■アンジェス<4563>のEmendoBioの開発状況
2. 事業戦略
Emendoは2023年まで独自のOMNIヌクレアーゼの開発にあたり、その探索と最適化を労働集約的に行ってきたため、開発人員が100名を超えていたが、現在はこれまで蓄積した大量のデータベースにコンピューティング技術を活用して開発を行う知識集約型の研究開発体制に移行しており、イスラエルの研究所の人員規模も約30名までスリム化した。一方、米国では臨床試験開始に向けた準備を進めると同時に、同社主導で開発パイプラインやOMNIプラットフォーム技術に関するライセンス活動を強化していく方針となっており、体制を構築するための準備を進めている状況にある。
2024年3月には初のライセンス契約も締結した。具体的には、がん免疫療法の一種である遺伝子改変T細胞療法※1の1つであるTCR-T細胞治療薬の開発で業界をリードするスウェーデンのAnocca※2と、OMNI-A4ヌクレアーゼの使用権についての非独占的ライセンス契約を締結した。AnoccaはOMNI-A4ヌクレアーゼを用いて安全かつ効率的に開発を進め、難治性固形がんにおけるKRAS変異を標的とした初の臨床試験を2024年に開始する予定となっている。Anoccaでは、遺伝子編集技術としてOMNIプラットフォームとCRISPR/Cas9の両方の技術を試した結果、OMNIプラットフォームを高く評価し、今回の契約に至っている。Anoccaでは両技術を比較した研究成果も論文として発表する予定であり、同論文が発表されれば、さらに注目度も高まるものと予想される。なお、今回の契約締結によってEmendoは契約一時金(50万米ドル)と開発マイルストーンを合わせて総額で最大約100百万米ドルを受領する可能性があり、製品が販売された場合にはロイヤリティも受領することになる。
※1 遺伝子改変T細胞療法とは、患者自身から取り出したT細胞内にがん抗原特異的T細胞受容体(TCR)やキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子改変操作によって発現させ、同細胞を増殖させて体内に戻すことでがん細胞を攻撃する治療法。国内ではCAR-T細胞療法の「キムリア(R)」(ノバルティス ファーマ(株))が2019年に製造販売承認されている。CAR-Tは血液がん領域、TCR-Tは固形がん領域で副作用の少ない治療法として開発が進められている。
※2 2014年の設立で、科学者、エンジニア、ソフトウェア開発者を中心に従業員数は100名を超える。特定の抗原を認識するTCRを発現するT細胞を選別、培養する技術を保有しており、複数のがん標的に対するTCR-T療法のライブラリーを持ち、40を超える製品候補を抱えている。これまでに150百万米ドルの資金調達を行った。
そのほかの企業との契約交渉についても、特定の開発プロジェクトで同技術を利用したい企業と、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業等がある。いずれにしてもEmendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結し、幅広い企業や医療機関等で同技術を活用してもらい、遺伝性疾患の治療技術の進歩に貢献したい考えだ。
なお、開発パイプラインのうち、ELANE(好中球エラスターゼ遺伝子)変異による重症先天性好中球減少症
(SCN)※を対象とした臨床試験については、FDAとIND申請に向けた協議と並行してライセンス交渉も進めている。同治療技術に関心を寄せる医療機関等も多いため非独占的契約となる可能性が高いが、2024年内の進捗が期待できそうだ。
※重症先天性好中球減少症とは、骨髄における顆粒球系細胞の成熟障害により発症する遺伝性疾患で、遺伝子変異により出生後の早期から好中球減少による中耳炎、気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症を反復し、肺炎や敗血症などその他の疾患に至るケースもある。100万人に2人の割合で発症する希少疾患で、SCNの約7割はELANE変異による。
SCNの現在の治療法は、ST合剤(抗生剤、スルファメトキサゾール・トリメトプリム)による感染予防が一般的で、感染症がコントロールできない場合にはG-CSF※を使用して好中球の誘導を促す。ただ、G-CSFを高用量で使用した場合、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行し、造血幹細胞移植が必要となるケースもある。Emendoでは患者から造血幹細胞を取り出し、OMNIヌクレアーゼ技術を用いて正常な機能を有するELANEを発現させたうえで患者の体内に戻し、好中球の機能を回復させる根治療法の開発を目指している。Emendoが実施した動物実験では、正常な遺伝子を傷つけずに異常な遺伝子のみを正確に区別して破壊することで造血幹細胞が好中球に分化できたことを確認しており、同論文に関しては世界最大の遺伝子治療及び細胞治療の研究者団体のジャーナルにも掲載された。
※G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子):サイトカインの一種で顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用がある。
