「国内政局」や「米大統領選」で進む円安!不確定要素だらけの日銀会合、12月利上げの可能性は?【日銀会合プレビュー】
日銀が30~31日に開催する金融政策決定会合を控え、新たな不確定要素が加わった。27日の衆院選で自民・公明の与党が過半数割れし、政局が不透明になるとともに、円安が進んだことだ。10月会合の焦点は、次の12月会合で今年3回目の利上げをするかに関して、何らかのシグナルが出るかどうか。
日銀は31日昼頃に決定内容を発表し、午後に植田和男総裁の記者会見を予定する。11月5日の米大統領選も含めて大きな不確定要素による影響が避けられない状況で、どのような発信をするか注目される。
10月会合は金利据え置きの公算前回の9月会合では植田総裁が記者会見で、利上げに向けた判断の
「時間的な余裕はある」と発言。市場からは“ハト派”に転換したと受け止められた。
「米国経済がソフトランディング的な着地をするのか、丁寧に見極めていきたい」「見通しの確度が高まった、したがってすぐ利上げだということにはならない」とも述べており、10月は政策金利が据え置かれる公算が大きい。
植田総裁の会見内容を総合すると、
10月会合では、米国経済の見通しやそれに伴う為替レートの動きと国内物価見通しに与える影響をまとめ、経済・物価情勢の展望(展望レポート)を公表。その上で、利上げの時期を検討する、という流れが示唆された。植田総裁は「経済データがどれぐらい見通し通りに進めば利上げに進むのか、決まったスケジュール感やペース感があるわけではない」とも語った。
ブルームバーグが10月17~22日に行った53人へのエコノミスト調査では、
日銀の利上げタイミングについて、10月との回答は2%のみで、12月が53%、25年1月が32%だった(24日付ブルームバーグ)。
マクロ指標は日銀の「オントラック」か経済・物価状況については、日銀の見通しの通り(オントラック)の範囲内といえそう。総務省が10月25日に発表した10月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、前年同月比で1.8%の上昇となり5カ月ぶりに2%を割り込んだ。ただ、生鮮食品を除く食料が3.8%の上昇となっており、同日付のブルームバーグは「政府の物価高対策の影響が主因」「市場では
日銀の利上げ姿勢に影響はないとの見方が出ている」としている。
9月に0.5%利下げが「予防的」に行われた米国経済についても好調を示すデータがみられており、「ソフトランディング」から
「ノーランディング」という表現が用いられるようになっている。
植田総裁は10日23日に米ワシントンで「
金融正常化への取り組みはまだ始まったばかりだ」と述べており(24日付日本経済新聞)、段階的な利上げを進めたい意向に変わりはないようだ。
「時間的な余裕」なくなってきてる?経済データが日銀の「オントラック」だとすると、「オフトラック」なのが「政治」問題といえる。
植田総裁が「時間的な余裕」の根拠として挙げた「最近の為替動向も踏まえると、円安に伴う物価上振れリスクは相応に減少しているとみている」との見立ては、早くもズレが生じている。
9月の日銀会合前の同月16日には一時1ドル=139円台まで円高が進んでいたが、その後、円安に急転回。足元では153円程度まで円安が進行している。
その円安の流れを作ったのが「政治」だ。首相就任前の石破氏は、「金融緩和という基本的政策を変えないなかで徐々に金利のある世界を実現していくのは正しい政策だ」(8月6日付ロイター通信)と発言するなど、利上げ推進派とみられていた。このため、9月27日の自民党総裁選で石破氏が逆転勝利すると、最大5円近く円高に振れた。
ところが、首相就任翌日の10月2日に植田総裁と会談した後、石破首相は「現在、追加利上げするような環境にあるとは考えていない」と、“豹変”ともとれる発言を行った。これを受けて為替レートは1ドル=146円台半ばへと、3円程度円安が進行した。
さらに追い打ちをかけたのが、10月27日の衆院選で自民党が大敗し、与党で過半数割れとなったこと。政局の見通しが不透明になったことで、円が売られる動きが進んだ。加えて、米国市場で米国大統領選にトランプ氏が勝利するとの見方が強まっていることも、ドル買いの要因になっているとみられる。
衆院選での自民党大敗の一因には、物価高に対する有権者の不満もあったとみられている。円安基調が続き物価上振れリスクも高まる中で、日銀の「時間的な余裕」がどの程度残っているのか、植田総裁の発言が注目される。
政治に振り回されて利上げが難しくなる?「政治」が原因で日銀が失うのは「時間的な余裕」だけでなく、
利上げという選択肢そのものを失う可能性も否定できない。
自民・公明両党と立憲民主党の双方で綱引き状態となり、キャスティングボードを握る状態にある
日本維新の会や国民民主党は、党の政策に物価高対策も意図した減税を掲げている。物価高を問題視する一方で、経済・財政政策としては緩和的・拡張的なスタンスを取っている。両党の幹部はそれぞれ8月の「令和のブラックマンデー」に際して、
7月の日銀による利上げを「急ぎ過ぎ」などと批判している。
維新や国民民主が関与を強めた政権から、
「円安による物価高は嫌、景気悪化につながりそうな金融政策はもっと嫌」という声が強まれば、本来は自主性が尊重されるはずの日銀の取れる選択肢が狭まることも想定される。
米国の大統領選という“変数”もある中で、植田総裁が12月会合まで見据えた発信をどこまでできるか、注目される。
ーmoomooニュースMark
出所:日本経済新聞、Bloomberg、ロイター通信、moomoo
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