2024年12月13日
株式会社NTTデータグループ
株式会社NTTデータグループ(以下、NTTデータグループ)は、システム開発においてお客さまより提示される提案依頼書(以下、RFP注1)の記載内容に対するリスク抽出業務に生成AIの適用を2024年10月から開始し、対応に係る時間を約6割短縮できることを確認しました。この実績を踏まえ、2024年12月より日本国内のお客さま向けの案件のリスク抽出業務で生成AIを本格運用します。
本取り組みは、RFPのドキュメントを読み込ませると、本来RFPに記載されているべき要件や必要事項の網羅性や充足性という観点で記載内容をチェックし、お客さまへの提案に、盛り込むべき点を示唆する等の品質保証に特化したものです。従来は人手で実施していたチェック業務に生成AIを適用することで、業務効率化を達成しました。今後はチェックサービスの適用対象ドキュメントの拡大を検討し、お客さまへ提供するシステムのサービス品質を継続的に向上していきます。
背景
NTTデータグループでは、システム開発プロジェクトの成功および問題化抑止を目的に、プロジェクトマネジメントやシステム基盤・方式技術など各分野の有識者による提案書や成果物に対する検討不備や潜在リスクのチェックとともに対策案を提示する活動を約20年前より行ってきました。
このような第三者の有識者によるチェックサービスは、有識者の知見やノウハウに基づいており、知見の継承やより効率的なチェック実施への課題がありました。そこで、NTTデータグループでは、生成AIを活用したチェックの実施や補助の検証を2023年度より実施していました。具体的には、システム開発における提案内容の品質向上を目的としたドキュメントチェックへの生成AI活用に関する技術検証です。この技術検証では、国内のデータサイエンス・生成AIの教育研究をけん引してきた国立大学法人 滋賀大学の課題解決プロセスに関する豊富な知見を活用することで、品質保証に特化した生成AIとして有識者ノウハウを盛り込んだチェックを実現しました。
また、NTTデータグループでは、生成AI活用コンセプト「SmartAgent」に基づき、新たな生成AIサービスの開発やシステム開発への適用を進めております。「SmartAgent」は、利用者の指示に応じて有識者のノウハウを持つAIエージェントが自律的に対象業務のタスクを抽出・整理・実行することで、利用者とAIが協力して業務を遂行していくものです。本取り組みはそのうちの品質保証に特化した生成AIを活用した取り組みです。
概要
今回の発表は、NTTデータグループが長年実施してきたシステム開発の知見やノウハウを生成AIに取り込み、RFPのリスクの抽出や対策の提言を行う第三者有識者によるチェックに品質保証に特化した生成AIを活用する取り組みです。RFPには、お客さまがシステムを導入することで解決したいことは何か、どのようにシステムを使いたいか、システムの特性(想定する利用者数、故障した場合の対応方針など)をどう考えるか、といった内容が記載されます。お客さまは、当社注2に対して、その内容を確実に伝える必要がありますが、意図せず記述内容が漏れてしまうことや、あいまいな表現になってしまうこともあります。それにより、お客さまと当社ですれ違いや認識違いが起こり、本来望んでいる要件のシステムとならないリスクがあります。RFPに対するチェックを行い、記載内容の記述粒度や充足性を定量的に評価し、確実にお客さまの要件を捉えることで、お客さま自身が求めているシステムの提供や、お客さまが気付かない要件の示唆を得ることが可能となります。さらに、さまざまなドキュメントがある中で、システム開発の起点となるシステム開発要件が記載されるRFPのチェックに関する取り組みは、お客さまが真に望んでいる要件に対する当社からの提案内容の品質向上にも貢献します。
RFPのチェックに生成AIを適用することによるメリットは以下の3点が挙げられます。
- 提案品質の向上:20年間続けてきたチェックのノウハウを生成AIに蓄積し学習させ、活用することで、常にブラッシュアップされた観点でのチェック実施が可能となり、お客さまへの提案品質を向上させます。
- 属人化の解消:生成AIに有識者の知識やノウハウを取り込み継承することで、特定の有識者に依存しない一定品質のチェックが実施できます。
- 期間短縮:人による手動で行っていたチェック作業を生成AIが実施することで、チェックにかける期間を短縮します。それにより、当社の国内案件で常時1,000以上活動しているシステム開発プロジェクトに対して、より多くチェックが実施できるようになります。
今後について
今後はお客さまより提示されるRFPだけでなく、当社から提示する提案書や要件定義・設計資料、見積書など、生成AIを適用したチェックの対象範囲拡大を検討します。さらに、チェック実施結果のフィードバックをもとにチューニングを繰り返した生成AIを活用することで、人手でのチェック作業の削減・チェック精度の向上を目指し、お客さまへの提案品質向上に寄与します。
注釈
- 注1Request for Proposal(提案依頼書)の略。情報システムの構築や機器更改、業務委託等を行うにあたり、発注者が求める仕様や機能を明示した資料。発注先候補の事業者に具体的な提案を依頼することを目的としています。
- 注2本文中に記載されている「当社」とは、NTTデータグループで国内事業を所掌する株式会社NTTデータを示します。
- 「SmartAgent」は日本国内における株式会社NTTデータグループの商標です。
- その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部
品質保証部
PMO担当
大谷、和田、瀬崎、上原
グローバルイノベーション本部
Generative AI推進室
金原、森野
E-mail:gai-office@hml.nttdata.co.jp