不動産賃貸マーケットに対してテクノロジーを活用したサービスを提供する株式会社スマサポ<9342>の代表取締役社長CEO小田慎三氏と、東京大学大学院経済学研究科教授を務め当社の研究アドバイザーでもある柳川 範之氏が、不動産業界における課題とテクノロジー活用の未来について対談している。数回に渡り対談の内容を記事にまとめて公開する。
小田:
少子高齢化やグローバル化の進展など様々な社会情勢が取り巻く中、柳川教授が感じる不動産業の課題について、どのような点が挙げられますか?
柳川教授:
大都市では不動産価格が上昇傾向にある状況と、一方、地方都市では首都圏への人口流出が継続し過疎化が進んでいる状況。日本の不動産業全体の課題としては、地方都市の人口維持や持続的な発展をどう確保していくかのエリアマネジメントが1つの課題だと感じます。
また、都市部での不動産価格が上がっていく状況で、これをどのように産業全体の強みに変えて経済成長を強化していくかが中長期的な課題としてあります。
小田:
今後、不動産テックの可能性をどのように感じていますか?
柳川教授:
先ほどの中長期的な課題について、具体的にどのように強にみに繋げていくかというと、テクノロジー活用になると考えております。テクノロジー活用における一般的な課題にもなりますが、顧客ニーズを的確に把握し、反映させ、それを提供に実行させていくことが求められます。
そして、賃貸不動産に対する入居者ニーズは、今後一層多様化するものと考えております。他の産業に比べると、顧客ニーズやより適切なサービスなどを比較的考えることが少なかったと思います。しかしニーズは汲み取った方が良いし、そうしたニーズを着実に取り込んで提供していくことが重要となってくると感じます。また、不動産業界においてもデジタルデータの活用の重要性が認識されている中で、データをさらに高度化していくことが必要になってくると感じております。
ただ、不動産管理業の顧客対応は個別性が高いので、すべてAIで対応というには、まずはデータの集積が必要で重要だと考えております。
◆代表取締役社長 CEO小田慎三氏のコメント
テクノロジーの活用は、業務の効率化や消費者サービスの拡大と相まって、不動産管理業の生産性を向上させ、新たなビジネスの創出にも繋がり得るものとして、ますます期待が強まっていると感じます。
柳川教授の感じているようなテクノロジー活用の課題に対して、入居者アプリ「totono」を導入することでデータを集積し、AI 等の活用により不動産管理会社と入居者のコミュニケーションを円滑にしていく当社の事業は大きな可能性を秘めていると感じました。
■柳川範之氏プロフィール
東京大学大学院経済学研究科教授。東京大学不動産イノベーション研究センター長。中学卒業後、父親の海外勤務の都合でブラジルへ。ブラジルでは高校にいかず独学生活を送る。大検を受けたのち慶應義塾大学経済学部通信教育課程入学。同課程卒業後、1993 年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。慶應大学専任講師、東京大学助教授等を経て、2011年から現職。
〜次回、【スマサポ:不動産テックの挑戦vol.2】柳川教授対談_本当に入居者対応はAI化できるのか?未来の入居者対応戦略に続く〜