清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、セメント系固化材を使用する流動化処理土にバイオ炭を混合した環境配慮型埋戻し地盤材料「SUSMICS-S」を実工事に初適用しました。適用現場は「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業新築工事(B街区)」で、新築建物外周地盤の埋戻し工事にカーボンネガティブ仕様のSUSMICS-S・88m3を使用し、バイオ炭に固定された約8tのCO2を地盤内に貯留しました。
地盤の埋戻し工事に使われる流動化処理土は、建設残土などに水とセメント系固化材を混合して製造する資源循環型の地盤材料です。他方、固化材として使用するセメントは製造時に多量のCO2を排出するため、環境負荷の低減に寄与する技術の実用化が急務の課題となっています。
SUSMICS-Sに使用するバイオ炭は、木質バイオマスの炭化物を粉体状にしたもので、木が成長過程で大気中から吸収したCO2を難分解性の炭素として内部に固定しています。埋戻し工事にSUSMICS-Sを利用すれば、バイオ炭に固定された炭素を地盤内に貯留でき、施工に伴うCO2排出量の削減効果が得られます。特に、バイオ炭の混合量を調整し、CO2固定量が他の構成材料由来の排出量を上回る配合を適用すればカーボンネガティブを実現できます。
今回の現場適用では、流動化処理土1m3あたり40kgのバイオ炭を混合したカーボンネガティブ仕様の配合を採用しています。このバイオ炭には1kgあたり実質2.3kg相当のCO2が固定されており、88m3のSUSMICS-S適用に伴う貯留量は約8tに上ります。施工に伴うCO2排出量は、セメント系固化材由来のもの4.4t、プラントへの輸送や荷揚げなどバイオ炭の利用に伴う付随的な排出量が0.18tで、実態に即したCO2排出量の削減率は178%に達します。
SUSMICS-Sの製造は、既存の流動化処理土製造装置を利用し、建設残土と水に粉体状のバイオ炭とセメント系固化材を添加するだけで完了します。施工面では、従来の流動化処理土と同等の流動性を確保し、品質面でも、施工後の性能試験で埋戻し地盤として求められる性能を満足していることを確認しました。
今後、SUSMICS-Sの適用先を山留めソイルセメント壁や建物基礎下地盤改良にも拡げ、脱炭素社会の実現に寄与していく考えです。