微生物による金属腐食に対する診断技術開発に着手 ―廃炉環境から一般産業環境まで―
2024/10/04
国立研究開発法人海洋研究開発機構
一般財団法人電力中央研究所
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
日本製鉄株式会社
1. 発表のポイント
金属腐食に関する年間コストは6兆円を超える1が微生物の影響評価はできていない。
産学連携体系により微生物による金属腐食に対する大規模な診断技術開発に着手する。
開発技術は福島第一原子力発電所の安全な廃炉だけでなく一般産業へも展開可能である。
2.概要
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸、以下「JAMSTEC」という。)の若井暁主任研究員(超先鋭研究開発部門、専門分野:応用微生物学)を代表とする研究チームが、文部科学省(プログラム運営:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「JAEA」という。))の委託研究事業「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」の課題解決型廃炉研究プログラムに採択されました。本研究課題では、JAMSTEC、国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下「NIMS」という。)、一般財団法人電力中央研究所(以下「電中研」という。)、日本製鉄株式会社、JAEAの産学連携チームを結成し、「データ駆動型オンサイト診断技術:長期的健全性を確保するための微生物腐食リスク予測」と題した研究開発を行います。
微生物による金属腐食(微生物腐食、※1)の分野では、近年少しずつ微生物の影響が明らかになってきましたが、未だに診断技術等は確立されておらず、腐食事例の発生後に事後的に取り組まれることがほとんどでした。本研究開発では、集団としての微生物の振る舞いに注目し、深刻な腐食の発生を事前に予測するリスク管理のための技術開発を行います。
本研究成果は、東日本大大震災に付随して生じた東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(以下「1F」という。)の廃炉作業を安全に行うために必要な技術として提供されるだけでなく、石油・化学工場等の保全や我々の生活を支えるインフラストラクチャーの保全にも貢献します。
【用語解説】
※1 微生物による金属腐食(微生物腐食):金属材料の腐食が微生物の活動によって異常に促進される現象
3.背景
微生物腐食は、現象は分かっているが原因微生物に関する研究が途上にあります。JAMSTECでは、微生物を集団として捉えて評価することで、長い間ブラックボックスとなっていた微生物腐食の進行過程における微生物集団の変化を捉えることに成功しています(2022年6月4日既報)。また、研究チームは、これまでに高腐食性微生物の特異的な集積方法、新規腐食性微生物の分離、腐食に関連するバイオマーカー(※2)の同定、微生物が高い腐食性を発揮する環境条件の特定など、本研究課題に必要な様々な要素技術の開発に成功しており、本研究はそれらをさらに発展させて、より実用化に近い形にするものになります。
微生物腐食が発生し得る環境は水環境がほとんどであり、河川水を利用した工業用水環境や海水使用環境等で見られます。微生物腐食の発生を予防したい環境の一つとして1Fがあり、1Fには様々な水環境(処理水タンク、原子炉建屋内、サブドレンなど)が存在します。しかしながら、現状の技術ではこれらの水環境に対して微生物腐食のリスクを予測することは難しく、長期的健全性を確保するための診断技術の確立が早急に必要です。本研究では、多検体の同時試験が可能な微生物腐食解析手法の開発や現場環境を模擬した試験、事故炉環境を想定した試験を通して、データ駆動型の統計解析を駆使し、高精度に微生物腐食リスクを予測することが可能な革新的オンサイト診断技術のプロトコルを確立・提供することを目指します。
