発表のポイント
- 光格子時計の小型化は、高精度な時間計測技術の広範な応用を可能にし、科学技術の進展だけでなく社会インフラや新たな技術革新にも大きな影響を与える。
- 本研究開発では、従来の可搬型光格子時計の約1/4の容量250リットルの装置開発に世界で初めて成功した。
- 今後、さらなる小型化・堅牢(けんろう)化を図り、光格子時計の社会基盤への実装を進める。
JST 未来社会創造事業において、東京大学 大学院工学系研究科の香取 秀俊 教授(理化学研究所 光量子工学研究センター チームリーダー/開拓研究本部 主任研究員兼任)は、装置容量250リットルの小型・堅牢な超高精度光格子時計注1)の開発に世界で初めて成功しました。
光格子時計は原子時計の一種で、現在の「秒」の定義の基準となっているセシウム原子時計に対して100倍以上の精度を実現します。その精度はおよそ100億年に1秒の誤差に相当し、非常に高い精度であることから、光格子時計は次世代の「秒の定義」の有力な候補として注目されています。今回の開発では、その装置体積を従来の920リットルから250リットルへと約1/4に小型化することに成功しました。これにより、時間標準としての利用にとどまらず、相対論的センシング注2)など、さまざまな研究現場や応用分野での利用が期待されます。
本研究は、理化学研究所 開拓研究本部/光量子工学研究センター兼任の高本 将男 専任研究員、株式会社島津製作所、日本電子株式会社と共同で行いました。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
未来社会創造事業 大規模プロジェクト型
未来社会創造事業 大規模プロジェクト型
技術テーマ | : | 「通信・タイムビジネスの市場獲得等につながる超高精度時間計測」 (運営統括:大石 善啓 株式会社三菱総合研究所 顧問) |
研究開発課題名 | : | 「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」 (JPMJMI18A1) |
研究開発代表者 | : | 香取秀俊 東京大学 大学院工学系研究科 教授 |
研究期間 | : | 平成30年11月~令和9年3月 |
上記研究課題では、「光格子時計」をネットワーク展開・社会実装することで、次世代の超高精度・時空間情報の共通プラットフォームを構築します。GNSS(Global Navigation Satellite System)に用いられる原子時計の精度を1000倍以上改善する光格子時計のリンクにより、超高精度クラウド・クロック環境を実現し、通信の高速・大容量化や位置情報サービスの高度化を目指すことを目的としています。