■戸田工業<4100>の中長期の成長戦略
(3) LIB用材料
同事業の主体は連結対象として正極材料の前駆体を扱うカナダの戸田アドバンストマテリアルズが連結売上の対象であるが、主力は持分対象のBTBMである。このため、今回の「Vision2026」において具体的な売上高、利益率目標の提示がなされなかったが、ビジネスパートナーであるBASFとグローバルな需要拡大に対応して事業拡大を図る。現状、BTBMの提供する主な正極材料はハイニッケル系であり、高級車は航続距離などの点でニッケルコバルトアルミン酸リチウム(Hi-Nickel NCA)の採用が継続すると見られる。PPESへNCM系正極材料の納入を開始しており、またハイニッケル系正極材料の年間生産能力をバッテリーセル容量として45GWh分である6万トンに引き上げ、2024年後半に生産を開始する計画である。BTBMは従来NCA(円筒型電池)正極向けが多かったが(国内トップは住友金属鉱山<5713>、2位がBTBM)、PPESへ納入するのはNCM(角/ラミネート型)正極向けであり、国内では日亜化学工業(株)が供給しているが、今後のトヨタ自動車の国内EV戦略とともに拡大が期待される。なお戸田アドバンストマテリアルズは納入先の正極材料メーカーがEV車向けに供給しているが、足元はモデル末期のため苦戦が続き、2025年3月期は収益の低迷が続く見通しにある。挽回策として次世代モデルへの対応も進めているが、その成果が出始めるのは2026年3月期以降となる見通しである。一方、トヨタ自動車が米国において電池工場に総額139億ドルを投資する計画を発表し、2030年には年間生産量が30GWh以上に達する見通しであることから同社も新規ユーザーとして参画できる可能性もあり、その成果が待たれる。ただし、世界的にEVに対して見直す機運もあり、実際、パナソニックホールディングスが国内工場の稼働率低下などを理由に2024年6月にEV向け電池事業について2031年3月期までに3兆円超を目指す計画を一部修正、時期未定とする動きなどもある。このため、車載用LIB関連事業は長期的には成長が期待できるものの、しばらくは収益が停滞する状況もあり得る。
同社はこれまでLIB用材料として車載用、とりわけハイパワーEV向けのビジネスを展開し、この方向性に変化はない。しかしリチウム資源の調達とコスト問題の懸念から、主に定置用電源に利用される安価で資源制約のないナトリウムイオン電池の開発も行っている。具体的には2024年3月25日に鳥取大学と同社が酸化鉄(ナトリウムフェライト)を正極、負極に用いた革新的なナトリウムイオン電池(SIB)を共同開発したことを発表した。同社が燃焼排ガスCO2の回収材として独自開発した酸化鉄の一種であるナトリウムフェライト(NaFeO2)が、SIB負極として優れた特性を得られることを発見した。酸化鉄は無害で資源的に豊富な素材として広く利用されている。SIBは、資源が偏在することで供給不足と価格高騰のリスクが存在するLiとは対照的に、ほぼ無尽蔵で安く入手できるNaを用いるため資源と価格の面で有利な次世代蓄電池と言われている。従来、α型のナトリウムフェライト(α-NaFeO2)が正極として機能することは報告されていたが、同社が独自開発した酸化鉄であるα-NaFeO2を負極に適用し優れた充放電性能が得られることを世界で初めて発見した。また、同質多形であるβ型のナトリウムフェライト(β-NaFeO2)も同様に負極に適用でき、さらに負極と正極の両方に同種の酸化鉄を用いて可逆的に充放電させることに世界で初めて成功した。現在SIBは大型の定置用電源の安価な蓄電池として期待され、海外では、EV用電源としても中国CATLが実用化を進めており、一層注目が集まっている。ただしその負極には、LiBの場合と同様に炭素系材料が使用され、高エネルギー密度化にはNaをより吸蔵できる新負極材料が求められている。以前Fe2O3が非常に大きいNa吸蔵−放出量(理論容量:1,007mAhg-1)を有し候補になったが、Fe2O3が凝集して電極の耐久性が低くなる充放電劣化の課題を抱えていた。