【用語解説】
※2 バイオマーカー:標的となる特定の生物機能を担う生物的な情報(特定の遺伝子配列やタンパク質など)
4.研究計画
研究チームは様々な環境での微生物腐食研究を進めてきた若井主任研究員を中心に、多検体同時腐食試験評価系の開発を進めるNIMS、1F環境を想定した腐食試験リアクターを用いた実験を実施する電中研、金属腐食と微生物集団の群集構造データの統計解析を実施する日本製鉄、放射線環境下での腐食試験等を実施するJAEAが連携することで、様々な腐食環境から蓄積されたデータおよび1F想定環境での腐食データを統合し、金属腐食活性と相関の取れた腐食性微生物検出技術の開発を進めます。(図1)
図1 研究体制 NIMSでは、既に開発済みの電気化学活性微生物の迅速集積方法を用いた腐食性微生物の集積培養や独自に開発する多検体同時腐食試験評価系を用いて1F周辺環境を含む環境試料中からの高腐食性微生物を探索します。また、多検体同時腐食試験評価系を用いて、防食に使用される各種薬剤等の効果について微生物腐食能を指標として評価します。本試験系は、廃炉環境以外にも一般産業環境を加味した検討が可能であり、波及効果の高い研究課題です。
電中研では、1F建屋内を想定した反応リアクターを構築し、これまで公開されている環境情報に基づいてパラメータを設定することで、現場環境を模擬した微生物腐食試験を実施します。本試験系では、廃炉工程において生じ得る環境変動を想定した試験も可能であり、今後の廃炉工程に対して長期的な安全性を確認するためにも重要な研究課題です。
JAEAでは、腐食生成物中の微生物分布や放射線環境下での微生物腐食について検討します。これまで腐食生成物から十分量の微生物由来DNAが回収できることは分かっていますが、腐食生成物中にどのようにこれらの微生物が分布しているかは明らかになっておらず、腐食メカニズムを解明するためには分布状況とそこでの微生物の作用を明らかにしていくことが不可欠です。また、様々な微生物による金属腐食能が確認されていますが、放射線環境下で実際に腐食が進行するかどうかの検討もできておらず、いずれの研究項目も重要な研究課題となっています。
日本製鉄は、排水処理の分野において複雑多様な微生物集団から重要水処理微生物を同定する統計解析技術2を有しています。そこで、NIMS、電中研、JAEAの実験において検討される様々な培養条件中での微生物集団について、JAMSTECにおいて網羅的に遺伝子解析を実施し、得られた金属腐食活性と微生物集団情報を日本製鉄の統計解析技術を用いて解析し、数千種以上が存在する微生物集団の中から金属腐食に影響している微生物情報を抽出します。
JAMSTECでは、前述の培養物等について微生物集団の群集構造解析を網羅的に実施することに加えて、腐食活性の高い微生物集団についてメタゲノム解析(※3)を実施し、金属腐食活性と生体情報を関連付けることのできるバイオマーカーを特定します。現場レベルで使用可能なDNA抽出プロトコルについては既に確立しており、バイオマーカー等の情報に基づいて、オンサイトで迅速かつ簡便に腐食リスクを予測する技術の開発を行います。(図2)
図2 技術開発の流れ 【用語解説】
※3 メタゲノム解析:環境中に存在する微生物の遺伝子情報をまとめて解析する方法
5.研究の波及効果
開発された技術は、当該研究プロジェクトの主要対象施設である1Fの水環境だけでなく、化学工場や石油関連施設、水環境にあるインフラストラクチャーの微生物腐食リスク予測にも展開可能です。また、本研究で開発する多検体同時微生物腐食解析手法は、予測診断後に必要な防食技術の開発(効果検証)にも展開可能であり、微生物腐食関連の様々な問題を低減させるために重要な技術と成ります。
参考文献:
1 腐食コスト調査委員会、わが国における腐食コスト、材料と環境誌、Vol. 69、pp. 283-306 (2020)
