【決算プレビュー】需要軟化の中、生成AI向け半導体が台湾TSMC次の成長に繋がるか？

2023年4月20日に発表された台湾積体電路製造（TSMC、台証：2330、NYSE：TSM）の2023年1Q決算により、同社の2023年第1四半期の連結売上高は5086億3千万台湾ドル、純利益が2069億9千万台湾ドル、希薄化後1株当たりの利益が7.98台湾ドル（ADR1株当たり1.31米ドル）であった。米ドルでは、第1四半期の売上高は167億2千万米ドルであり、前年同期比では4.8％減少し、前四半期比では16.1％減少した。

前年同期比では、第1四半期の売上高は3.6％増加し、純利益と希薄化後1株当たりの利益はともに2.1％増加した。2022年第4四半期と比較すると、第1四半期の売上高は18.7％減少し、純利益は30.0％減少した。すべてのデータは連結ベースでTIFRSに準拠して作成された。また、第1四半期の粗利益率は56.3％、営業利益率は45.5％、純利益率は40.7％であった。

第1四半期において売上高に占めるテクノロジー別の割合をみると、7ナノメートル以下のウエハー収益は、ウエハー収益全体の51％を占めた。その中、5ナノメートルの出荷量はウエハー収益の31％を占め、7ナノメートルが20％だった。

製品別では、売上高の44％を占める主力のHPC（高性能計算）は前年同期比14％減収、HPCに次ぐスマートフォン(売上比率34％)は同27％減収。唯一増収の部門はオートモーチブ(Automotive)であり、売上高の7％を占めている。

パンデミック後のオンライン活動の減少や景気後退への懸念などを受け、世界テック業界の低迷は深刻化している。また、中国が半導体などの材料に使われる2種類の重要な金属の輸出を制限すると決めたことで、業界の不確実性はさらに高まっている。そのため、TSMCは近年着実に売上高と利益を驚異的なペースで伸ばしてきたものの、第2四半期には潮目が変わる見込みだ。

2023年2Qの見通しについて、同社のWendell Huang副社長兼最高財務責任者は「マクロ経済情勢の悪化とマスマーケット需要軟化の影響を受け、顧客様達がそれに応じて需要を調整したことは当社第1四半期減収の原因である。2023年第2四半期に向けても、顧客の在庫調整による業績面への影響が続くと予想している」と述べた。現時点の事業見通しに基づき、経営陣は2023年第2四半期の業績を以下のように予想している。
為替レートは1米ドル=30.4台湾ドルと仮定した場合、売上高は152億~160億米ドルを見込み。売上総利益率は52%から54%と予想される。営業利益率は39.5%から41.5%と予想される。

投資家たちの予想について、同社はすでに第2四半期売上高は約10%減少したと発表しており、投資家たちの焦点は利益に移っている。ウォール街では粗利益率53.2%、営業利益率41.0%を見込んでいる。人工知能(AI)への新たな需要が予想される利益減少に対抗できるかどうか、また今後の成長の新たな原動力になり得るかどうかに期待されている。来年米国での生産開始を目指しているため、その事業展開に関するコメントも市場に影響力を持つことが可能と考えられる。