従業員のIT体験の向上を掲げる株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)のエンプロイーエクスペリエンスグループでは、Q(Quality)・C(Cost)・D(Delivery)を意識し、徹底した数値分析や業務改善に取り組んでいます。そのQ・C・Dを陰ながら支援しているIT資産のライフサイクルマネジメント(以下、LCMサービス)とはどのようなサービスなのでしょうか? 今回は、DeNA IT戦略部 グループマネジャーである瀬戸さまと東京センチュリー(以下、TC)柿崎さんの対談をお届けいたします。
株式会社ディー・エヌ・エー グループマネジャー瀬戸 太輔さま(左)と東京センチュリー 柿崎 央登さん(右)
従業員に、より良いIT体験を届けるためのQ・C・D
――まずは、DeNAさまに導入いただいているLCMサービスについて教えてください。
柿崎さん(以下、敬称略):TCが提供する LCMサービスは、お客さまにリースをするIT資産を「ゆりかご(入口)」から「墓場(出口)」まで、一気通貫で責任を持って管理するサービスです。
入口としては新品のパソコンを開梱し、キッティング(※1)を済ませオフィスに届ける。出口としてはリース満了後のパソコンを回収しデータ消去を行う。リース期間中に、交換や退職などの理由で使用しなくなったパソコンがあれば、それも回収し新品同様にリファービッシュ(※2)した上で再度お客さまにお貸し出しする、といったサービス内容です。
(※1)キッティング:デバイスの各種設定や必要なソフトウエアのインストールなどを行うこと
(※2)リファービッシュ:初期不良などで返品された電化製品や情報機器、あるいは一度使用された製品の修理・再生を行うこと
――DeNAさまはLCMサービスにどのようなメリットを感じていますか?
瀬戸さま:IT戦略部では従業員のIT体験の向上を重視しています。社用パソコンは基本的に「壊れるまで使う」ことが前提ではありますが、例えばスペック不足で業務に支障を来すといった場合の交換も柔軟に認めており、希望者はWindowsとMacを含めた複数のラインアップから自由に選ぶことができます。セットアップが必要なパソコンは月平均で150台ほど。これだけの台数を自社でキッティングするとなれば、設定作業から梱包資材の処分まで相当な負担が発生しますので、一手にお任せできることは大きなメリットです。
瀬戸さま「キッティングとデータ消去にかかる費用はリース費用に全て含まれているため、
パソコン1台にかかるコストを平準化できる点も魅力に感じています」
――瀬戸さまの部署では「従業員のIT体験の向上」に注力されているとのことですが、詳しくお聞かせください。
瀬戸さま:私が所属するエンプロイーエクスペリエンスグループは、その名の通り、より良い従業員体験を届けること、従業員の方々が快適に働けるIT環境を追求し続けることがミッションです。例えば社内のヘルプデスク業務では、「何に困っているか分からなくてもまずは当グループに問い合わせしてほしい」という姿勢でいつも対応しています。
IT本部の全体的な風土として、Q(品質)・C(コスト)・D(納期)に対する意識が特に強く根付いているということが言えます。パソコンの支給においても、従業員が満足できるスペックの機種をいちはやく手元に届けるため、「在庫は切らしたくないけれど在庫を多く抱えることでコストが増えても困る、今ある在庫を効率的に回転させたい」というところが本音です。柿崎さんにはうまくバランスを取っていただいていると感謝しています。
柿崎:ありがとうございます。月に1度のミーティングやSlackでのやり取りのおかげで、TCの子会社でキッティング作業を委託しているEPC Japan(以下、EPC)も含めた情報共有がとてもスムーズだと実感しています。これからも迅速なコミュニケーションを心がけたいと思います。
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瀬戸さま「Q・C・Dをすごく大切にしています。できる限り最新のパソコンをより安く、
より早く手元に届けることを意識し、筋肉質な在庫管理を目指しています」
個人情報を持たずに届けるキッティングの新しいスキーム
――DeNAさまに提供するLCMサービスに付加する新しい取り組みとして、今年5月からリースパソコンの個人宅配送が始まりました。経緯について教えてください。
瀬戸さま:コロナ禍によって出社に制限がかかり、在宅勤務が導入されたことが背景にあります。従業員が自宅から社内ネットワークに接続できる仕組みを新たに構築したのですが、肝心のパソコンは本社から従業員の自宅に送らなければいけないという物理的な工程が残るため、座間のEPCでキッティングしたパソコンを直接従業員の自宅に送ることはできないかと柿崎さんに相談したことが始まりです。
柿崎:パソコンを直接届けるに当たり、DeNAさまの従業員の方々の氏名や住所などの個人情報の取り扱いが一番のハードルでしたね。配送会社やEPCとも議論した結果、最終的には、当社が個人情報を保有することなく送付できるスキームを構築することができました。
――個人宅配送のスキームを確立するまでには、どのような苦労があったのでしょうか?
