■中長期の成長戦略
1. 中長期の成長戦略の概要
いい生活<3796>は中期的な目標として、顧客法人数5,000社、平均顧客単価10万円以上(月額)を目指している。売上高にすると年間60億円以上となる。これを達成するためにこれまでの事業戦略を加速して推進していく方針である。成長戦略については、「顧客基盤の拡大」「収益力の強化」「将来への布石」を挙げ、サービスの進化及び導入支援顧客サポート体制の充実を目指す。
(1) 顧客基盤の拡大
利用法人数が右肩上がりであることからも、業務の作業効率の向上・費用対効果は実証済みであり、同社のサービスに興味を持つ潜在的な顧客へのアプローチを続けていく。導入支援サービスの充実によるエンタープライズ顧客の獲得と、「いい生活Square」の無料顧客への有料顧客化が、顧客基盤拡大の大きな柱と位置付けている。
(2) 収益力の強化
マルチプロダクトのワンストップ提供による顧客単価上昇、運用支援サービスレベル向上によるLTV(顧客生涯価値)拡大を行う。不動産管理業はサービスの利用期間が長期にわたるため、LTVの高い顧客層である。同社のサービスはSaaSのため、複数のサービスを一体化して利用できることから、高い全体最適性を実現できる強みを生かして顧客満足度を高めることができる。
(3) 将来への布石
不動産プラットフォームへの進化を成長戦略として挙げ、中長期的に持続的かつ安定的な事業成長の確立を図るため、市場特化×SaaS×一元管理の最大化による高成長を推進する。加えて、豊富なサービス群とソリューションを組み合わせるなど付加価値の高いサービスを提供することで、競合他社との差別化を図っていく。
2. 将来的な戦略
同社は、中長期の戦略以外にも将来の展望として、1) 持続可能な顧客獲得サイクル、2) プロダクトビジョン、3) 不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォームなどの戦略イメージを持っている。
(1) 持続可能な顧客獲得サイクル
見込顧客へのアプローチから、提案、受注、導入支援、運用、サポートというプロセスを経て既存サービスを利用する顧客に対し、追加的サービスの提案を行い、サービス全体の拡販を推進する。既に同社のサービスを利用している顧客は業務の効率化が進み、顧客満足度が高いため、追加サービスを購入して顧客単価が高まる傾向にある。これにより、既存顧客との信頼関係をより強固なものにすると同時に、売上を拡大するための事業基盤が広がる可能性も高まる。売上高については既存顧客向けにアップセル・クロスセルを通じた受注拡大を見込むと同時に、新たに稼働を開始した新規顧客の売上が上乗せされることになる。これにより、不動産管理業を中心に高いLTVを持つ顧客数を増加していく。LTVの高い顧客を獲得することで、サービス開発などのコストを相殺し、大きな利益を生み出す考えである。
(2) プロダクトビジョン
同社は、将来的にはSaaSで各ツールが人の手を介さず、リアルタイムで連携できるシステム構築を行い、会計システム、電子契約、電子決済、Web会議などサードパーティシステムとの連携、ユーザーのビジネスにおけるさらなる最適化を追求する。加えて、インボイス対応や設備・修繕管理機能、経営分析機能、金融領域など新機能や新領域についても拡充し、不動産におけるあらゆる業務領域をカバーすることを目指す。
2024年3月期第3四半期には、「いい生活Pay口座振替」の取り扱い金額が1億円を超えた。このサービスはSMBCファイナンスサービス(株)と共同で開発されたもので、家賃や駐車場料金などの支払いの口座振替登録をオンラインで完了できるものだ。これにより、不動産管理会社の資金回収作業がデジタル化され、より効率的になった。従来の振替依頼書の記入や押印が不要となり、処理ミスやその結果生じる余計な作業の削減にもつながっている。結果として、手間をかけずに迅速に家賃などを回収できるようになった。
(3) 不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォーム
SaaSを媒介として、不動産に関わるあらゆるデータが蓄積されたプラットフォームを構築し、その豊富なデータに基づき、多彩な商品やサービスの取引が展開されるマーケットプレイスとなり、テクノロジーがもたらす付加価値をエンドユーザー・不動産会社に留まらない市場のすべてのプレーヤーへ届けることを目指す。
3. 人的資本拡大
同社は2023年4月、「人的資本拡大に関する基本方針」を策定した。この方針では、社会と会社、会社と従業員の双方にとって有益な関係を目指すことに焦点を当て、同社のミッションとビジョンを明確にし、組織の存在意義と目指すべき未来像を具体化している。加えて、企業が重視する価値観と、個々の人が目指すべき行動指針を6つのバリュー(行動指針)に要約している。
このバリューにおいて、同社は、新しい基準を定め、学びながら常に既成概念を疑い、経験を形式知として定着させることを目指している。好奇心を持ち、未知の探求を楽しむことで、新たな知識を組織に取り入れ、拡張していくこと。また、適切な距離感を保ちながら、誰も置き去りにせず、かつ停滞もせず、前進する道を照らすこと。優しさと易しさを大切にし、明快なコミュニケーションとシステムで信頼される存在になること、多様な人々との化学反応を通じて成長を促進すること、信頼を積み重ねて歴史を育むこと、そして挑戦と失敗を包容し支え合うことが、文化の継承と発展のために重要であると示している。さらに、「自発的な価値創造」「目標設定や達成の支援を通じた積極的な対話」「個々人の能力の顕在化とウェルビーイングの追求」「人間性の尊重」そして優れた「タレントの獲得」を促進するための社内環境整備に関する具体的な施策を提供している。
