エヌ・ピー・シー<6255>は、太陽電池製造装置メーカーで、各種FA装置や真空断熱パネル封止装置、パネル解体装置や植物工場等の環境関連サービスも展開している。
太陽電池製造装置が主力となるが、同社は汎用的な結晶系パネルではなく薄膜系パネルや特殊用途の結晶系パネル(建材一体型、人工衛星用等)をターゲットとしている。薄膜系パネルや特殊用途の結晶系パネルの製造にはオーダーメイドのハイエンドな製造装置が必要で、装置メーカーとして明確な競合先は存在しない。対応できる技術領域が広く、従来からオーダーメイドの装置製造を得意としている。生産能力としても広大な松山工場でラインを組めるため、オーダーメイドのラインを一貫して製造することが可能で、米国を中心として海外実績が豊富で各国の安全規格や海外製コントローラーへの対応も可能となっている。顧客となる企業は主に米国や日本の太陽電池メーカーで、その中でも主要顧客は米国のFirst Solar社(NASDAQ上場)で、同社とは20年近い取引実績がある。また、太陽電池業界以外の業界に提供するFA装置を電子部品関連企業や自動車関連企業へ、太陽光パネル解体装置を産業廃棄物業者へ提供している。
24年8月期の売上高は前期比15.8%増の10,797百万円、営業利益は同2.5倍の2,436百万円で着地した。一部案件が現地作業の検収タイミングの関係で2025年8月期に期ずれとなったが、First Solar社に対して工場増設向け装置、新工場向け装置、開発用装置を予定どおり売り上げた。また、First Solar社の工場が高稼働率を維持し、装置台数も増加していることから部品販売も好調。国内太陽電池メーカー向けペロブスカイト用パイロットライン、電子部品業界の国内主要顧客や自動車業界の日系企業の米国工場に対するFA装置等も想定通り好調に推移した。
今期25年8月期の売上高は前期比1.2%増の10,925百万円、営業利益は同15.0%減の2,069百万円を見込んでいる。業績は下期偏重となる見込みで、First Solar社のルイジアナ新工場向け装置や国内電子部品業界の主要顧客向け装置などの受注残(約80億円)を消化しつつ、今期受注する主な案件(First Solar社向けの追加装置・改造、太陽光パネル解体装置、真空関連装置など)を約30億円計上していく。今期は減益見通しとなっているが、前期24年8月期において、材料費の値上がりを見越した金額で受注していた案件において購買努⼒等で想定より材料費を抑えられたほか、現地作業の効率化により工数や経費を想定より削減できたことで会社想定を大きく上回って好調に推移したことが背景にある。今期は前期の反動のための減益となるほか、売上総利益率29.3%と高⽔準な利益率を維持できる想定から、特にネガティブ要素は限定的である。
同社は2027年8月期を最終年度とする中期経営計画を策定しており、2026年8月期に売上高120億円・営業利益22億円、2027年3月期に売上高130億円・営業利益26億円を掲げている。太陽電池製造装置は、First Solar社の業績が好調で今後も生産能力拡大のための装置需要が見込まれ、First Solar社の高い工場稼働率や装置台数増加に伴い、装置部品の売上は増加の見込みとなる。また、同社はペロブスカイトなどの次世代型太陽電池も対象としているが、これを利用した太陽電池は塗布技術により製造できるため、製造コストが低く、柔軟かつ軽量な太陽電池の製造が可能となる。これまで結晶系パネルを設置できなかった場所へも設置できるため、再生可能エネルギーへの移行において重要な技術とみなされており、量産化に向けた研究が進んでいる。さらに、太陽光パネル解体装置では同社の技術は市場で高く評価されており、環境意識の高まりやパネルリサイクルの法制度化の動きを背景に、国内及び海外市場での需要増加が見込まれる。FA装置も継続取引ができる大手安定顧客の獲得や、様々な製品の開発に使用される真空関連装置の営業の強化を図っており、それぞれがしっかりと業績に貢献していく見込みとなっている。2024年8月期が想定以上の利益となったため今期の営業利益は減少する見通しだが、中長期的な成長余地が十分あり、中期経営計画達成に向けて今後の動向には注目しておきたい。