柿崎:TCとしても前例のないサービスであったため、個人情報に関する制約や収益面、お届けするまでのリードタイムなどといった複数の条件の中から最適解となるスキームを導き出すことに苦労したのを覚えています。また、配送会社さまの協力を取り付けるに当たり、メリットを感じてもらうためにはどうしたら良いか、試行錯誤を続けました。
瀬戸さま:柿崎さんの尽力のたまものですね。このスキームが確立したことで、パソコン支給にかかる日数を約半分に短縮できる見込みです。昨年、座間のEPCでキッティングし、渋谷のDeNA本社を経由し従業員の自宅に配送したリースパソコンは300台以上です。在宅勤務は今後も継続されますし、弊社では地方採用にも力を入れていますので、今後は、その効果を具体的に検証していきたいと考えています。
柿崎「瀬戸さまからご相談をいただいてから準備に1年ほどを費やしましたが、
そのかいあってLCMサービスの新たな可能性が広がりました」
1分でも1秒でも早く、お客さまに寄り添い続けながらサーキュラーエコノミーを実現する
――TCのキッティング技術をどう感じていますか?
瀬戸さま:弊社が求めるキッティングの水準はWindowsとMacで、またバージョンによっても手順や内容に若干の違いがあります。それぞれ柔軟に対応いただいていますので、いつも安心してお任せしています。
柿崎:EPCにはDeNAさまのネットワークを引き込んでおりますので、DeNAさまのご要望に応じたキッティング作業を実施することができていると思います。また、経験豊富なスタッフがそろっていますので、大げさかもしれませんがおおむね「できないことはない」といった感覚で、ご期待に応えていきたいです。
瀬戸さま:直近だとWindows11への切り替えが動き出していますね。忌憚なく議論を交わし、お互いにとってベストなリースの形を模索していきましょう。
――最後にお聞きします。これからのTCに期待することは何ですか?
瀬戸さま
Q・C・Dの向上のため、従業員の希望のパソコンを手元に届けるまでのターンアラウンドタイムや問い合わせが完了するまでの時間を測定し原因と結果を追求しながら、1分1秒でも時間を短縮するよう従業員体験を数値で追って改善しています。
そうした中で新たに見えてきた課題を、いつもカジュアルに柿崎さんに相談することができています。「こういう課題感があって、こういうことをやってみたいのですが、こういうことって考えられそうですか?」と。相談しやすいのがうれしいですよね。これからも変わることなく寄り添い続けてほしいです。
Q・C・DにまつわるDeNAさまの負担を軽減し、IT資産の有効活用にもつながるLCMサービスを通じて、お客さまの事業展開に少しでも貢献することができれば、こんなにうれしいことはありません。
リースは、サーキュラーエコノミーの観点からも非常に社会貢献度の高い事業です。パソコンに限らず対象を広げながらサービスをバリューアップすることで、いつの日か、サステナブルな社会の実現を目指して、共に歩みを進められるような連携のご提案もさせていただきたいと思います。
柿崎
LCMサービス立ち上げ当初からの担当 資産営業部 マネージャー 高橋のコメント
TCのLCM事業は、2009年の合併を機にスタートしました。DeNAさまは同事業の最初のお客さまであり、以来10年以上にわたってお取引いただいています。キッティング済みのマスターパソコンから複数台に設定をコピーしていくクローニングの手法や、お客さまのオフィスに直接伺うオンサイトではなくインターネット上で完結させるオンラインキッティングにより、スピード感ある対応が可能であることを評価いただいたと記憶しています。
リース満了後のデータ消去までグループ内で責任を持って対応できることも、TCならではの強みです。今回DeNAさまに導入いただいた個人宅配送のように、お客さまの要望に柔軟に応えられるオーダーメードのサービスを模索しながら、これからもIT資産の安心・安全で地球に優しい管理に取り組んでまいります。
高橋
瀬戸 太輔(せと・だいすけ)さま
株式会社ディー・エヌ・エー IT本部IT戦略部
エンプロイーエクスペリエンスグループ グループマネジャー
2019年、株式会社ディー・エヌ・エー入社。2020年より現部署所属。従業員のIT環境の整備と向上をミッションに、月間500件に及ぶ社内ヘルプデスク業務や、月間100台超のリースパソコンの選定・管理業務などに携わる。
柿崎 央登(かきざき・ひろと)
東京センチュリー株式会社 情報機器第二部
2021年入社。情報機器第二部にてIT・モビリティ関連業界を中心に、リースをはじめとする各種ファイナンス手法の提案、出資先の管理やパートナーとの共同事業開発に携わる。2022年よりディー・エヌ・エー社を担当。
※記事の内容、肩書きは掲載当時のものです。