AIの「次の波」関連株は？エヌビディアCEOの発言で半導体が上昇！分割前の一大イベントで、フアン氏は何を語ったのか？

今週末に分割を控えている（※） $エヌビディア (NVDA.US)$ のジェンスン・フアンCEOは、台北国際コンピュータ見本市（Computex）開幕に先立つ6月2日に基調講演を行った。翌6月3日、エヌビディア株は4.9％上昇し、主要サプライヤー銘柄もそろって買われた。

約2時間にわたる講演で、フアンCEOは何を語ったのか。詳細内容に加え、フアン氏が強調したAIの「次の波」に関わっている企業もチェックしてみた。

※エヌビディアは5月下旬の決算発表時に1株を10株に分割すると発表。権利付最終日は6月7日（現地時間、以下同様）、権利落ち日は6月10日の予定となっている。

フアンCEOが主に語ったこと
●「新しいコンピューティングの時代が始まった」、「次の産業革命が始まった」
「すべてのデータセンターは近い将来、（AIアクセレーター、あるいはAIチップによって）加速されることとなろう」、「インターネットやコンピュータとのほぼすべてのやり取りで、どこかのクラウド上で生成AIが稼働するようになるだろう」。

●「買えば買うほど、お得（もっと節約できる）」
「100倍のスピードアップと3倍のパワーを、わずか1.5倍のコストで実現できるためだ。」

●「エヌビディアのCUDA製品群は、新たな市場を切り開く」

CUDAは、高性能計算を実行することができるエヌビディアのソフトウェア開発プラットフォーム。エヌビディアのAI半導体が強いのは、GPUだけでなく、GPUを利用するためのソフトウェア「CUDA」による部分も大きい。

★「AIファクトリー：新しい産業革命」
「今、私たちは非常に重要なことの始まりにいる。私たちは今、AIの時代ではなく、生成AIの時代に到達した。新しい産業革命によって、あらゆる産業に新しい商品（コモディティー）を生産する新しい工場、AIファクトリーが誕生した。AIファクトリーによって、3兆ドル規模のIT産業は、100兆ドル規模の産業に直接貢献できるものを生み出そうとしている。」

●「当社は1年周期で動いている」
（1年周期でAI半導体のロードマップを加速する計画を表明）

フアンCEOは、今年3月に発表した最新のAI半導体Blackwellを紹介した後、これからの製品パイプラインも豊富だとし、AIアクセラレーターを毎年アップグレードする計画を明かした。
2025年にはBlackwell Ultraチップ、2026年にはRubinと呼ばれる次世代プラットフォームを開発中だと発表。
GPUだけでなく、CPU、NVLINK、SWITCHなどを含むデータセンターハードウェアのスタック全体にわたって、毎年新製品を導入する計画だという。

業界における支配的な地位の維持や他社の追随を許さない姿勢を改めて示した。

★「AIの“次の波”は、フィジカルAIだ」

フィジカルAIとは、現実世界で指示を理解し、複雑なタスクを自律的に実行できるモデル。

AIロボット：フィジカルAIを搭載したロボットを構築するには、3台のコンピュータが必要だ（動画資料で紹介）。
1）Nvidia AIスーパーコンピュータ（モデルを訓練するためのもの）
2）Nvidia Jetson Orinおよび次世代Jetson Thorロボット・スーパーコンピュータ（モデルを実行するためのもの）
3）Nvidia Omniverse（ロボットがシミュレートされた世界で学習し、スキルを磨くためのもの）

フアンCEO：つまり、ロボットファクトリーは、エヌビディアのAIで訓練された3つのコンピュータで設計されている。

★AIロボット関連株は？
フアンCEOは、エヌビディアのAIロボット・プラットフォームであるNvidia Isaac ManipulatorやNvidia Omniverseはシーメンス（ドイツ企業）と接続しているとし、シーメンスとのパートナシップは素晴らしいものだと語った。彼ら（エヌビディアのAIロボット）は世界中の工場で働いている。運営にかかわっている企業には、ABB（スイス企業）や $安川電機 (6506.JP)$ 、 $ファナック (6954.JP)$ 、Techman robot（台湾企業）を挙げた。

同時に、「我々のIssacは産業用ロボットのアームやヒューマノイドを含む数千万のAI搭載自律マシンやロボットの研究・開発・生産に使用されている。同時に、今後「すべての工場がロボット化されるだろう」との見方を示した。AIの「次の波」関連の“ド本命銘柄”は、他ならぬエヌビディアであろう。

なお、すでにエヌビディアのAIロボット・プラットフォームを採用している企業は、下記の通り。台湾企業や未上場の企業も多い。

広運機械工程（台）(6125)、フォクスコン（台）(2317)、アークベスト（米）(ARCB)、BYDエレクトロニクス（中）(285)、IDEALworks（BMWグループ傘下で物流における自動運転ソリューションを開発）、Intrinsic（グーグルの親会社アルファベットが立ち上げた産業ロボット用のソフトウェア開発会社）、ソロモンテクノロジー（台）(2359)、Techman robot（台湾企業）、 $テラダイン (TER.US)$ など。

広運機械工程（台）の例を取り上げた際に使用された「倉庫エコシステム」のパワーポイント資料では、関わっている企業には台湾企業に加え、安川電機や $オートデスク (ADSK.US)$があることが示されている。

●自動運転とヒト型ロボット

フアンCEOは、ロボット工学にかかわる製品を大量に生産する分野は、自動運転とヒト型ロボットだと指摘した。自動運転分野においては、「エヌビディアは来年、メルセデスベンツのフリート（車両）で生産を開始し、2026年にはJLR（ジャガーランドローバー・オートモーティブ）のフリートで生産を開始する予定」だと明かした。ヒト型ロボットについても開発中だとし、今後、この分野で多くの進展がみられるだろうとコメントした。

【まとめ】
総合的にみて、次のことが言えそうだ。
1）AIの「次の波」は、フィジカルAIだ。フィジカルAIにおいて、「ド本命銘柄」はやはり他ならぬ $エヌビディア (NVDA.US)$ となろう。

2）フィジカルAIにおいて、AIロボットの導入はすでに進んでいる。それに関わっている企業は台湾企業が非常に多いが、その多くは台湾市場にしか上場していない。それらの企業に投資する代替的な手段として、 $iシェアーズ MSCI 台湾 ETF (EWT.US)$ を活用する方法がある。

3）エヌビディアのパワーポイント資料に記載されているフィジカルAIにかかわっている米国および日本の上場企業には、 $オートデスク (ADSK.US)$ や $テラダイン (TER.US)$ 、 $安川電機 (6506.JP)$などがある。エヌビディアほどではないが、これらの企業もフィジカルAIの導入拡大の恩恵を受けるだろう。