■中長期の成長戦略
萩原電気ホールディングス<7467>は、2022年3月期から2024年3月期を対象とする中期経営計画「Make New Value 2023(「MNV2023」)」を遂行していたが、最終年度の経営目標を1年前倒しで達成していた。今回新たに、2027年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画「Make New Value 2026(MNV2026)」を発表した。以下がその概要である。
1. 新中期経営計画「MNV2026」の位置付け
同社は「MNV2026」を、「企業価値向上を重視したマネジメントスタイルへの変革を目指すとともに、次なる成長ステージへの進化に向けた準備としての計画」と位置付けている。「MNV2023」が、「先進エレクトロニクスで未来を創造するソリューションデザインカンパニー」を目指したのに対して、「MNV2026」は「先進エレクトロニクスで人と社会とテクノロジーをつなぐエンジニアリングソリューションパートナー」を目指している。具体的には、外部環境変化を考慮した成長ステージに向けた構造変革・事業基盤を確立することを目的としているが、別の視点からは、「MNV2026」が終了した後に来る「次なる成長ステージ=MNV Next」に向けた基盤づくりとも言える。
2. 「MNV2026」の基本骨子
同社は、「MNV2026」の重点方針として「企業価値向上~稼ぐ力の向上~」を掲げている。さらにこれを達成するために、以下のような3つの構造改革と6つの重点戦略を推進する計画だ。
(1) 3つの構造改革
事業構造:ビジネスモデル変革による提供価値の向上
資本生産性:資本生産性を意識したマネジメント改革
人的資本:人的資本活用による従業員パワーの最大化
(2) 6つの重点戦略:変革・実行力・効率化による成長
デバイス事業戦略
ソリューション事業戦略
ビジネスイノベーション戦略
経営管理高度化戦略
人材戦略
ESG推進
3. 3つの構造改革
(1) ビジネスモデル変革による提供価値の向上
a) 価値提供:ソリューション志向(品揃え/提案内容/提供形態等)
既存事業におけるソリューション志向の考え方の下、付加価値となる付帯開発、サービス事業等を拡大する。
b) 収益意識:収益性を狙ったビジネスモデルの構築
データプラットフォーム型事業などの新たなビジネスモデルづくりを進める。またデバイス応用技術、IoT構築技術などグループ内の知見を活用する。
c) 共創促進:ビジネスイノベーションの活性化
グループ内シナジー、他社ビジネスとのコラボレーションによる付加価値イノベーション(創発)を促進する。共創イノベーション活動拠点(2023年12月開設)の利用を活性化させる。
上記のような施策を実行することで、2027年3月期にはソリューション型事業※の利益構成を10%向上させる計画だ。
※従来のセグメントであるソリューション事業の利益に加え、デバイス事業におけるソリューション型事業の利益を合算した数値(売上総利益ベース)。
(2) 資本生産性を意識したマネジメント改革
a) 資本コスト:資本コストの意識・導入
株主資本コスト7~8%を踏まえた投下資本に対する利益に着目した社内マネジメントの仕組みを構築する。
b) ポートフォリオ:適切な事業ポートフォリオ管理
ビジネスモデルに着目した主要な事業領域の稼ぐ力をモニタリングし、事業ポートフォリオに対する戦略的アプローチを可能にする仕組みの構築と運用を開始する。
c) 環境構築:経営管理高度化の環境構築の加速
ITシステムの順次刷新、タイムリーな資本生産性を意識したマネジメントを実現する。
(3) 人的資本活用による従業員パワーの最大化
ソリューション志向によるビジネスモデル変革の推進を担う「創造と挑戦する人材」の育成と人材育成の基盤強化を加速させる。
具体的には、従業員のパフォーマンスを最大化し、経営目標と達成に向けた従業員の活動をシンクロさせる。また、一人ひとりが会社目標とスケーラブルに連動した目標管理を設定する。これらを実行することで、次なる成長ステージに向け全従業員の経営参加意識を醸成し、全従業員で企業価値を向上させる思想での企業運営を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)