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日本製鉄のUSスチール2兆円買収の背景に電炉シフト、次の標的は国内電炉?業界再編へ注目の3銘柄

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moomooニュース日本株 コラムを発表しました · 2023/12/22 01:59
$日本製鉄(5401.JP)$による米国の同業 $ユナイテッド ステーツ スチール(X.US)$の2兆円買収は米国の内政問題も絡んで予断を許さないが、大手鉄鋼メーカーの“次のターゲット”を探るため参考になる要素もある。中でも特に参考になるのが、日鉄の狙いの1つに、USスチール(USS)の持つ「ミニミル」と呼ばれる小規模電炉(電気炉)があることだ。鉄鉱石から製鉄する高炉法に比べて、鉄スクラップを溶かして製鉄する電炉法は二酸化炭素排出量が圧倒的に少なく、脱炭素の流れで将来的に高炉から電炉へシフトするといわれている
日本国内では、高炉メーカーが日本製鉄と $JFEホールディングス(5411.JP)$の2強を中心に再編されているのに対し、電炉メーカーは再編が遅れている。資金力のある高炉2強を中心に、今後は電炉メーカーの再編が進むことも想定される
日本製鉄が欲しがる小規模電炉
日本製鉄がUSSとの買収合意に関して12月18日に公表した資料は、両社の共通目標として「2050年までの脱炭素」を掲げている。さらに、USSの強みとして、最先端の電炉ミニミルを挙げている。USSは2019年に買収した最先端のミニミル事業会社「Big River Steel」を傘下に持ち、生産能力倍増のための新施設が2024年下期からの稼働を予定している。
▲日本製鉄はUSスチールのミニミルを高く評価(日本製鉄12月18日公表資料「U.S.Steelの買収について」)
▲日本製鉄はUSスチールのミニミルを高く評価(日本製鉄12月18日公表資料「U.S.Steelの買収について」)
CO2排出量が電炉の4倍の高炉に将来はない?
電炉は主として鉄スクラップを溶かして製鉄する。鉄鉱石を高温下でコークスと化学反応させて製鉄する高炉が鉄1トンを生産するのに約2トンのCO2が発生するとされているのに対し、電炉であれば排出量は4分の1程度といわれる。CO2の排出を抑える水素還元製鉄などの新技術も研究されているが、量産には至っていない。
電炉は脱炭素だけでなく、資源循環の面でも優れている。世界の人口が頭打ち状態になると、これまで100年以上にわたって量産されてきた使用済みの鉄が大量に発生することも想定される。三菱総合研究所理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏は21年5月17日付のブルームバーグの取材に対し、国内に24基(当時)ある高炉は「2050年ごろにはほとんどなくなるだろう」との見方を示している。
現在は自動車のフレームなど高級鋼は高炉で製造されることが多いが、今後は電炉へのシフトが進むとみられている。
米国は世界屈指の電炉先進国
▲2022年の粗鋼生産量と生産方法の内訳(世界鉄鋼協会ホームページ)
▲2022年の粗鋼生産量と生産方法の内訳(世界鉄鋼協会ホームページ)
USSの凋落が象徴するように、粗鋼生産では日中印に後塵を拝する米国だが、電炉では世界屈指の先進国といえる。世界鉄鋼協会(Worle Steel Association)のデータによると、世界の粗鋼生産の7割超が高炉、3割弱が電炉で製造されている。生産量3位の日本ではおよそ4分の3が高炉で製造しているのに対し、米国では7割近くを電炉で製造している
米国の鉄鋼最大手の $ニューコア(NUE.US)$も小規模電炉(ミニミル)に強みを持つ。S&Pグルーバル・レーティングなどに所属した証券アナリストの宮川順子氏は2021年7月5日付の週刊エコノミストOnlineでニューコアの強みについて、「高炉法では24時間連続操業のため炉を停止できないが、ミニミルでは市況をみながら炉の停止や再開を行うことで生産量を調整しやすいメリットがある。高強度鋼板のような高付加価値製品についても、エンドユーザーの生産拠点に近い場所にミニミルを新設し、顧客の細かいニーズに合った生産体制や技術開発を行っている」と解説している。
国内大手もようやく高炉偏重からから電炉にシフト
一方、日本製鉄、JFEHDの2強をはじめとする日本の鉄鋼業は高炉が中心。22年後半ごろから、ようやく電炉シフトの具体的な動きが進み始めたばかりだ。
日本製鉄が2022年10月、兵庫県姫路市に高級鋼製造用の大型電炉を新設して商業運転を開始。23年5月には福岡県北九州市と姫路市の製鉄所を候補地に、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換について本格検討を開始したと発表した。
また、JFEホールディングス傘下のJFEスチールは23年5月、25年度下期に千葉県千葉市に電炉を導入すると発表。11月には岡山県倉敷市に27年度に高炉を大型電炉に転換する意向を明らかにしている。
国内電炉業界の再編開始は目前?
国内大手の電炉シフトが遅れる中で注目されるのが、既存の電炉メーカーの業界再編だ。
普通鋼電炉工業会のホームページによると、普通鋼電炉会社は国内に約30社、約50事業所あるといい、高炉メーカーに比べて再編が遅れている。高炉メーカーの売上規模は日本製鉄が約8兆円、JFEHDが約5.3兆円であるのに対し、電炉メーカーは上場企業でも3000億円台で、非上場企業も多い。
電炉の懸念として、多くの電気を使用することと、時期によって素材となる鉄スクラップの争奪戦になる可能性が挙げられる。新たな電炉の建設に加え、再生エネルギーを活用した電炉の開発研究や、鉄スクラップの回収ルートの開拓などは、資本力が必要になることが想定される
▲上場している電炉メーカーの概要
▲上場している電炉メーカーの概要
JFEHD系の電炉メーカーが2012年4月に4社統合により完全子会社のJFE条鋼に集約しているのに対し、日本製鉄は出資先が残っている。特に同社が20%以上の株式を保有している $共英製鋼(5440.JP)$ $トピー工業(7231.JP)$ $大阪製鐵(5449.JP)$は、再編の中心になる可能性もありそうだ。
特に大阪製鐵は日本製鉄の保有割合が高い上に、アクティビストのエフィッシモ キャピタルが6.4%保有しており、動向が注目される。
ーmoomooニュースMark
出所:日本製鉄HP、金融庁「EDINET」、各社HP、普通鋼電炉工業会HP、日本経済新聞、週刊エコノミストOnline、moomoo
免責事項:このコンテンツは、Moomoo Technologies Incが情報交換及び教育目的でのみ提供するものです。 さらに詳しい情報
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