■新中期経営計画の方向性
日本アジア投資<8518>は新体制の下、新たに3ヶ年の中期経営計画を公表した。事業領域を「投資開発事業(実物資産投資)」「投資運用事業(有価証券投資)」「ファンド・プラットフォーム事業(ファンド事務受託)」の3つに再定義し、新たな事業方針に基づいて事業を拡大する考えだ。また、外部環境及び収益機会を整理したうえで、補完・代替可能な事業ポートフォリオを構築し、様々な経済環境に対応できる投資資産及び金融商品の開発・運用を行う考えだ。これまでとの大きな違いは、ファンドの組成や融資の調達により外部資金を活用した投資を徹底するところにある。今まではファンドの設立ができなかったことから自己資金による投資(プロジェクト投資や戦略投資先へのPE投資)を行い、融資資金の活用も十分ではなかった。今後は国内外の投資家への魅力ある投資機会や投資サービスを提供するファンドビジネスとしての方向性をより強く打ち出す考えだ。自己資金による投資を抑制・圧縮する一方で、投資開発事業・投資運用事業のAUMを増加させ、AMフィーによる安定収益を積み上げるとともに、財務の健全化をさらに進める。
1. 事業方針
(1) 投資開発事業
エネルギー価格の高騰や労働力不足によるインフレ圧力、さらには金利上昇などをめぐり先行き不透明な経済情勢が続くなか、インフレヘッジ特性及びディフェンシブ特性を持ち合わせているプライベート・リアルアセットは投資家にとって有力な分散投資先となるだけでなく、責任投資目標※の達成にも貢献するものである。同社では、融資調達やファンド組成によるエクイティ調達を基本とし、インフレヘッジ特性(再生可能エネルギー等)及びディフェンシブ特性(ヘルスケア及びインフラ等)を持ったプライベートな実物資産を積み上げ、ファンドビジネスへと拡張する方針である。AMフィーによる安定収益を獲得しながら、資産売却時の一時的なキャピタルゲイン(同社持分)によるアップサイドをねらう収益モデルである。KPIとなるAUMについては、年間50億円の積み上げ(グロス)により最終年度までに累計150億円の積み上げを目指す。
※ 機関投資家の投資の意思決定や株主行動において、環境(Environment)や社会(Social)、ガバナンス(Governance)といったESG要素を考慮することが求められている。例えば、今回の障がい者グループホームを裏付とするソーシャルプロジェクトボンドへの投資などが含まれる。
(2) 投資運用事業
国内外の機関投資家やファミリーオフィス・富裕層向けに伝統的及び非伝統的な両資産クラスにおいて、同社の強みを生かした手法により資産運用サービス・金融商品を提供する方針である。伝統的資産(上場株式・社債等)については、企業側の需要も高まっているバイアウト(TOB、MBO、MEBO)やPIPEs(上場会社に対する私募増資)に係るファンドを組成し、国内投資家だけでなく、日本市場へのアクセスが困難な海外投資家(事業会社)に金融商品に留まらない独占的な投資サービスを提供する考えだ。一方、非伝統的資産(PEファンド、ベンチャーバイアウト等)については、ベンチャーファンドを組成・運営してきたノウハウやアジア・中国を中心とした海外進出支援、M&A仲介業務など、同社が提供してきたソリューションを生かして、ベンチャーバイアウト※1、M&Aファンド※2、RBO※3等に取り組む方針である。本事業もAMフィーによる安定収益を獲得しながら、成功報酬及び資産売却時の一時的なキャピタルゲイン(同社持分)によるアップサイドをねらう収益モデルである。KPIとなるAUMについては、年間100億円の積み上げ(グロス)により最終年度までに累計300億円の積み上げを目指す。
※1 ベンチャー企業の株式を一定以上買い取ることで経営に関与し、ハンズオン支援によるバリューアップを行う。
※2 国内中堅企業やベンチャー企業のM&Aによる成長を支援するため、その成長戦略に沿って同社が投資先のソーシングから外部資金の調達、エグゼキューションまで行うファンドを組成する。
※3 Regional Buy Outの略。不安定な株主構成や脆弱な財務体力、少子高齢化に伴う商圏(市場)縮小などに直面する地方の企業に対してエグジット先を地元の大企業や経営陣・従業員・創業ファミリーなどに特定し、事業の継続と経営の一貫性を守りながら非上場化を円滑に行う。
