■業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
ゼネテック<4492>の2024年3月期の業績は、売上高7,147百万円(前期比21.9%増)、営業利益629百万円(同494.5%増)、経常利益635百万円(同468.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益414百万円(前期は23百万円の利益)と、大幅な増収増益となった。売上高の増加要因としては、システムソリューション事業での自動車・家電分野案件が堅調に推移したほか、エンジニアリングソリューション事業での大手引合い獲得などが追い風となった。また、営業利益の増加要因としては、システムソリューション事業での見積精度向上や人月単価の適正化のほか、全社共通部門での広告宣伝関連費用の削減が寄与した。2024年3月期は中期経営計画の初年度にあたるが、売上高は前期比で20%以上の増加に加えて、前期は100百万円程度であった営業利益も600百万円超へと急拡大し、好調なスタートが切れたと弊社では見ている。
2. セグメント別の業績動向
(1) システムソリューション事業
システムソリューション事業は、売上高4,496百万円(前期比18.2%増)、セグメント利益974百万円(同39.7%増)となった。デジタル情報家電分野及び自動車分野のソフトウェア開発の受注が堅調に推移し、半導体製造装置向けのハードウェア開発については上期に部品の納期遅延の影響を受けたものの、期初計画を上回る売上高を達成した。また、請負取引における見積精度の向上と工数管理の徹底、派遣・準委任取引における人月単価の適正化などの施策に取り組んだ結果、セグメント利益率についても顕著な向上が見られた。元来、組込みソフトウェア業界は人月単価が低い傾向にあり、超大手企業と直請けで取引をしている同社であっても30年前から大きく変化していない状況であった。長年の取引先である超大手企業に偏重すると、人月単価も上がらず利益率も向上しない側面があったが、同社では上場時より他の大手企業も含め取引先の拡大に注力していた。特に自動車分野では新たに注目されている案件も増えてきており、新規のプロジェクトとして単価の見直しも進めている。既存の案件ではなく新規案件であるからこそ、単価の見直しにも交渉の余地が生まれるのである。また、上場翌年の2021年6月25日には、従前の資本金50百万円に加えて300百万円の組み入れを行っている。これは資本金が300百万円を超える大手企業からの受注を受ける場合、資本金が300百万円以下の企業は下請法の対象となることから、自動車分野などにおける大手企業との取引深耕を妨げていた側面があったためである。このような中長期を見越した戦略も成果として表れていると弊社では見ている。
(2) エンジニアリングソリューション事業
エンジニアリングソリューション事業は、売上高2,197百万円(前期比32.2%増)、セグメント利益435百万円(同9.0%増)となった。主力商品である「Mastercam」は輸入商材であるため、為替動向の影響を受けて利益率は下押し気味となったが、売価への転嫁や為替影響を受けないカスタマイズ等の開発業務に注力した結果、おおむね前期並みの売上高・利益を確保した。「FlexSim」については、自動車、電機、電子部品などの大企業からの強い引き合いがあり、前期比で大幅に売上が伸長しセグメント利益をけん引した。一方、今後の成長事業に位置付けているPLM事業については、体制整備の段階にあるためコストが先行しており、セグメント利益は売上高の増加と比較して軟調に推移した。
(3) GPS事業
GPS事業は、売上高478百万円(前期比17.8%増)、セグメント利益85百万円(同11.1%増)となった。「ココダヨ」サービス全体のインストール数は、2024年3月に累計126万件を突破し、利用ユーザーが順調に増加した。また、NTTドコモが提供するスマートフォンアプリ使い放題サービス「スゴ得コンテンツ」向けサービスの単価アップなどの要因もあり、増収増益となった。
3. 財務状況
2024年3月期の資産合計は前期末比398百万円増の4,520百万円となった。流動資産は同419百万円増の3,245百万円となった。主な要因としては、現金及び預金が92百万円、売掛金が168百万円、原材料、仕掛品の増加等により棚卸資産138百万円の増加があった。固定資産は同20百万円減の1,275百万円となった。主な要因としては、繰延税金資産が32百万円増加した一方で、のれんが79百万円減少した。また、負債合計は同49百万円増の2,306百万円となった。流動負債は同257百万円増の1,759百万円となった。主な要因としては、買掛金が41百万円、未払法人税等が163百万円、賞与引当金が64百万円増加した一方で、短期借入金等が合計で119百万円減少した。固定負債は同207百万円減の547百万円となった。主な要因としては、長期借入金が216百万円減少した一方で、退職給付に係る負債が10百万円増加した。純資産合計は同349百万円増の2,214百万円となった。主な要因としては、利益剰余金が338百万円増加した。自己資本比率は同3.7ポイント上昇の49.0%、財務の健全性は盤石であり短期的な懸念事項はまったくないものと弊社では見ている。
2024年3月期末の現金及び現金同等物の残高は前期末比136百万円増の1,168百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは602百万円の収入となった。これは主に、増加要因として税金等調整前当期純利益629百万円、減価償却費66百万円、のれん償却額79百万円の計上、未払金の増加額75百万円等があった一方で、減少要因として売上債権の増加額151百万円、棚卸資産の増加額138百万円等があったことによるものである。投資活動によるキャッシュ・フローは55百万円の支出であった。これは主に、増加要因として定期預金の払戻による収入46百万円等があったものの、減少要因として有形固定資産の取得による支出23百万円、無形固定資産の取得による支出83百万円等があったことによるものである。財務活動によるキャッシュ・フローは410百万円の支出であった。これは主に、減少要因として短期借入金の減少100百万円、長期借入の返済による支出236百万円、配当金の支払額75百万円等があったことによるものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)