为固定背面的方法来加固固定材料。但是,随着未来汽车领域对功率半导体(IGBT等)需求的增加,预计晶圆的直径将变得越来越薄,而且业界认为,使用粘合剂系统很难处理变薄(100 μs或更小)和更大直径(12英寸)的变薄。
(2) 汽车用半导体
近年来,汽车向电动汽车的转变进展迅速。将这些汽车转换为电动汽车的重要因素之一是半导体的供应。特别是在电源(电源)部分,逆变器是必不可少的组件,该逆变器将来自电池的电力(DC = 直流电)高速转换为电机中使用的交流电(AC)。在逆变器的半导体(IGBT)中,由于通过增加直径可以从单个晶圆中制造更多的半导体,因此生产效率提高,并且有可能降低单位成本。但是,由于在大容量(高安培)和高电压(高伏特)下高速重复在正面和背面之间切换,因此当晶圆变厚时,发热容量*会增加。因此,必须使晶圆更薄,以尽可能降低导致发热的导通电阻值。就热值而言,半导体制造商生产的半导体晶圆尽可能薄,并以生产效率为目标生产大直径晶片。
*当逆变器中使用的IGBT和MOSFET产生热量时,电动汽车的能效会降低。
(3) 更薄的半导体和静电卡盘
还有一种观点认为,在IGBT生产过程中,晶圆将变得更薄。此外,就生产效率而言,许多制造商很有可能转向12英寸(300 mm)晶圆。结果,晶圆变得越来越薄,因此变形或开裂等损坏的风险进一步增加。为了避免这种情况,必须安装保温材料,但是使用传统的粘合方法,存在溶剂在过程中气化并污染半导体的风险。此外,据说存在许多困难,例如去除保温剂时晶圆损坏的风险增加。
因此,引人关注的是该公司提供的静电吸盘(方法)。如上所述,一旦对公司的产品施加电场,吸附力就会保持半永久性,即使在真空或高温等环境中,吸附力也不会降低。可以说,它是制造更薄和更大晶圆的理想产品。
4。主要客户和需求
该公司的主要产品 “Supporter” 的主要客户是半导体设备制造商。需求与生产的半导体数量(晶圆数量)成正比。在一个晶圆完成所有工序,从晶圆中取出,清洗干净,然后反复使用后,“支架” 可以重复使用。因此,如果需要6天才能完成整个过程,由于每月可以使用1个支撑器5次,则需要晶圆生产能力的1/5的片数(例如:如果晶圆生产能力为50,000张/月,则需要10,000片支持者)。请注意,“支持者” 的绝对寿命约为2年。
该公司的主要客户尚未透露,但据该公司称,美国和日本有许多与IGBT表面图案(电路生成)相关的专利,而中国在该领域落后。因此,中国正在积极投资减薄(背面加工)领域,而不是表面工艺,而且该公司的许多主要客户似乎是中国和台湾制造商。作为参考,该公司公开材料 “中期发行人信息” 中描述的截至2024/3财年第二季度的最高销售业绩是WISEWELL TECHNOLOGY CO., LTD.(台湾),销售额为9200万日元(销售比率63.0%)。
5。公司的生产能力和专利政策与竞争
至于公司产品的生产,他们采用了 “fablight” 系统,其中零件由内部制造,其他零件分成多个地点并外包。因此,外包商不知道它最终会变成什么样的产品。此外,即使需求迅速增加,它也不是一种需要大型生产设施的产品,因此该公司解释说 “无法及时生产”。
还采取措施加强专利的保密性,类似于分散外包。该公司拥有多项专利,但尚未为其所有技术和专有知识申请专利。这项尚未应用的技术的细节尚不清楚,竞争对手很难通过窃取该公司的技术来制造类似的产品。
(由FISCO客座分析师寺岛升撰写)