■要約
ベルシステム24ホールディングス<6183>は東京証券取引所(以下、東証)プライム市場に上場する国内コンタクトセンター大手で、傘下に子会社6社を持ち、CRM(Customer Relationship Management:顧客管理)を主たる事業として全国で事業展開している。2024年2月末現在、全国37拠点、約3万5千人の従業員、国内最大規模のCRMクラウド基盤(複数の拠点を1つの仮想コールセンターに統合。先端のクラウドテクノロジーを利用し、高信頼性とコストメリットを両立させた、クラウド型のコールセンターシステム)を擁し、伊藤忠商事<8001>、TOPPANホールディングス<7911>との資本業務提携を最大限に活用して、「中期経営計画2025」の推進により、企業価値のさらなる向上を目指している。
1. 2025年2月期第2四半期の業績概要
2025年2月期第2四半期(中間期)の連結業績は、売上収益72,040百万円(前年同期比6.1%減)、営業利益4,810百万円(同26.3%減)、税引前利益4,665百万円(同27.4%減)、親会社の所有者に帰属する中間利益3,024百万円(同32.8%減)と、減収減益決算となった。2025年2月期通期の業績予想に対する進捗率は、売上収益47.1%、営業利益38.5%、税引前利益38.2%、親会社の所有者に帰属する中間利益37.8%と、想定以上に厳しい決算であった。売上収益のうち、基礎業務は新規案件が増加したものの大口案件が減少したことが影響し、期待を下回って微増にとどまった。加えて、コロナ等国策関連業務(コロナ関連業務に加えて物価高対策等の経済対策に関連した業務が対象)が、ワクチン関連業務の減少に伴い大幅に減少したことが響いたが、これはおおむね想定どおりであった。営業利益以下の各段階利益も、同様の理由から減益となった。親会社の所有者に帰属する中間利益も、持分法による投資損益の減少等はあったが、営業利益減少の影響から減益にとどまった。この結果、営業利益率は6.7%(前年同期比1.8ポイント低下)となった。一方、財務面においては、自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は38.8%(前期比0.8ポイント上昇)であった。2024年3月期東証プライム市場サービス業平均の営業利益率5.3%、自己資本比率5.9%を大きく上回り、引き続き同社の収益性や安全性は極めて高いと評価できる。減益決算ながら、1株当たりの中間配当金は30円と前期と同水準を維持し、株主重視の経営姿勢を示している。
2. 2025年2月期の業績見通し
2025年2月期の連結業績は、期初予想を維持し、売上収益153,000百万円(前期比2.9%増)、営業利益12,500百万円(同8.9%増)、税引前利益12,200百万円(同8.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益8,000百万円(同6.0%増)の増収増益を予想する。売上収益は人材不足等によるアウトソース需要の拡大やDXソリューション等の新サービスにより基礎業務が大幅に増加する一方、コロナ等国策関連業務ではコロナ関連の大規模業務はほぼ終了が見込まれることで大幅減少を予想する。営業利益は、基礎業務の増収に加え連結子会社の業績伸長やコスト削減施策もあって売上総利益の増加を見込む等により、増益を予想する。親会社の所有者に帰属する当期利益も、営業利益の増加に伴い増益を見込んでいる。中間期までの業績進捗率は低いが、下期には子会社における先行投資が回収ステージに入ること、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)に伴い拡大した体制整備の成果が現れること、新たなM&A等を計画していること等から、業績予想の達成を目指す計画である。さらに、2024年10月に実施された総選挙も、下期の業績に寄与する見通しだ。1株当たりの年間配当予想は60円と前期と同水準を維持し、配当性向は55.0%(同3.5ポイント低下)になる見込みで、2024年3月期東証プライム市場サービス業平均の39.0%を大きく上回り、株主還元に前向きであると評価できる。今後も連結配当性向50%を基本方針として、前期を下回らない配当の実現を目指す方針だ。
3. 中期経営計画
「中期経営計画2025」(2024年2月期~2026年2月期)では、最終年度の売上収益1,800億円、営業利益165億円(営業利益率9.2%)、税引後利益110億円、ROE14.4%、配当性向50%を掲げている。売上収益は3年間の平均年率4.9%増、営業利益は同3.4%増、税引後利益は同5.6%増を計画する。この定量目標を実現するための重点施策として、1) 人材:総力4万人の最大活躍、2) 型化:データ活用の高度化、3) 共創:NEW BPO※1領域開拓、の3つを掲げる。中期経営計画の初年度業績は計画を下回る厳しいスタートとなり、2年目以降の巻き返しが期待される。一方、新たな取り組みとして、生成AI(学習データをもとに、テキストや画像など新たなデータを創出する人工知能)及び自治体向けDXサービスの提供などにおいて着実に成果を出している。日本経済がコロナ禍の落ち込みから回復に向かう中、企業の人手不足感が強まっており、自社で電話対応が十分にできない企業も多数あり、同社の従来型の電話対応業務は今後5~10年程度は伸びると予想される。その間に、次の成長原動力となる生成AIビジネスや新たなBPO領域の育成・拡大を図ることが不可欠であり、取り組みの進展に注目したい。また、人的資本戦略やサステナビリティ(持続可能性)にも積極的に取り組んでおり、ESG※2投資拡大の潮流に沿った動きであると評価される。
※1 BPO:Business Process Outsourcing。業務プロセスを外部委託すること。
※2 ESG:19ページ参照。
■Key Points
・全国に事業展開するコンタクトセンター大手で、伊藤忠商事、TOPPANホールディングスとの資本業務提携を最大限に活用
・2025年2月期第2四半期は、コロナ等国策関連業務の減少が響き減収減益決算。営業利益率、自己資本比率は東証プライム市場サービス業平均を大きく上回り、収益性・安全性は極めて高い。前期と同水準の中間配当を実施し、株主還元にも十分に配慮
・2025年2月期は、基礎業務や連結子会社の貢献及びM&A等により計画達成を目指す。前期並みの配当を予定し連結配当性向は55.0%で、東証プライム市場サービス業平均を大きく上回る水準
・「中期経営計画2025」は、売上収益は平均年率4.9%増、営業利益は同3.4%増を目指す。従来型の電話対応業務は今後5~10年程度は伸びるものの、その間に新たな原動力となる業務の育成・拡大を図る。既に生成AI導入に向けた取り組みや自治体向けDXサービスの提供などに成果
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)