今回、同社はアンチモン(Sb)との複合化により、電極の集電性が向上し、Fe2O3粒子の凝集が抑制されることでサイクル寿命を改善できることを確かめた。さらにレアメタルの一種であるSbを使わずに酸化鉄単独での課題の解決を目指し、NaFeO2をSIB負極として適用し充放電が可能であることを新たに発見、加えてFe2O3のみを負極に用いた場合の課題であった短い充放電サイクル寿命を酸化鉄単独で克服できることを明らかにした。また同じ材料で負極と正極とで異なるNa吸蔵−放出機構で充放電動作を行い、NaFeO2負極とNaFeO2正極からなるフルセルを可逆的に充放電させることに世界で初めて成功、負極をβ型NaFeO2に替えても同様の充放電特性が得られることを確かめた。Fe2O3をはじめとする酸化鉄系材料は、SIBだけでなくLiBでも研究されてきた負極材料であり、NaFeO2という酸化鉄を使用することで、他の金属との複合化を行うことなくその高容量を効果的に引き出せることは大きな意味がある。
(4) 軟磁性材料
軟磁性事業については完全子会社化したTICが2025年3月期より連結されるため、2025年3月期には電子材料事業において磁石事業に次ぐ売上規模になるとともに、2027年3月期には売上高70億円、営業利益率3%を目指す。さらに2031年3月期にはありたい姿として売上高100億円超、営業利益率7%を目指す。
現状、TICについて2023年12月期は営業減益となっているが、車載用インダクター中心に開発を行い、売上拡大とシナジー効果で売上拡大と収益性向上を目指す。具体的にはインダクター向けの軟磁性フェライト粉に加え、パワーインダクター向け軟磁性メタル粉などインダクター需要増に対応する。さらに素材技術と複合化技術の融合により、インダクター向け軟磁性コンパウンドのワンストップの提供を目指す。また自動車の電動化に対し電子部品搭載製品の増加による電磁波ノイズ問題が大きな課題となっており、ノイズ対策材料やEV用非接触給電向け厚膜大判フレキシブルフェライトプレート、ノイズ抑制用フレキシブルフェライトシートやテープなどの成形品販売も強化する。その他、ソフトフェライト粉末をエポキシ樹脂に混合させ優れた透磁率を有するエポキシ系磁性接着剤、高性能インダクターなど電子部品の実現を可能とする高い球形度と均一な粒度分布を兼ね備えたサブミクロンサイズのFe基軟磁性メタル粉末など、今後、大きく売上の拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
戸田工業<4100>的中長期增長戰略有以下規則
(3) LIB用材料
同事業的主體爲連接對象,處理正極材料前體的加拿大戸田先進材料連結銷售額対象,但主要是持分対象的BTBM。因此,在本次“Vision2026”中沒有具體的銷售收入和利潤率目標,但將通過與業務夥伴BASF合作來擴大業務,以滿足全球性的需求增長。目前,BTBM提供的主要正極材料是高鎳系列,在航程等方面,高檔車輛仍然將繼續採用鎳鈷鋁酸鋰(Hi-Nickel NCA)。已經開始向PPES提供NCM系列正極材料,並計劃通過將高鎳系正極材料的年產能提高到6萬噸的45GWh電池容量,並於2024年下半年開始生產。BTBM的傳統NCA(圓柱形電池)正極面向市場很多(國內第一名是住友金屬礦山<5713>,第二名是BTBM),而向PPES提供的是NCM(角/層壓型)正極,雖然日亞化工(株)在國內提供,但預計隨着豐田汽車國內電動汽車策略的推進而擴大。此外,戸田先進材料的交貨正極材料生產商正在向EV車供應,但目前汽車由於是模型晚期而努力,預計在2025年3月期間收益將繼續低迷。正在開展面向下一代模型的措施,但預計其成果將於2026年3月期間開始顯現。另一方面,豐田汽車宣佈計劃向美國電池工廠投資總計139億美元,並預計到2030年產量將達到每年30GWh以上,該公司也可能作爲新用戶參與其中,並期待其成果。但是,全球對EV的重新評估也將存在,實際上,由於國內工廠的運營率降低等原因,松下控股在2024年6月取消了其面向EV電池的目標,試圖調整其計劃的一部分,並暫定未來。因此,雖然可能長期期望車載LIB相關業務增長,但在短期內也可能會出現收益停滯的狀況。
