株式投資家であっても、今!債券に注目するメリット
今、マーケットで最もホットなトピック、それは【債券市場】に他ならないでしょう。
このところ、米国債利回りの急上昇が続き、世界の金融市場は不安定な状態にあります。世界最大の債券市場でボラティリティが発生し、一部の投資家の間では、利回りの上昇が何を意味するのか?インフレやFRBの金融政策と、国債利回りがどのように関係しているのか?といった懸念が高まっているようです。
今回は、世界経済に影響を与える債券市場について取り上げます。
・米国債について知っておくべきポイント
・インフレ?金利?債券利回りに影響を与える要因は?
・国債のターム・プレミアムの変化パターン
・逆イールドカーブはリセッションの予測に役立つか?
まずは、債券市場で使われる金利、利回り、満期、償還といった具体的な用語を理解しましょう。
米国債の種類と特徴
世界最大の株式市場は米国です。
そして、世界最大の債券市場を持つ国も同じく米国なのです!
2023年現在、米国債券市場の総額は51兆ドルを超え、世界市場の41%を占めています。
この巨大な規模のおかげで、米国債券市場は世界で最も流動性が高く、勢いもあると広く考えられています。米国債券市場は世界の金融市場のダイナミックさを反映するだけでなく、株式や為替など他の金融資産の価格形成にも影響を与えるとされています。
米国債券市場には、国債、社債、地方債、モーゲージ担保証券など、いくつかの種類の債券がありますが、米国財務省が発行する米国債(トレジャリー)は最も重要と考えられています。
なぜなら、米国債は米国政府によって裏付けされているため、ほぼ無リスクであると見なされているからです。この特徴から、世界中の国や個人投資家の間で、金利を考慮した投資対象として選ばれています。
諸外国のなかで最も多く米国債を保有している国をご存じですか?
それは、日本です!日本政府の米国債保有額は、2023年7月時点で約1兆1千億米ドルにも上るそうです。(出典:米国財務省)
米国債は、連邦政府がその支出を賄うために使用するもので、1ヶ月から30年までの様々な償還期間があります。米国債は、短期債(1年以下)、中期債(2~10年)、長期債(10年超)に償還までの期間で分類されます。
政府が国債に対して支払う金利は国債利回りと呼ばれ、政府の資金調達コストと投資家の経済の将来見通しに対する期待の両方を反映しています。
短期金利は金融政策の変化に最も敏感であり、その変動は長期国債利回りの変動よりも大きくなることが多いとされています。中長期の国債利回りには、将来の米国経済情勢に対する投資家の期待に基づくターム・プレミアム(期間プレミアム)が短期国債利回りに上乗せされています。
したがって、短期国債利回りの変化は中長期国債利回りに影響を与える可能性があるのです。
ここで、米国債利回りの上昇が米国財務省の米国債の負担(利払い)に影響するのか?と疑問に思う人はいないでしょうか?
実は米国財務省による米国債の発行コストは発行時に固定されているのです。したがって、米国債利回りの変化は債務残高のコストには影響がないのです!金利が上昇し、国家債務が増大すれば、将来の借入コストは上昇する可能性が高いと考えられます。しかし、利回りの上昇は米国債の名目価値を低下させる可能性があるわけです。
債券の価値は債券価格と利回りで決まりますが、債券価格と利回りは反比例します。
債券の現在の利回り=年間支払額÷現在の市場価格
債券価格が上昇すると利回りは低下し、債券価格が下落すると利回りは上昇する。
※とにかく、これだけは頭に叩き込みましょう↑
利回りが上昇するということは、国債に対する需要が低下していることを意味し、投資家は代わりに高リスク・高リターンの投資に目を向ける可能性があります(金利が高いほど債券投資の妙味が増すが、債券価格の下落には留意する必要がある)。
国債利回りに影響を与える要因を、分類分けして整理します。
①投資家心理: 投資家のマーケットへの信頼度が低下すると、債券価格は上昇し、利回りが下がる傾向にある。この背景には、不確実性の高い時代には、投資家は国債のような比較的安全な投資対象に集まる傾向があり、利回りの低下につながる。(債券買い→債券価格上昇&利回り低下)
②金融政策: 投資家は10年債利回りを金利のベンチマークとして注視するが、短期金利の変動によっても影響を受けることがある。例えば、FRB(連邦準備制度理事会)が金利を引き上げると、フェデラル・ファンド・レート(政策金利)が上昇し、国債利回りに直接影響を与える。
③インフレ期待: 米国債利回りは実質金利とインフレ期待に分けられ、マーケットのインフレ期待が利回りの上昇・下落に大きく影響することがある。さらに、予想外の経済指標の発表も国債利回りに大きな影響を与える可能性がある。例えば、インフレ抑制局面において、CPI(消費者物価指数)、PCE(個人消費支出)、非農業部門雇用者数や失業率(雇用統計)が市場予想を上回った場合、堅調とされる米国経済がFRBの追加利上げを支持することを意味する。
④新興イベント: 地政学的紛争や戦争は短期的な利回りの変動を引き起こす可能性がある。不確実性が高まると、投資家は株式市場から資金を債券市場に避難させ(債券の買い)、利回りが低下する。逆に、主要産油国を巻き込んだ地政学的緊張はインフレ期待を高め、国債利回りに上昇圧力をかける可能性がある。
マクロの視点から広く注目される債券市場指標
債券投資家だけでなく、株式投資家も債券市場を見ることでマーケットの状況や投資家心理への理解が深まります。
