清水建設(株)は、東亜建設工業(株)とのJVにより施工中の中央自動車道 新小仏トンネル※(東京都八王子市〜神奈川県相模原市)の坑内において、狭隘かつ薄暗い作業空間での安全確保、発破騒音が周辺に及ぼす環境負荷の低減に取り組んでいます。
山岳トンネルの場合、他の工種に増して安全対策と環境負荷の低減が課題になります。その理由は、狭隘な作業空間ながら多数の重機が走行すること、かつ薄暗い空間は視認性が低いこと、発破に起因する振動・騒音が郊外に伝搬することなどが挙げられます。新小仏トンネル作業所では、種々の創意工夫により、このような課題に対応しています。
安全対策のポイントは、薄暗さを利用して照明機器を積極的に活用するとともに、機器の移設が不要な対策としたことです。まず、路面にはプロジェクションマッピングで「止まれ」などの交通標識を表示、ライン照明の赤線で一時停止ライン、緑線で安全通路の範囲を表示しています。照明による路面表示は、重機の運転手が確実に認識できることはもちろん、車両が表示上を通過しても汚損・摩耗しないことがメリットです。いずれの照明機器も二次覆工コンクリートの打設に使用する全断面スライドフォーム(以下、セントル)、防水シート張り台車、あるいは路面に必ず立てる交通標識看板に設置しているので、照明機器単体の移設作業は生じません。
また、坑内の車両通路の幅員・高さを狭めるセントル、防水シート張り台車については、その内法に沿って赤色のチューブライトを設置し点滅表示。多数の作業員が使用するセントルの昇降階段については、下部階段と上部階段の手摺にそれぞれ桃色、白色のチューブライトを設置しています。照明機器を利用したいずれの安全対策も、重機運転手、作業員から注意喚起につながるという評価を得ています。
一方、発破作業に伴う低周波騒音対策では、王子ホールディングス(株)と共同開発した紙製の低周波音減衰装置「KAMIWAZA(吸音シリンダー)」が威力を発揮しています。設置した吸音シリンダーは、直径406mm、長さ3,000mm、呑み込み口は直径76mm、長さ350mm、重量18kg、吸音ターゲットは20Hzの低周波音で、設置本数は250本です。
吸音効果の実測値によると、建具のがたつきを発生させる5〜20Hzの低周波音に対して平均で1.5dB、20Hz付近で10dB、重厚な防音扉でも対応が難しい8Hz付近で3dBの減となりました。騒音のエネルギー量換算では、もともとの低周波音に対して1.5dB低減は1/1.4に、10dB低減は1/10に、3dB低減は1/2に減少したことになります。
当社は引き続き、山岳トンネルに限らず、安全対策・環境保全に寄与する技術開発を推進する考えです。