米国ではゲノム編集技術を用いた臨床開発段階のバイオベンチャーが複数社上場しており、時価総額は収益化前段階でも数億米ドル(数百億円)から数十億米ドル(数千億円)規模になっている。特に、初の製造販売承認を取得したCRISPR Therapeuticsについては時価総額で45億ドル(約7千億円)を超える水準まで評価されている。国内でゲノム編集技術のバイオベンチャーとしてはモダリス<4883>が上場しているが、時価総額は25億円程度にしか過ぎない。開発の進捗状況やパイプラインの潜在価値、ライセンス契約の有無等によって異なるものの、総じて米国のほうがゲノム編集技術に対する投資家の期待値は高いと考えられる。このため、Emendoについてもいずれは米国でIPOを実施し独自で資金調達を進めていく意向だ。米国では、ゲノム編集技術を持つベンチャーと大手製薬企業が共同開発契約を締結する事例も増えている。EmendoにおいてもAnoccaとライセンス契約を締結したことを皮切りに新たな企業と共同開発契約を締結する可能性は十分にあり、今後のライセンス交渉の進展に注目したい。
※2024年7月2日終値で算出。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
Anges的EmendoBio開發情況
2.業務戰略
Emendo從現在開始將獨自致力於OMNI核酸酶探索和優化的工作,並基於大量積累的數據庫利用計算技術進行知識集成型的研發,因此目前已經轉變爲一種知識型的研究和開發體系。同時,在美國,該公司將加強由其主導的開發管線和OMNI平台技術方面的許可活動,並準備構建體系。
到2024年3月,已經簽訂了第一個許可協議。具體而言,瑞典Anocca治療是致力於開發基因改良T細胞療法*1中的TCR-T細胞治療藥物,並引領了該領域的發展,與OMNI-A4核酸酶的非排他性許可協議簽訂。Anocca在OMNI-A4核酸酶的協助下安全而有效地進行開發,並計劃在2024年開始針對難以治癒的固體腫瘤中的KRAS突變進行首次臨床試驗。 這對Anocca來說是一項具有里程碑意義的成果,他們試驗了兩種基因編輯技術:OMNI平台和CRISPR/Cas9技術,結果Anocca高度評價了OMNI平台,雙方開始進行技術合作。Anocca計劃發表這兩項技術的比較研究成果,預計該論文的出版將會引起廣泛的關注。此次許可協議簽訂將使Emendo公司獲得許可金(50萬美元)和開發里程碑的潛在收入,兩者總額最高達100百萬美元。 如果該產品銷售,公司還將收取版稅。
*1基因改良T細胞療法是一種癌症免疫療法,通過基因改良操作在患者自己的T細胞內表達起癌症特異性的T細胞受體(TCR)或嵌合抗原受體(CAR),然後增殖產生大量能夠識別和打擊癌細胞的T細胞。CAR-T用於血液腫瘤領域,TCR-T用於固體腫瘤領域,它們是治療副作用較少的治療技術。市場上已經有CAR-T細胞治療藥物“KYMRIA(R)”(Novartis Pharma (株))獲得了2019年的製造許可。
*2成立於2014年,擁有超過100名員工,其中包括科學家、工程師和軟件開發人員,具有篩選和培養TCR T細胞的技術,擁有針對多種癌症靶點的TCR-T治療的庫,擁有超過40種候選產品。迄今爲止,該公司已經籌集了150百萬美元。
此外,還存在與其他公司進行協商的契約,包括特定的企業希望在開發特定項目中使用該技術,以及希望在多個開發項目中綜合使用該技術的企業等。Emendo希望簽訂非排他性許可協議,針對各種疾病,促進企業和醫療機構廣泛使用該技術,爲遺傳性疾病的治療技術進步做出貢獻。
除夕夜的開發管線之一集中於致力於解決由ELANE(嗜中性粒細胞彈性蛋白酶基因)突變引起的嚴重先天性嗜中性白細胞減少(SCN)*的不良影響的臨床試驗。
對於在上述治療技術方面存在興趣的醫療機構等,由於其驗證性試驗也是爲未來療法服務的非排他性協議之一,因此有高潛力簽訂非排他性協議,進展順利,預計2024年內將取得進展。
* 8嚴重先天性嗜中性粒細胞減少症是一種遺傳性疾病,由於骨髓中顆粒細胞系細胞成熟障礙引起,出生後早期就會發現由於中耳炎、呼吸道感染和蜂巢性組織炎、皮膚感染等引起的嗜中性白細胞減少症,甚至可能因肺炎或敗血症等疾病的影響而死亡。這種疾病是罕見病,每百萬人中大約有兩人患病,其中約70%與ELANE的突變有關。
SCN的治療方法通常是通過ST聯合劑(抗生素,磺胺甲噻唑-甲氧苄啶)預防感染,如果無法控制感染,則使用G-CSF※來誘導中性粒細胞。然而,如果高劑量使用G-CSF,則可能發展爲骨髓畸形綜合徵或急性骨髓性白血病,需要造血幹細胞移植的情況也有。Emendo正在開發根治性療法,即從患者體內取出造血幹細胞,使用OMNI核酸酶技術表達具有正常功能的ELANE並將其重新植入患者體內以恢復中性粒細胞功能。在Emendo進行的動物實驗中,他們通過準確區分僅破壞異常基因而不傷害正常基因來將造血幹細胞分化爲中性粒細胞,並證實了這一點。該論文已發佈在世界上最大的基因治療和細胞治療研究團體的雜誌上。
※G-CSF(粒細胞集落刺激因子):是一種細胞因子,促進顆粒細胞產生和提高中性粒細胞功能。
在美國,多家通過基因編輯技術進行臨床研發的生物公司已經上市,即使在實現收益之前,其流通值也已達到數十億美元(數百億日元)的規模。特別是第一次獲得製造和銷售批准的CRISPR Therapeutics,其流通值已超過45億美元(約7000億日元)。在國內,Modulus<4883>是一家進行基因編輯技術的生物公司,然而其流通值也只有約25億日元。雖然由於進捗情況,管線潛在價值,是否有許可協議等因素而有所不同,但一般認爲美國投資者對基因編輯技術更爲看好。因此,Emendo未來也計劃在美國進行已上市新股(IPO),並單獨籌集資金。在美國,基因編輯技術擁有這種初創公司與大型製藥企業共同開發協議的情況也有所增加。Emendo也與Anocca簽訂了許可協議,可以看出希望與其他公司簽訂共同開發協議,有可能會引起注意。
※計算於2024年7月2日收盤價。
(撰寫:FISCO客座分析師佐藤讓)