そして、まさに今!その必要性が高まっていると考えられているわけですね。
債券の主要指標を整理します。
①10年債利回り: 証券会社に入社したら、まず米国の10年債、そして2年債の動向を毎日見るほど、金融業界ではマスト。10年債利回りは、住宅ローン金利や社債金利など、他の金利のベンチマークとして利用できる。また、10年債利回りは市場に対する投資家の信認の表れとも考えられている。
②米ドル: 世界の基軸通貨である米ドルの動向は、米国債券市場に大きな影響を与える。ドル高が進むと、海外投資家が米国債券市場に目を向ける可能性があり、債券需要が高まり、債券価格が下落し、利回りが上昇する。
③VIX指数(CBOE ボラティリティ指数): VIX指数は、今後30日間のS&P500指数のボラティリティに対するマーケットの予想を反映している。マーケットのリスク選好度が低下し、投資家のマーケットへの懸念が強まると、VIX指数は上昇し、米国債などの安全資産の需要と価格を押し上げる傾向にある。
国債の利回りは、満期が近づくにつれて高くなるのが一般的です。つまり、債券を購入すると資金を長期間拘束しておくことで、より高いリターンを期待できるというわけです。
そして通常、短期債は長期債よりも利回りが低いものです。したがって、1ヵ月から30年までの債券のイールドカーブをX軸にプロットすると、通常のイールドカーブとしても知られる上昇トレンドのカーブを示すはずです。
しかし!イールドカーブが反転する、つまり短期債の利回りが長期債の利回りを上回る場合があります。このような場合、イールドカーブは下向きの勾配を描き、逆イールドカーブと呼ばれます。
現在、米国債のイールドカーブは逆転しており、2年物利回りと10年物利回りは2022年7月から逆転したままです。
…かなり前から、逆イールド状態にあります!
最近の利回り上昇は、FRBの金融引き締めに起因していると考えられます。高インフレに対抗するため、FRBは2022年3月~2023年10月にかけて政策金利を計11回引き上げ、利上げ幅を5.25%から5.50%に拡大しました。この利上げのスピード感が話題になったのは記憶に新しいことです。
FRBの積極的な利上げは、米国経済の成長を鈍化させたり、リセッション(景気後退)につながったりするのではないか?と多くの投資家を不安にさせました。
この場合、投資家は長期国債に逃避し、国債価格を押し上げ(債券の買い)、利回りを下げる傾向があります。10年債など長期債の利回りが短期債より低いのはこのためだと考えられます。
逆イールド状態はマーケットにとって、長期的な懸念を示す稀な出来事です。多くの銀行は預金者に短期金利を支払い、長期融資から利息を得るというビジネスモデルに依存しているため、逆イールド状態は銀行にとって不利な傾向にあります。その結果、イールドカーブの逆行現象は銀行の収益性を阻害することになります(連想で銀行株売りなどが考えられる)。
歴史を振り返ると、10年物国債利回りと2年物国債利回りの差はリセッション(景気後退)の前兆として機能してきました。イールドカーブが正常な場合、その差は通常プラスで、将来の景気安定を示します。しかし、逆イールド状態にある場合、その差はマイナスとなり、景気の後退が近づいている兆候とされています。
10年物利回りと2年物利回りのスプレッド(金利差)がマイナスの逆イールド状態になると、過去の経験則上で言えばに6ヵ月から24ヵ月以内にリセッションが発生しています!1955年から2018年までのすべてのリセッションを正確に予測しているため、逆イールドはマーケットの先行指標とみなされています。
シカゴ連銀のチャートによると、1970年代以降、イールドスプレッドはリセッションの前に毎回マイナスになっており、網掛け部分は各リセッションを表しています。
このことから、短期金利が長期金利より高いことを示す逆イールドカーブは、差し迫ったリセッションの警告であるとみなされることが多いのです!
現在、米国債のイールドカーブは徐々にフラット化(平坦化)し、利回りは収束しつつあるように見えます。
しかし、2年債と10年債のイールドカーブの逆転は、差し迫ったリセッションの指標とみなされる大幅な債券売り(金利は上昇)に先行することが多いため、マーケットは依然としてこの傾向を警告のサインとみなしています。
デューク大学のキャンベル・ハーベイ教授は、リセッションは2024年の第1四半期か第2四半期に起こる可能性が高く、金融システムに重大なリスクをもたらす可能性があると予測しています。
このようなわけで、足元のマーケットでは債券にスポットライトが当たっています。
株式投資家であるアナタにも、とても重要なトピックであることがおわかりいただけたのではないでしょうか?
今後の戦略や投資アイディアがあれば、ぜひ共有してください!
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コメント
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QUADRIFOGLIO : 「ドル高が進むと、海外投資家が米国債券市場に目を向ける可能性があり、債券需要が高まり、債券価格が下落し、利回りが上昇する。」
とありますが、債券需要が高まっているのに債券価格が下落するという理屈がイマイチ理解出来ません。
理解力悪くて申し訳ないです。
182704649 : 債券需要が高まり、債券価格が下落が理解できません。詳しく教えて下さい。