■マイクロアド<9553>の中長期の成長戦略
中長期の成長戦略として同社は「アドテクノロジーの企業から、総合データカンパニーへ」というスローガンの下、データ活用を軸とした成長戦略を描いている。具体的には「データプロダクトの拡大」「新領域へのデータ活用」という2つの基本戦略により、業績の拡大と企業価値の向上を目指す構えだ。
(1) 「データプロダクトの拡大」
インターネット広告市場において「ブランド領域(自動車や飲料・食品など、実店舗での製品提供を行う企業が対象となるマーケティング領域)」に特化しながら、販売体制の強化と新製品のタイムリーな投入によって「UNIVERSE」の稼働アカウント数を増やす計画である。ブランド領域に特化する理由は、競合企業がいないためだ。また、既存マス広告4媒体(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)からのデジタルシフトによって、市場規模の拡大が見込めることも要因だ。成長する市場のなかで利益を確保していく。
販売体制の強化に関しては、2021年10月に営業組織を顧客の属性に特化した組織体制へと変更したほか、リモートワークを実施する顧客に対応するため、オンラインセミナーを通じて販売強化を推進している。2022年9月期は全40回のセミナーを実施し、販売問い合わせ件数は6,600件(受注金額は140百万円)へ拡大した。2023年9月期においてはオンラインで営業活動を行う専門の部署を新設し、販売体制をより時代に合った形へ変更したほか、「まちあげ」「UNIVERSE for 新NISA」「マーブル」「AITでまちあげ」などの新プロダクトの提供を開始した。2024年9月期は広島支社、仙台支社の2つの販売拠点を新設した。これは地方自治体や拠点周辺の企業のデジタルマーケティングニーズに対応するためであり、「UNIVERSE」の売上拡大を推進するうえで営業人材を地方拠点にも配置することが重要であるからだ。
加えて、付加価値の高い製品を継続的に市場に投入し、中長期的な成長を実現するため土台となる人材への投資を一段と厚くする。具体的には生成AI等を活用した独自の育成ノウハウによって質の高い人材プールを構築する方針だ。
(2) 新領域へのデータ活用
同社の事業は広告関連が中心であるが、保有している膨大なデータや分析技術を活用し、広告以外の領域へもデータビジネスの拡大を進めており、実績を順調に積み上げている。2022年8月には、機関投資家や金融機関が投資判断に活用できるオルタナティブデータの提供を開始し、2023年1月からオルタナティブデータを活用した自己資金での投資事業を開始した。さらに直近ではデジタルマーケティングのデータ分析手法を取り入れながら独自の投資戦略を構築し、2024年9月期実績は年利換算で1.01%となった。2024年9月期下期に発生した株式市場の急変を受けパフォーマンスが落ち込んだものの、2024年8月までには相場急変時の対応を目的とした大型アップデートを完了した。今後は安定収益を獲得することを目的にさらに運用モデルのブラッシュアップを進める方針だ。それ以外にも今後のさらなる成長に向けて、インバウンド関連の新規サービスや越境EC関連の新規サービス、「UNIVERSE」関連の新規サービスなど、市場投入を続けている。
なお、同社はこれまでポストCookieに向けた対応に注力し、3rd Party Cookieのサポートが停止された際のデジタルマーケティング市場において先行者優位を獲得することを成長戦略の1つとしてきた。GoogleがCookie廃止の撤回・延期を発表したことを受け、同戦略は一旦停止するものの、今後はCookie対策に投下していた開発リソースを「UNIVERSE」や「UNIVERSE」関連の新規サービスの開発に振り向けることにより業績の拡大と企業価値の向上を目指す方針だ。
