■飛島ホールディングス<256A>の今後の見通し
(1) 建設事業
a) 「短期」視点
建設事業の深耕を進める。今後は、高齢化が進み経済そのものも循環型へ移行すると同社では考えており、これに伴い新築需要よりもリニューアル需要が増加すると見ている。そのため、短期的にはリニューアルの比率を高めていく方針だ。
一方で、デジタル化技術を活用した業務見直しによる施工プロセスの省力化を推進する。さらに、この省力化で得られた技術やノウハウを、将来的にはイノベーション事業へと昇華させていく計画だ。この実例として、現在イノベーション事業において(株)ネクストフィールド(DXサポートサービスを担う日本電信電話<9432>(NTT)との合弁企業)が事業展開しており、そのサービスを同社グループの建設事業へ導入していく。一方で、これらの導入ノウハウをネクストフィールドへフィードバックし、さらなるサービス向上を図る。
b) バトンゾーン
循環型社会への移行を見据えてリニューアル市場への対応を強化する。長期的に目指している「インフラアンチエイジング事業」へ向けての「中間時期」との位置付けである。
・技術の高度化による競合との差別化を推進する
・リニューアル工事におけるコスト競争力を強化する
(2) グロース事業
a) 「短期」視点
既存の事業領域から、グロース事業の領域を拡充していく。具体的には、「既存事業領域」を、新規投資を行うことで「戦略領域」へ拡大していく。
b) バトンゾーン
さらにバトンゾーンにおいては、インフラアンチエイジング技術を有する企業※との連携(技術開発・人財育成・官民連携など)を推進し、新領域や技術開発を拡充する。
※ 建設関連においては、長寿命化技術やノウハウを保有する企業。環境領域においては、環境配慮技術・ノウハウ・商品などを保有する企業。防災・減災においては、防災技術・ノウハウ、また防災商品などを保有する企業。
イノベーション事業は建設リスキリング事業へ
(3) イノベーション事業
a) 「短期」視点
建設DXサービス事業を、既存領域から戦略領域(新規投資)へ拡充していく。具体的には、現在行っているDX化(人でやる部分をDX化)をさらに進歩させた高度なものを導入する。またサポートサービスにおいても、さらにより高度なものを提供していく。
b) バトンゾーン
地域建設業に向けた建設DXサポートサービスを活用した「経営バリューアップ支援サービス」を展開していく。
経営バリューアップ支援サービスとは、建設のみならず災害時の緊急対応など地域の安全・安心を守るために不可欠な機能を有する地域建設業を維持する目的で、後継者不在・人財不足等の問題を抱える企業へDXサービス・建設技術・人財・資金等を提供することで地域創生に貢献することである。具体的には、地方建設業支援のために、DXサポートシステムの導入、人財交流等による建設技術支援、資本提携、資金提供などを行う。
(4) 「長期」視点/トランスフォーメーションの姿
長期的な視点からは、各事業ともに「次世代型事業ポートフォリオの確立」によりトランスフォーメーションを実現していく。まず建設事業とグロース事業においては、循環型社会を見据えて「インフラアンチエイジング事業」へと昇華させる。イノベーション事業においては、「建設リスキリング事業」へと昇華させる。
≪インフラアンチエイジング事業≫:循環型社会への適応
「インフラアンチエイジング事業」とは、狭義の建設事業やインフラリニューアル事業の枠を超え、建設に関わる技術の提供だけでなく、「循環型社会」を背景としたインフラの安全性・信頼性の維持に関わる一連の建設関連サービスを提供する複合事業を指す。このような目標に向けて、建設事業は「総合建設領域」へ、グロース事業は「専門領域事業」へと拡大していく。対応領域としては、長寿命化、環境関連、防災・減災、リニューアルなどがあり、マーケットとしては、地域創生フィールド・海外フィールド/PPP(官民連携)フィールドなどがある。
≪建設リスキリング事業≫:未来のConstructionをつくる(非建設も視野)
将来予測される建設供給力ギャップを補うために、業界のデジタル化により生産プロセスと労働力の高度化を推進し、建設業の持続可能な成長を支える基盤(プラットフォーム)を提供する事業を展開する。したがって同社では、必ずしも現在の建設業にはこだわってはいない。対応領域としては、Digital Construction、経営バリューアップ支援などがある。マーケットは地域建設企業及び建設関連企業などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)