<半導体株、セルインメイの足音？！> TSMC&ASMLの決算からみる下げ要因とAI半導体需要

moomooニュース米国株コラムを発表しました · 2024/04/19 17:56

TSMCとASMLが決算後下落、SOX指数も下げへ
世界半導体産業において重要な位置にある2つの企業が直近、決算を発表した。最先端露光措置を製造する世界唯一の企業である $ASMLホールディング (ASML.US)$と、半導体受託生産（ファウンドリー）で世界最大手の $台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング (TSM.US)$だ。両社の決算発表は嫌気され、株価だけでなくSOX指数（フィラデルフィア半導体株指数）も下落した。もっとも、米10年債利回りの急上昇を警戒したリスク回避の動きも利益確定売りを助長したとみられる。

<半導体株、セルインメイの足音？！> TSMC&ASMLの決算からみる下げ要因とAI半導体需要

今回は両社の決算で主に何が嫌気されたのか、決算内容とともに見てみたいと思う。また、両社が決算説明会で示した半導体市場全般やAI半導体の需要に対する見通しについても確認してみることにした。

ASML
ASMLの最大顧客（Bloombergデータ）はTSMCで、次いでサムスン電子と $インテル (INTC.US)$ が主要顧客となっている。したがって、ASMLの受注状況はTSMCやサムスン電子、インテルなどの半導体大手からの注文状況を反映する傾向がある。そのため、ASMLの決算では特に新規受注が注目されやすい。

ASMLは4月17日に、1-3月期の新規受注が36億ユーロとなり、前四半期より61％減少したと発表した。市場予想の46.3億ユーロを大きく下振れた。市場では最先端露光措置で特にTSMCからの注文に期待していた。

受注の大幅減について経営陣は決算説明会で、「受注フローは（短期的に）凸凹になりやすく（不安定で）、年間を通してみた場合、必ずしも均等にならない」と説明した。

加えて、「長期的に見ると、マクロ環境に起因する大きな不確実性は依然として存在しているものの、（半導体）サイクルの底は過ぎたように見える。2024年中は業界が回復すると予想している。顧客との対話に基づけば、2025年は多くの要因に牽引され、好調な年になるだろうと予想している」と述べた。経営陣のコメントからすると、TSMCなどの主要顧客は最先端露光措置の発注を延ばした可能性がある。

なお、米国の対中輸出規制が受注動向に影響を与えたかどうかは不明。オランダ政府は米国の要請に応じて2023年6月にASMLに対して高性能の半導体製造装置の輸出禁止措置を発表した。同年9月から発効となり、実行期限は2024年1月となっていた。一部の中国企業が駆け込みで発注を増やした可能性もあるかもしれない。

AI半導体の需要について経営陣は、「前四半期と同様に、AI関連アプリケーションからの需要に勢いがある。メモリー需要は、主にDDR5やHBMなどの高度なメモリーをサポートするDRAMテクノロジーのノード移行によって推進されている」と明かした。これらのメモリーはAIデータセンター向けで急激に増えている。シェア首位はSKハイニックスとなっているが、2位のサムスン電子や遅れて参入した3位の $マイクロン・テクノロジー (MU.US)$ も生産を強化している。

TSMC
TSMCの最大顧客は $アップル (AAPL.US)$である（Bloombergデータ）。次いで、 $クアルコム (QCOM.US)$、 $アドバンスト・マイクロ・デバイシズ (AMD.US)$ 、 $エヌビディア (NVDA.US)$、 $ブロードコム (AVGO.US)$などの半導体大手が主要顧客に並ぶ。したがって、TSMCの場合はより末端需要の動向を反映しており、同社の業績内容や見通しはASMLより注目されている。

なお、TSMCは決算発表より前に月次ベースの売上高を公表している。4月10日に3月の売上高を発表した。それに基づけば、1-3月期の売上高は前年同期比16％増で、約1年ぶりの高い伸びとなった。そのため、4月18日発表される決算内容に対して市場の期待は大きくなっていた。

★全般的に好決算
4月18日に発表された1-3月期の純利益は前年同期比で9％増加し、市場予想を上回った。4-6月期の売上高ガイダンスも196億～204億米ドルと、市場予想の191億米ドルを上振れした。会社側は、同社が業界をリードしている3ナノメートルおよび5ナノメートル技術に対する強い需要がスマートフォン向けによる影響を部分的に相殺する見込みだと説明した。

★市場が嫌気した点
・通期の設備投資計画：TSMCは通年の設備投資計画を280億～320億米ドルで据え置いた。市場では生成AIブームを背景とした半導体需要や半導体サイクルの底入れに対する期待が強く、TSMCが設備投資計画を引き上げることを見込んでいた。