「UNIVERSE」関連の新サービスはリテールメディア「URMS」、BtoB企業向け商談獲得ツール「ショウグン」、企業Webサイトの表示速度を高速化し商品の購買率などを改善する「Content Accelerator」の3つがある。「URMS」は、ECサイトへのリテールメディアのシステム提供だけでなく、広告の販売面も含めて一気通貫で事業立ち上げを支援するサービスである。提携するECサイトが増えることで売上貢献が期待できる。「ショウグン」は、「UNIVERSE」が蓄積しているBtoB企業向けのデータを活用し、新たな顧客を開拓するサービスである。これまで同社は「UNIVERSE」の営業を通じて接点のあるBtoB企業が多くあるため、営業リソースも活用しながら販売活動を進めている。「ショウグン」は「URMS」や従来の「UNIVERSE」とは異なり、SaaS型のサービスである。「Content Accelerator」はWebサイトの表示速度改善ツールで、ユーザーの利便性を向上させることで商品の購買率改善などが期待できる。UNCOVER TRUTHが提供するサイト内行動分析ツール「Content Analytics」や既存顧客の行動分析を行うCDP※1「Eark」と連携することで、顧客のLTV※2最大化をワンストップでサポートできる。「UNIVERSE」を利用している顧客へセットで提供することで広告効果の向上が期待できる。新規顧客には、「Content Accelerator」の導入を通じて「UNIVERSE」などの同社商品のクロスセルにつなげる。
※1 Customer Data Platformの略。複数のデータソースから顧客データを収集・統合管理し、それらのデータ分析によって個々の顧客に適したマーケティングやカスタマーエクスペリエンスを提供するプラットフォーム。
※2 「顧客生涯価値」を意味するLife Time Valueの略。顧客が自社の商品・サービスを初めて利用してから長期的な関係のなかで得られる利益を表す指標。
■株主還元策
株主還元の実行を目的に資本準備金の取り崩しを実施する方針
同社は株主に対する利益還元を重要な経営課題の1つとして認識している一方、現在は成長途中の段階であることやこれまで繰越利益剰余金が欠損していたことから、配当や自社株買いなどの株主還元施策を実施していない。また、内部留保を優秀な人材の確保と育成、同社サービスの収益力強化、研究開発などに充当し、より一層事業を拡大することによって将来的に安定的かつ継続的な利益還元を実施できる土台を整えている。今後の剰余金の配当に関しては、同社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローを勘案したうえで実施する計画であるが、現時点で配当の実施は未定となっている。ただ、足元では株主還元の拡充に向けて着々と準備を進めており、2024年11月には資本準備金を取り崩し、その他資本剰余金に振り替えたうえで、繰越利益剰余金の欠損を補填する方針であることを発表した。現在生じている繰越利益剰余金の欠損を解消することにより、財務体質の健全化を図るとともに、配当や自己株式取得などの株主還元の早期実現に向け、今後の資本政策の機動性及び柔軟性を確保し、中長期的な企業価値向上の実現に向け株主利益の最大化を図ることが目的だ。今後は自己株式の取得による株主への利益還元に加えて、業績拡大によって利益が積み上がるなかで配当が開始される可能性もあると弊社は見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
■ 微广告<9553>的中长期成长战略
作为中长期成长战略,公司以"从广告科技公司到综合数据公司"为口号,描绘了以数据利用为轴心的成长战略。具体而言,旨在通过 "数据产品的扩展 "和 "向新领域的数据利用 "这两个基本战略,推动业绩的扩大与企业价值的提升。
(1) "数据产品的扩展"
在互联网广告市场中,专注于 "品牌领域(汽车、饮料、食品等在实体店提供产品的企业所针对的营销领域)",通过强化销售体制和及时推出新产品,计划扩大 "UNIVERSE "的活跃账号数。专注于品牌领域的原因是,因为没有竞争对手。此外,从现有的四种传统广告媒介(电视、报纸、杂志、广播)向数字转型,也预期市场规模的扩大。在增长的市场中确保利润。
关于销售体制的强化,2021年10月公司将销售组织更改为针对客户属性的组织结构,并通过在线研讨会加强对实施远程工作的客户的销售支持。2022年9月期共实施了40次研讨会,销售咨询数量扩大到6600件(订单金额为1.4亿日元)。在2023年9月期,成立了专门进行在线销售活动的部门,进一步将销售体制改为更加符合时代的形态,并开始提供 "まちあげ"、"UNIVERSE for 新NISA"、"玛瑙"、"AITでまちあげ" 等的新产品。2024年9月期将新设两个销售据点,分别是广岛分社和仙台分社。这是为了响应地方政府和周边企业的数字营销需求,而在推动 "UNIVERSE "的销售增长方面,将销售人才配置到地方据点是重要的。