(3) ファンド・プラットフォーム事業
ファンド・アドミニストレーターとして長年の実績を有するジャイク事務サービス(株)(以下、JBS)にて、ファンド運営のミドル・バック業務のソリューションを提供する。ファンドの事務受託を専業として行う事業会社は数少なく会計事務所が主な競合先となっているが、CVCを含むVCファンドの組成が増加基調にあるなかで、ミドル・バック業務のアウトソースに関するニーズは大きく、経理に特化した会計事務所と差別化されている。事務受託料を安定収益源とする収益モデルであるため、事務受託本数やAUA(受託資産規模)がKPIとなる。最終年度の事務受託本数80本、AUA残高4,000億円を目指す。
2. 事業ポートフォリオの方向性
上記の事業方針に基づき、経済環境の変化に応じて収益を確保できる事業ポートフォリオを構築する方針である。具体的には、経済環境を「高インフレ・高成長」「低成長・高インフレ」「低成長・低インフレ」「高成長・低インフレ」の4つの事象に分けた。そのうえで、「高インフレ・高成長」では伝統的資産(上場株式・社債等)、「低成長・高インフレ」ではインフレヘッジ特性を持つエネルギー分野(蓄電池・再エネ等)、「低成長・低インフレ」ではディフェンシブ特性を持つインフラ分野(物流施設等)及びヘルスケア分野(障がい者グループホーム等)、「高成長・低インフレ」では非伝統的資産(PEファンド、ベンチャーバイアウト等)を主な投資対象とし、様々な経済環境(景気循環)に対応したバランスのとれた投資を行う考えだ。
3. 数値計画
安定収益の拡大と投資収益の改善により業績を回復し、最終年度の営業収益2,800百万円、営業総利益2,200百万円、営業利益1,250百万円、経常利益1,250百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を目指している(従来連結基準。以下同様)。なお、2年目(2026年3月期)の業績が一旦踊り場となるのは、プロジェクト売却のタイミングによるものである。ただ、AUMの拡大により安定収益は着実に積み上がる想定であり、最終年度の営業総利益(22億円)のうち8億円は安定収益(AMフィー+事務受託料)で占める見通しだ。財政状態についても、総資産を膨らませることなく自己資本の拡大と負債の圧縮を進める方針であり、最終年度の総資産113億円(2024年3月末比9億円増)、純資産88億円(同32億円増)、借入金18億円(同25億円減)、本体現預金47億円(同36億円増)を目指しており、ネット借入金ゼロを実現する考えである。資本効率を示すROEについても12.7%に改善する想定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
■新中期经营计划的方向性
日本亚洲投资<8518>在新体制下,公布了新的三年中期经营计划。将业务领域重新定义为“投资开发业务(实物资产投资)”、“投资运营业务(有价证券投资)”、“基金·平台业务(基金事务受托)”三大类,并计划根据新的业务方针扩展业务。此外,在整理外部环境及收益机会的基础上,构建补充·替代可行的项目组合,开发和运营各种经济环境下的投资资产及金融产品。与以往的最大不同在于,彻底利用外部资金进行投资,通过基金的组建和贷款的筹集来实现。之前由于未能成立基金,只能通过自有资金进行投资(项目投资和战略投资的股权投资),同时贷款资金利用也不够充分。从今往后,将更加明确作为向国内外投资者提供有吸引力的投资机会和投资服务的基金业务的方向,通过抑制和压缩自有资金的投资,同时增加投资开发业务和投资运营业务的资产管理规模,积累稳定收益的资产管理费用,并进一步推进财务的健康化。
1. 业务方针
(1) 投资开发事业