同社では、プロダクト毎に独立したスモールチームに権限を委譲し、APIプラットフォームを中核に各プロダクトチームが連携することで、生産性の高い開発環境が形成されることを推進している。このアプローチは、自律的なチーム運営を重視し、スクラムを基本としたアジャイル体制を採用している。その結果、同社は、開発生産性が優れたエンジニア組織を表彰する「Findy Team + Award 2023」で、ユーザーへの価値提供のサイクル改善において、開発生産性が高く評価され、組織別部門で受賞した。こうした取り組みにより、開発者体験が向上し、個人の能力が十分に発揮されるとともに、チーム全体の学びが促進される環境が整い、結果として人的資本の充実に直結している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
中長期的增長戰略
1. 中長期成長戰略概述
今後的戰略
好生活<3796>將中期目標定爲擁有5000家客戶法人,平均客戶價格超過10萬日元(每月)的目標。年銷售額超過60億日元。爲了實現這一目標,公司將加速推進先前的業務戰略並尋求擴大客戶基礎、提高收益能力和佈局未來。關於成長戰略,公司設定了擴大客戶基礎、提高收益能力和爲未來打下基礎三個目標,旨在推進服務的升級和客戶支援體系的完善。
(1) 擴大客戶基礎
由於企業使用數量持續增長,因此公司將繼續通過擴大對潛在客戶的投資推動銷售。通過進一步提高導入支援服務的質量,贏得企業客戶,並將“好生活 Square”的免費客戶轉化爲付費客戶,從而擴大客戶基礎。
(2) 提高收益能力
通過提供高附加值服務,如提供多種產品、提高客戶單價、提高運營支援服務水平以擴大客戶生涯價值(LTV)等方式,提高收益能力。房地產管理業務由於客戶使用期限長,因此擁有高LTV的客戶群。由於同公司的服務是SaaS雲計算,因此可以多個服務一體化使用,從而實現高整體優化性能,並提高客戶滿意度。
(3) 爲未來打下基礎
公司將不動產平台作爲成長戰略,通過市場特化、SaaS和一體化管理推動高速增長,旨在確立中長期持續穩定的業務增長。此外,公司爲了實現與競爭對手的差異化,將提供豐富的服務組合和解決方案,如將不動產相關的所有數據集中到一個平台上等。
2. 將來的戰略
(1) 持續可持續的客戶獲取週期
從預期客戶的接觸、提案、訂單、導入支援、運營、支持等過程着手,對現有客戶進行附加服務的提供,推動服務的完整銷售。已經使用公司服務的客戶由於業務效率的提高和較高的客戶滿意度,傾向於購買附加服務,這將導致增加客戶價值和拓展業務平台的潛力。就銷售收入而言,預計會通過向現有客戶提供客戶升級和交叉銷售來擴大訂單,同時,新客戶的收入也會增加。通過獲取LTV高的客戶,相互抵消服務開發等成本,創建大量利潤。
(2) 產品願景
公司計劃將來利用SaaS建立一個可以實現各種工具之間實時自動分配的系統,並追求與會計系統、數字契約、數字支付、Web會議等第三方系統間的協作,以及追求用戶業務的更高效化。此外,公司還將擴大付加的產品及服務,如發票支持、設施和維修管理功能、經營分析功能、金融領域等,類似與不動產相關的範疇。
2024年3月期第3季度,“好生活Pay帳戶轉賬”的處理金額超過1億日元。該服務是與SMBC金融服務(株)共同開發的,可以在線完成房租、停車費等支付的帳戶轉賬註冊。因此,物業管理公司的資金回收工作得到了數字化,更加高效。不再需要填寫傳統的轉賬申請表格或蓋章,也減少了處理錯誤和由此產生的額外工作量。結果是,現在可以輕鬆快速地收回房租等費用。
(3)建立了集合所有房地產數據的平台。
通過雲計算(SaaS)建設了以房地產爲核心的平台,積累了各種數據,並基於這些豐富的數據展開多樣化的商品和服務交易,成爲市場。而且,目標是將科技帶來的附加價值傳遞到所有市場參與者而不僅僅是最終用戶和房地產公司。
3. 人力資本擴大。
該公司於2023年4月制定了“人力資本擴大基本方針”。該方針側重於追求社會和公司以及公司和員工雙方都有益的關係,明確了公司的使命和願景,並具體說明了組織的存在意義和未來願景。此外,將企業重視的價值觀和個人應遵循的行動指南總結爲6個價值觀(行動指南)。
在這些價值觀中,該公司旨在樹立新的標準,不斷質疑老觀念,讓經驗固化成積極的形式,通過擁有好奇心並享受探索未知事物的方式,不斷吸取新的知識並將其應用至公司中。同時,仍保持恰當的距離,以光明磊落的溝通和系統成爲可信賴的存在,通過與各種人進行化學反應促進可持續的成長,積累信任創造歷史,接受挑戰,包容失敗,相互支持,這是文化傳承和發展的重要因素。此外,他們提供了與“自發性的價值創造”,“目標設定及通過對話的支持積極主動”,“個人能力的須在可見化和回答追尋人性”等爲重點的,在促進內部環境建設的具體措施。
該公司將授權給每個單獨的小型團隊,以管理各個產品,並通過API平台支持各個產品團隊之間的合作,以推動高生產率的開發環境。該方法重視自治團隊的運作,並採用以Scrum爲基礎的敏捷形式。作爲結果,該公司在“Findy Team + Award 2023”中榮獲了優秀工程師組織的獎項,並在提供價值與提高開發生產率的週期中獲得了高度評價,並在組織部門中獲得了獎勵。這種方法提高了開發人員的工作體驗,充分發揮了個人的能力,並促進了整個團隊的學習,從而最終實現了豐富人力資源。
(撰寫:FISCO資深分析師中山博詞)