2 特許第7299485号「微生物群の特定方法」
お問い合わせ先:
(本研究について)
国立研究開発法人海洋研究開発機構
超先鋭研究開発部門超先鋭研究開発プログラム 主任研究員 若井 暁
E-mail:wakais@jamstec.go.jp
(報道担当)
国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部 報道室
電話:045-778-5690 E-mail:press@jamstec.go.jp
一般財団法人電力中央研究所 広報グループ
電話:03-3201-5349 E-mail:hodo-ml@criepi.denken.or.jp
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 福島廃炉安全工学研究所
運営管理部
電話:0246-35-7650 E-mail:fukushima-kouhou@jaea.go.jp
日本製鉄株式会社広報センター
お問い合わせ :
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微生物对金属腐蚀的诊断技术开发已经着手 - 从废弃核设施环境到一般工业环境 -
2024/10/04
国立研究开发法人海洋研究开发机构
一般财团法人电力中央研究所
国家研究开发机构日本核电研究开发机构
日本製鉄株式会社
1. 发表要点
金属腐蚀相关的年度成本超过6万亿日元,但微生物的影响评估尚未完成。
通过产学联合体系,我们开始着手开发针对微生物对金属腐蚀的大规模诊断技术。
该开发技术不仅可应用于福岛第一核电站的安全废弃物处理,还可推广至一般工业。
2. 概述
由日本海洋研究开发机构(理事长大和裕幸,以下简称"JAMSTEC")的主任研究员若井晓(超尖端研究开发部门,专业领域:应用微生物学)领衔的研究团队,获得了文部科学省(由日本原子核研究开发机构(以下简称"JAEA")运营的)委托研究项目“集结智慧的核能科学技术和人才培育推进项目”下的解决废弃物处理问题的研究项目。该研究项目将由JAMSTEC、国家研究开发机构材料研究所(以下简称"NIMS")、电力中心研究所(以下简称"电中研")、日本制铁股份有限公司、JAEA的产学联合团队共同合作,开展名为"数据驱动现场诊断技术:预测微生物腐蚀风险以确保长期健康"的研究开发。
在微生物腐蚀金属(微生物腐蚀,※1)领域,近年来微生物的影响逐渐显现,但诊断技术等迄今尚未确立,主要是针对腐蚀事故发生后进行事后处理。本研究开发将聚焦于微生物的集体行为,开展技术开发以进行事前预测严重腐蚀的风险管理。
本研究成果不仅将作为确保东日本大地震后东京电力控股株式会社福岛第一核电站(以下简称"1F")安全处理废弃物所需技术提供,还将为石油化学工厂等的维护以及支撑我们生活的基础设施的维护作出贡献。
【术语解释】
※1 微生物腐蚀金属(微生物腐蚀):指微生物活动异常加剧了金属材料腐蚀的现象。
3. 背景
微生物腐蚀是已知现象,但关于引起微生物腐蚀的原因微生物的研究仍在进行中。 JAMSTEC成功通过将微生物视为群体并评估,捕捉了长期以来微生物腐蚀进展过程中微生物群体的变化,这一概念长期以来一直被认为是黑匣子现象(2022年6月4日已报道)。此外,研究团队成功开发了多种需要的技术要素,例如高腐蚀性微生物的特定聚集方法,新的腐蚀性微生物分离,与腐蚀有关的生物标志物(※2)的识别,以及确定微生物表现出高腐蚀性的环境条件等,该研究已成功开发了多项必需技术要素,本研究将进一步发展这些技术,使其更接近实际应用。
微生物腐蚀可能出现在水环境中,主要出现在工业用水环境和海水使用环境等地方。作为希望预防微生物腐蚀的环境之一,1F拥有各种水环境(处理水箱、核反应堆建筑内、次生排水等)。然而,目前的技术难以准确预测这些水环境中微生物腐蚀的风险,急需建立诊断技术以确保长期的健康性。本研究旨在通过开发可以进行多样本同时测试的微生物腐蚀分析方法,通过模拟现场环境的试验以及设想中的事故堆环境的试验,通过数据驱动的统计分析,建立并提供一种能够精确预测微生物腐蚀风险的创新现场诊断技术的方案。