・2024年の半導体市場見通し：経営陣は決算説明会で、今年の半導体市場（除くメモリー）の成長見通しを従来の「10％強」から「10％」に小幅ながら下方修正した。主にスマートフォンやパソコン、自動車向けなどの販売がなお弱いことを反映している。

★AI半導体需要
経営陣は決算説明会で、「AI関連の需要は引き続き、急増している」と表明した。同時に「TSMCはAIアプリケーションを実現するうえで重要な存在だ」と強調し、「ほぼすべてのAIイノベーションがTSMCと協力して、エネルギー効率の高いコンピューティングパワーに対するAI関連の飽くなき需要に取り組んでいる」と明かした

まとめ
総合的にみると、ASMLとTSMCの決算説明会からは、スマートフォンやパソコン、自動車向けの半導体市場の回復ペースは想定より緩やかである一方、AI半導体に対する需要は引き続き堅調であることが示された。

これまでの半導体株の上昇は、上記のAI半導体以外の需要回復に対する期待（①）に加え、AI半導体に対する堅調な需要見通し（②）に支えられている。米利下げに対する期待（③）も半導体などグロース株への買いにつながったとみられる。

ASMLとTSMCだけの決算でみた場合、上記の①は後ずれする可能性が高くなったことが示唆された。足元は③の後退も相まって、半導体株は利益確定売りに押されやすく、セルインメイの様相となる可能性もあるかもしれない。一方、重要なのは②は健在であることが示された。生成AIブームは大きな技術革新として息の長いブームとなる可能性が高いと考えられるため、中長期的にみて、半導体企業のグロース部分は②によるところが大きいと考えられる。調整時は押し目買いのスタンスを取ったほうがいいかもしれない。足元では米長期金利の動向に不透明感があることも踏まえると、押し目買いは時間分散にしたほうが良さそうだ。

2024年4月19日作成　マーケット・アナリスト　Amelia
出所：会社資料、Bloombergおよび各種資料をもとにmoomoo証券作成

免責事項：このコンテンツは、Moomoo Technologies Incが情報交換及び教育目的でのみ提供するものです。さらに詳しい情報

129

翻訳

報告

189K 回閲覧

サインインコメントをする

exera : 単純に今の株価が押し目と判断するのは危険と言うことでしょうか

報告
 返信

返信をキャンセル
とっとこいこう : 業績は上向いているので、長期的には半導体はまだまだ伸びると思っています。

報告
 返信

返信をキャンセル
大負けネコ(HYPER) : インフレ率の高止まりに、利下げ時期の後退発言、長期国債金利の上昇、地政学的リスク(イスラエルvsイラン)など、昨年末から大きく株価水準が上がってたので、とりあえず利確する、というのは投資ファンドや大口投資家なら、普通の行動でしょう。
ASMLも、TSMも、4半期だけを切り取れば、市場予想を下回る指標の一つぐらい、出てくるのは普通。
経営陣は、そんな超短期間での経営計画なんか、念頭には無いでしょう。今年末や来年以降の将来に向けての需要、にどう対応するのかが問題なので、経営陣のコメントには、余裕と自信を感じました。
弱小個人投資家の自分は、あくまでも強気でホールド。
今年11月の大統領選までには、もう少し違う動きが見えるのでは？と思っています。
なので、たとえ塩漬けになっても、静観&放置です。
買い増しも、損切りもしません。
イランの反撃も、体裁だけのポーズのレベルだったし、アメリカ市場も日本市場も、動揺し過ぎ。
バイデン政権は、冷静に沈静化に努めているように見えます。

報告
 返信

返信をキャンセル
182791546 : 的確なレポートをありがとう

報告
 返信

返信をキャンセル
新div : 来週は、
Teslaとインテルの決算が
あるのか？
恐怖だなぁ。
金利が高過ぎる
金曜日のPCEしだい。

報告
 返信

返信をキャンセル
181338057犬心久美子 : アメリカや日本ならEU V電光機の
技術をマスターして出来そうな気がするんだけどなぁ。ASMLで完成された機器は一台が大変高額で️何十億〜、、なので、大量生産は出来ず予約順番待ち。日米欄で、中◯に技術盗まれるから輸出しないよう協定したけど、、
先日、決算も良くなかった事も加味して？
ASMLは、中◯に　日和った
オランダに頼らず何とか研究開発できたらと
思います。

報告
 返信

返信をキャンセル

moomooニュース米国株

moomooニュース公式アカウント

39K

フォロワー

フォロー中

88K

訪問者

フォロー