在能源价格高企、劳动力短缺带来的通胀压力下,以及利率上升等不确定经济形势持续的背景下,具备通胀对冲特性和防御性特性的私人·实物资产不仅成为投资者有效的分散投资目标,也有助于实现责任投资目标※。公司将以融资筹集和基金组建为基本,积累具备通胀对冲特性(可再生能源等)和防御性特性(医疗保健及基础设施等)的私人实物资产,并扩展至基金业务。通过获取资产管理费用的稳定收益,同时在资产出售时追求一次性的资本利得(公司持股)带来的增值收益模型。关于KPI的资产管理规模,目标是在最后年度之前通过每年增持50亿日元(总额)累计到150亿日元。
※ 在机构投资者的投资决策和股东行为中,需考虑环境(Environment)、社会(Social)、治理(Governance)等ESG要素。例如,包括此次为残障人士团体家庭所支持的社会项目债券投资等。
(2) 投资运营事业
公司计划向国内外机构投资者、家族办公室及高净值人群提供以传统资产和非传统资产为主的资产管理服务和金融产品,充分发挥公司的优势。对于传统资产(上市股票、公司债券等),计划组建与企业需求日益增长相关的收购(TOB、MBO、MEBO)及PIPEs(对上市公司的私募增资)相关的基金,向不仅国内投资者,还包括难以进入日本市场的境外投资者(企业)提供超越金融商品的独家投资服务。另一方面,关于非传统资产(股权投资基金、创业收购等),将充分利用公司在创投基金组建与运营、以亚洲区和中国为中心的海外拓展支援、并购仲介等方面的经验,致力于创业收购※1、并购基金※2、RBO※3等项目。本业务也将通过获取资产管理费用的稳定收益,同时追求成功报酬及资产出售时的资本利得(公司持股)带来的增值作为收益模型。关于KPI的资产管理规模,目标是在最后年度之前通过每年增持100亿日元(总额)累计到300亿日元。
通过购买一定数量的创业公司股票参与经营,并通过实质性的支持进行价值提升。
为了支持国内中型企业和创业公司的并购增长,按其增长战略,公司的投资将涵盖从寻找投资目标到外部资金的筹集与执行的基金组合。
Regional Buy Out的缩写。面临不稳定的股东结构、脆弱的财务能力以及伴随少子高龄化而出现的商圈(市场)缩小等问题的地方企业,目标是确定当地大企业或管理团队、员工及创始家族等作为退出途径,同时在保持业务延续性和管理一致性的情况下顺利进行非上市化。
(3) 基金・平台事业
作为基金管理服务商,拥有多年业绩的JBS(ジャイク事務サービス株式会社)提供基金运营的中后台业务解决方案。专门从事基金事宜的公司寥寥无几,主要竞争对手是会计事务所,但在包含CVC的VC基金组建呈上升趋势的背景下,中后台外包需求巨大,与专注于财务的会计事务所有明显区别。由于事务受托费是稳定的收入来源,因此事务受托数量和AUA(受托资产规模)是KPI。目标是在最终年度实现事务受托数量80件,AUA余额4,000亿日元。
2. 业务组合方向
根据上述经营方针,方针是根据经济环境的变化构建能够确保收益的业务组合。具体而言,将经济环境分为“高通胀・高增长”、“低增长・高通胀”、“低增长・低通胀”、“高增长・低通胀”四种情形。在此基础上,在“高通胀・高增长”中投资传统资产(上市股票、公司债等),在“低增长・高通胀”中投资具备抗通胀特性的能源领域(蓄电池、再生能源等),在“低增长・低通胀”中投资具备防御性特性的基础设施领域(物流设施等)及医疗保健领域(残疾人群体之家等),在“高增长・低通胀”中则投资非传统资产(股权投资基金、创业公司收购等),进行适应不同经济环境(经济周期)的均衡投资。
3. 数字计划
通过稳定收益的扩大和投资收益的改善,业绩恢复,最终年度的营业收入达到28亿日元,营业总利润22亿日元,营业利润12.5亿日元,经常利润12.5亿日元,归属于母公司股东的净利润10亿日元(按以前的合并标准,相同下同)。此外,第二年(2026年3月期)的业绩将暂时进入瓶颈,这是由于项目出售的时机所致。然而,预计由于资产管理规模(AUM)的扩大,稳定收益将稳步增长,最终年度营业总利润(22亿日元)中预计有8亿日元来自稳定收益(资产管理费+业务委托费)。关于财政状况,计划在不扩大总资产的情况下,推进自有资本的扩大和负债的压缩,最终年度的总资产目标为113亿日元(比2024年3月底增加9亿日元),净资产88亿日元(同样增加32亿日元),借款18亿日元(同样减少25亿日元),本体现金及存款47亿日元(同样增加36亿日元),并计划实现净借款为零。资本效率指标ROE也预计改善至12.7%。
(撰写:FiSCO客座分析师柴田郁夫)