【术语解释】
※2 生物标志物:承担特定生物功能的生物信息(特定基因序列或蛋白质等)
4. 研究计划
研究团队在各种环境中进行微生物腐蚀研究,以NIMS推进开发多样样本同时腐蚀试验评估系统为主,通过电中研实施使用想象中1F环境的腐蚀试验反应器进行实验,通过日本製鉄公司进行金属腐蚀和微生物群落数据的统计分析,在辐射环境下进行腐蚀试验等,该团队与JAEA合作以整合各种腐蚀环境收集的数据和1F环境中的腐蚀数据,推进具有金属腐蚀活性和相关性的腐蚀微生物检测技术的开发。(见图1)
图1 研究体制 NIMS已经开发了使用电化学活性微生物的快速聚集方法来寻找环境样品中包括1F周围环境在内的高腐蚀微生物,以及使用自行开发的多样体同时腐蚀试验评估系统。此外,使用多样体同时腐蚀试验评估系统,以微生物腐蚀活性作为指标评价用于防腐的各种药剂等的效果。这一测试系统不仅可以用于废弃核电设施环境,还可以考虑一般工业环境,是一个具有较高波及效应的研究课题。
电中研将建立构想1F建筑内的反应器,并根据已经公开的环境信息设定参数,进行模拟现场环境的微生物腐蚀试验。该试验系统不仅能够模拟产生在废炉工程中可能出现的环境变化,还对确认废炉工程长期安全性具有重要意义的研究课题。
JAEA将研究腐蚀产物中微生物的分布以及放射线环境下的微生物腐蚀。虽然已经发现从腐蚀产物中可以回收足量微生物DNA,但目前尚不清楚这些微生物如何分布在腐蚀产物中,为了揭示腐蚀机制,有必要明确这些微生物在其中的分布情况以及其作用。此外,虽然已经确认了各类微生物对金属腐蚀的作用,但尚未研究这些微生物在放射线环境中是否会导致腐蚀,上述两个研究方向都是重要的研究课题。
日本製鉄在排水处理领域具备统计分析技术2来鉴定复杂多样的微生物群体中的重要水处理微生物。因此,针对NIMS、电中研、JAEA在实验中研究的各种培养条件下微生物群体,JAMSTEC将在日本製鉄的统计分析技术的支持下执行全面的基因分析,从数千种微生物群体中提取影响金属腐蚀的微生物信息。
JAMSTEC除了全面进行培养物等微生物群体的群集结构分析外,还将对高腐蚀活性微生物群体进行元基因组分析,并确定能够将金属腐蚀活性与生物信息相关联的生物标志物。已经确立了现场可用的DNA提取协议,并基于生物标志物等信息,将开发能够快速且简便地预测腐蚀风险的技术。 (图2)
图2 技术开发流程 【术语解释】
※3. 通过对环境中存在的微生物基因信息进行综合分析的方法
5. 研究的波及效应
开发出的技术不仅可以应用在1F水环境这一研究项目的主要对象上,还可以用于化工厂、石油相关设施、水环境中的基建微生物腐蚀风险预测。此外,本研究开发的多样本同时微生物腐蚀分析方法也可用于开发所需的防腐技术(效果验证),并可应用于降低微生物腐蚀相关各种问题,是一项重要技术。
参考文献:
1. 腐蚀成本调查委员会,《我国的腐蚀成本》,材料与环境志,Vol. 69,pp. 283-306(2020)
2. 专利第7299485号《微生物群的鉴定方法》
联系方式:
(关于本研究)
国立研究开发法人海洋研究开发机构
超先锐研究开发部门超先锐研究开发方案 主任研究员 若井 暁
E-mail:wakais@jamstec.go.jp
(新闻担当)
国立研究开发法人海洋研究开发机构 海洋科学技术战略部 新闻室
电话:045-778-5690 E-mail:press@jamstec.go.jp
一般财团法人电力中央研究所 广告群
电话:03-3201-5349 电子邮件:hodo-ml@criepi.denken.or.jp
国立研究开发法人日本原子力研究开发机构 福岛废炉安全工程研究所
经营管理部
电话:0246-35-7650 电子邮件:fukushima-kouhou@jaea.go.jp
日本制铁股份有限公司广告中心
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