テスラがリチウム精製をやる意義とは何か？

先日のテキサス州のリチウム精製施設起工式にて、イーロンマスクは次のように述べました。

「電気自動車の進展において、数年後を見据えると、基本的なボトルネックとなっているのは、バッテリーグレードのリチウム及びリチウム鉱石の供給不足だ。リチウム鉱石の採掘については、実際にはかなり一般的であり、地球上の至るところで行われている。リチウムは、すべての国に存在している。なので、リチウム自体が不足しているわけではないが、バッテリーグレードのリチウムの重工業における精製技術が不足している。バッテリーグレードのリチウムは非常に精密で、極めて純粋でなければならず、リチウムに不純物が含まれると、バッテリーの劣化を引き起こす。したがって、純度は非常に高くなければならない。我々には、これまでに行われていなかったリチウムの精製に非常に効果的であると考えているいくつかのイノベーションがある。これを引き継ぐ良いポイントかもしれない。」

このように発言しています。

イーロンマスクの発言を端的にまとめるとこうです。

1. 電気自動車の進展がリチウム不足によって妨げられる恐れがある

2. リチウム自体は世界中にあり、不足しているとは言えない

3. テスラが持つ革新的なテクノロジーで高品質なリチウム精製を行う

これがイーロンマスクが、リチウム精製事業に取り組む意義です。

こちらが、テスラがリチウム精製施設を建設する場所の周辺地図です。

テスラはテキサス州のコーパス・クリスティという場所をリチウム精製施設建設地に選びました。

コーパスクリスティは、テキサス州南部に位置する港湾都市です。

地図を見ていただくとわかりますが、テスラのEV工場、ギガファクトリー・テキサスに近く、

また来年建設を予定しているギガファクトリー・メキシコからもそれほど遠くない場所に立地しています。むしろ、両ギガファクトリーの中間地点にあり、リチウムを両工場に運び出すのであれば、最適なロケーションです。

リチウム精製施設の着工式で、テスラのパワートレインおよびエネルギーエンジニアリング担当上級副社長のドリュー・バグリーノ氏は次のように述べています。

「コーパスクリスティには、石油・ガス精製の分野で優れた才能があり、この場所には非常に適している。オースティンに近く、とても良い深水港があり、この工場の原料であるスポジュムを北アメリカ中から簡単に運べる経路がある。また、鉄道が直接通じているため、岩石を運び出すことも、製品を鉄道で送り出すこともできる。本当に素晴らしい場所で、コミュニティのサポートも素晴らしい。」

つまり、コーパスクリスティは、テスラが海上、陸上の両方に置いて、輸送拠点としての機能を重視していることがわかります。

「私たちは非常にクリーンなリファイナリーであることを強調したい。トヨタがほのめかしたように、有害な排出物などはない。人々は精製施設の中心に住んで、何の悪影響も受けずに生活することができる。非常にクリーンな運営となっている。」

このように述べ、リチウム精製施設は環境的にも健全な運営を目指していくと断言しました。

テスラは、最終的にはこのテキサス・リチウム精製施設を通して、EVバッテリー材料のエコサイクルを実現しようとしています。

リチウム供給チェーンの地域化を重視し、製造スクラップやエンド・オブ・ライフバッテリーを含め、すべてのフィードを活用することが重要だとテスラは述べています。

テスラは、テキサスに自ら運営するリチウム精製施設を作り、稼働させることで、北米の電気自動車工場が必要とするバッテリー材料のエコサイクルを実現する。

これが、テスラの狙いであり、描くビジョンだと言えます。

また、テスラは、テキサスのリチウム精製施設は、テクノロジーを駆使して、一般的な施設よりも、３０％プロセスカットをし、良質でリーズナブルなリチウム供給を目指そうとしています。

この施設が完成すれば、テスラは更なる垂直統合進展により、競合との差をますます拡大し、EVメーカー、またエネルギー企業として、確固たる地位を確立することは間違いないと思います。

引き続き、テスラのリチウム精製ビジネスに注目していきましょう。