同社以前作爲LIB的材料,主要推廣用於車載和特別是高功率EV的業務,這種方向不會改變。但是考慮到鋰資源的採購和成本問題,同公司也在開發價格便宜且資源上無限制的主要用於靜態電源的鈉離子電池。具體來說,同社和鳥取大學宣佈於2024年3月25日共同開發了使用氧化鐵(鈉鐵酸鹽)作爲正極和負極的創新性鈉離子電池(SIB)。同社使用作爲其獨自開發用於燃燒廢氣CO2回收材料的一種酸化鐵,即鈉鐵酸鹽(NaFeO2),發現它在SIB負極方面表現卓越。酸化鐵作爲一種無害且資源豐富的材料被廣泛使用。相比供應不足和價格上漲風險存在的偏在資源的Li電池,由於利用了幾乎無窮的和廉價的Na,SIB是一種在資源和價格方面具有優勢的下一代蓄電池。過去,α型的鈉鐵酸鹽(α-NaFeO2)被報道爲正極的功能是有效的,但是同公司首次發現將其獨自開發用於負極的酸化鐵即α-NaFeO2可以獲得優秀的充放電性能。此外,β型的鈉鐵酸鹽(β-NaFeO2)作爲同質多形也可以應用於負極,並且首次實現了在負極和正極都使用相同類型的鐵酸鹽實現可逆充放電。目前,SIB被期望作爲大型靜態電源的價格便宜的蓄電池,而在海外,中國CATL也推進了用於電動汽車電源的應用,更加引起了人們的關注。但是作爲其負極,與LiB相同的碳基材料被使用,需要新的負極材料來提高其高能量密度。以前,Fe2O3就成爲了具備巨大的Na吸蔵−放出量(理論容量:1,007mAh g-1)而被認爲是候選材料,但是有充放電劣化的問題,因爲Fe2O3會凝聚在一起降低電極耐久性。此次,同公司通過與銻(Sb)的複合化,確保了電極的集電性和凝聚Fe2O3顆粒的抑制,證明了可以改善其循環壽命。而且發現了單獨使用鐵酸鹽作爲SIB負極並且可實現充放電,以及證明了使用僅Fe2O3作爲負極的情況下存在短的充放電週期壽命的問題可以通過單獨鐵酸鹽克服。同時,使用相同材料作爲正極和負極,採用不同Na吸蔵-放出機制進行充放電運行,世界上首次成功實現了由NaFeO2負極和NaFeO2正極組成的蓄電池,以及證實替換負極爲β型NaFeO2也可以獲得同樣的充放電特性。酸化鐵系材料,包括Fe2O3,在SIB以外也作爲LiB進行了研究的負極材料,使用鈉鐵酸鹽這種酸化鐵能夠在不進行與其他金屬的複合的情況下有效地發揮其高容量具有重要意義。
(4) 軟磁性材料
針對軟磁性業務,完全子公司化的TIC將在2025年3月份開始合併,從2025年3月份開始,軟磁性業務將成爲電子材料業務中銷售額規模僅次於磁鐵業務的部分,2027年3月份將目標鎖定在銷售額爲70億日元,營業利潤率爲3%。同時,將以實現銷售額超過100億日元,營業利潤率爲7%爲目標。目前,TIC在2023年12月的業績將會下降,但是公司將着重於針對用於車輛的電感器進行開發,並通過銷售擴大和協同效應實現銷售額和收益率的提高。具體來說,公司將應對電感器需求的增加,提供用於電感器的軟磁性鐵氧體粉末,以及用於功率電感器的軟磁性金屬粉等。此外,公司還將通過將材料技術和複合技術相結合,目標是爲電感器提供軟磁性複合材料的一站式解決方案。此外,對於由於電子元件搭載的增加導致的電磁波噪聲問題,該公司計劃加強銷售噪聲處理材料、適用於電動汽車無接觸供電的厚膜大型柔性鐵氧體板和用於噪聲抑制的鐵氧體片或帶等成型物。除此之外,還計劃強化銷售將軟磁性粉末混合到環氧樹脂中,製成具有卓越透磁率的環氧型磁性粘合劑和用於實現電子元件的高性能電感器的亞微米級Fe基軟磁性金屬粉末等,預計增大銷售額。
目前TIC自身在2023年12月期間的業績將會下降,而該公司將在車載電感器方面進行開發,並通過銷售擴大和協同效應實現銷售額的提高,具體來說,將針對電感器需求的增加,提供用於電感器的軟磁性鐵氧體粉末,以及用於功率電感器的軟磁性金屬粉等。此外,該公司還計劃通過將材料技術和複合技術相結合,提供用於電感器的軟磁性複合材料的一站式解決方案。還將加強銷售噪聲處理材料、適用於電動汽車無接觸供電的厚膜大型柔性鐵氧體板和用於噪聲抑制的鐵氧體片或帶等成型物,預計增大銷售額。
(撰寫:富時客座分析師 岡本 弘)