此外,将持续不断地向市场投入附加值高的产品,为实现中长期的增长在基础的人才投资上进一步加强。具体而言,方针是利用生成AI等独特的培养ノウハウ建立高质量的人才库。
(2) 向新领域的数据利用
该公司的业务主要集中在广告相关,但利用所拥有的海量数据和分析技术,正在推动广告以外领域的数据业务扩展,并顺利积累业绩。2022年8月,开始向机构投资者和金融机构提供可以用于投资判断的替代数据,自2023年1月起启动基于替代数据的自有资金投资业务。此外,最近还在数字营销的数据分析方法中构建了独特的投资策略,2024年9月期的业绩折合年的利率为1.01%。尽管在2024年9月期下半年因股市的急剧变动导致表现下滑,但在2024年8月之前完成了旨在应对市场急变的大型更新。未来将继续推进运用模型的改进,目标是获取稳定的收益。除此之外,为了未来的进一步增长,持续推出与入境相关的新服务、跨境电商相关的新服务及与 "UNIVERSE "相关的新服务等。
此外,该公司一直专注于应对后Cookie时代,当第三方Cookie的支持停止时,旨在数字营销市场中获得先发优势作为其成长战略之一。鉴于谷歌宣布撤回和推迟Cookie的废除,该战略虽然暂时停止,但未来将把针对Cookie的开发资源转向开发 "UNIVERSE" 及相关的新服务,从而目标是扩大业绩并提升企业价值。
与 "UNIVERSE" 相关的新服务包括零售媒体 "URMS"、面向BtoB企业的商谈获取工具 "将军" 以及加速企业网站加载速度以改善商品购买率等的 "Content Accelerator" 三个服务。 "URMS" 不仅提供向电子商务网站的零售媒体系统支持,还包括广告销售的全面业务启动支持服务。随着合作的电子商务网站的增加,预计将为收入做出贡献。 "将军" 是利用 "UNIVERSE" 积累的面向BtoB企业的数据来开发新客户的服务。由于该公司通过 "UNIVERSE" 的销售与众多接触的BtoB企业合作,因此正在利用销售资源推进销售活动。 "将军" 与 "URMS" 和传统的 "UNIVERSE" 不同,属于SaaS型服务。 "Content Accelerator" 是提升网站显示速度的工具,通过提高用户的便利性,预计将改善商品的购买率。通过与UNCOVER TRUTH提供的站内行为分析工具 "Content Analytics" 及分析现有客户行为的CDP(客户数据平台) "Eark" 进行整合,能够一站式支持客户的LTV最大化。通过向使用 "UNIVERSE" 的客户提供配套服务,预计将提升广告效果。对新客户来说,通过引入 "Content Accelerator" 将推动 "UNIVERSE " 等同公司的商品的交叉销售。
※1 Customer Data Platform 的缩写。该平台从多个数据源收集和整合管理客户数据,通过对这些数据的分析,提供符合各个客户需求的营销和客户体验。
※2 "客户终生价值"(Life Time Value)的缩写。指客户首次使用公司商品或服务后的长期关系中所获得的利润指标。
股东回报策略
为了实施股东回报,计划进行资本准备金的耗损。
该公司将向股东的利润回报视为重要的经营课题之一,然而,目前处于成长阶段,并且过去的累积利润盈余出现亏损,因此不会实施分红和股票回购等股东回报措施。此外,还将内部留存用于确保和培养优秀人才、增强服务的获利能力、进行研发等,从而通过进一步扩大业务来为将来稳定和持续地实施利润回报奠定基础。关于未来的盈余分配,计划在考虑公司的财务状况、经营业绩及现金流的前提下进行,但目前尚未确定分红的实施。然而,目前正在稳步推进扩充股东回报的准备工作,并计划在2024年11月进行资本准备金的耗损,并将其转移至其他资本盈余金,以弥补累积利润盈余的亏损。通过解决当前累积利润盈余的亏损,不仅旨在改善财务体质,也为早期实现分红和自己股票回购等股东回报做好准备,确保未来资本政策的灵活性和弹性,最大化股东利益以实现中长期企业价值的提升。我们预计,除了通过自己股票回购回馈股东外,随着业绩的扩大,分红将逐步开始。
(作者:富士客座分析师清水阳一郎)