株式投資実戦

    既読 3万2024/12/24

    円安・円高が日本株投資に及ぼす影響

    円安・円高とは具体的にどのような状態なのか?どうして株式投資をする上で為替への理解が重要なのかを解説します。

    日本株に投資する場合でも、ドル円の為替レートを注視するべき理由

    1. 米ドルは世界で最も広く使われている基軸通貨であり、国際貿易や金融取引において中心的な役割を果たしています。したがって、ドル円の為替レートは、日本だけでなく世界経済におけるさまざまな経済活動に影響を与えます。

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    2. 米国の株式市場の時価総額は、世界の株式市場の時価総額のうち約5割を占めています。米ドルと米国株式の動向は日本の株式市場にも影響します。

    3. ドル円の為替レートの動向は、日本企業の業績予想や株価評価にも深い関係があります。

    投資家にとって、ドルに対する自国通貨の価値は非常に重要な指標です。ユーロも米ドルに次いで取引される通貨ですが、日本経済との直接的な結びつきや影響の面では、ドル円のレートの方がより注目される傾向にあります。そのため、本記事では米ドルに対しての円安・円高を前提として話を進めていきます。

    円安・円高は、為替市場において日本円の価値が変動すること

    円安とは

    日本円よりも米ドルを買いたい人が増えれば、米ドルの価値は上がり価格は上昇、つまり円安ドル高となります。日本円の価値が米ドルに対して相対的に低下する状態を指します。

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    円安時には、海外製品やサービスを購入する際により多くの円が必要になりますが、同時に日本から見て輸出品の価格競争力が高まり、輸出企業の業績向上に寄与します。価格競争力が高まるとは、日本から海外にモノを輸出するとき、外貨で日本製品はより安価で手に入れられることになるため、海外で日本製の商品が売れやすくなるということです。

    日本での私たちの生活にはどのような影響があるでしょうか?

    円が安くなることで海外製品の購入や海外旅行に出かけるコストが上昇し、生活費が膨らみます。日本はほかの先進国と比較して食料自給率が低い(38%)だけでなく、ガソリンなどのエネルギー資源をはじめとする多くのモノを海外からの輸入に頼っているため、さまざまな領域で値上げが起こります。

    企業の運営においても、海外から購入する原材料の仕入れコストが上がります(輸入企業に円安が不利と言われる所以)。

    • 利益=売上ー費用

    原材料のコスト高は費用の上昇に相当するため、何某かの工夫をしないと利益が維持できないことが上の式から分かります。売値を高くするのか、同じ予算で仕入れられるものを変えるのか、広告宣伝費を削るのか…。そのような企業努力がないと、利益を維持、ましてや向上させていくことは難しいでしょう。

    円高とは

    日本円よりも米ドルを買いたい人が減れば、米ドルの価値は下がり価格は下落、つまり円高ドル安になります。円高は、日本円の価値が米ドルに対して相対的に上昇する状態を指します。

    円高時には、海外製品が安く購入でき海外旅行に出かけるコストも円安時と比較して割安になるため、いち消費者であれば「お得感がある」かもしれません。しかし、日本の輸出企業には不利な状況となります。海外で日本製品が円安時と比較して相対的に高くなるのが円高であり、価格競争力が低下します。それだけでなく海外で稼いだ外貨、ドル資産を日本円に換金すると円高時は円安時よりも減少します。そのような理由から、輸出企業が業績悪化のリスクに直面します。

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    円安・円高を語る際にこれほど「輸出企業」に言及するのはなぜか?疑問に思う人もいるかもしれません。その理由を端的に言うと、日本株を代表する株価指数である日経平均株価の変動幅に対する寄与度が高い銘柄には輸出企業が多いからです。

    米ドル/円の為替レートの推移

    円安・円高は、外国為替市場における需給バランスの変動によって引き起こされます。現在の為替相場は、円高・円安どちらに推移しているのか見ていきましょう。

    以下は、2024年3月時点での米ドル/日本円(USD/JPY)年足チャートです。

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    足元では円安トレンドが続いています。2012年からアベノミクスが展開、2013年から日銀の黒田前総裁は量的・質的金融緩和を開始。その後円安に進み、マイナス金利導入の2016年から2021年の5年間の為替相場の変動は1ドル100~120円の範囲で推移していましたが、2021年から現在にいたる3年半の間で1ドルあたり45円以上もの急激な下落が見てとれます。

    2024年3月時点での円安トレンドは、主に日本と米国の金利差の拡大に起因したもので、日本から米国への資金流出をうながしてきました。日本銀行は2024年3月19日にマイナス金利を解除すると発表しましたが、今後も引き続き続くと睨む日本の低金利環境は、外貨(特に米ドル)への投資を促進し、結果として円安が進行しています。

    現在の円安は、日本の輸出企業にとっては有利ですが、一般の消費者や輸入企業にとっては不利な状況を生んでいます。私たちの日常生活においても、円安で円の価値が低くなり、インフレで通貨の価値がさらに目減りしていると実質のダブルパンチを喰らうわけです。それはつまり、以前と同じ額面(金額)で、以前と同じ体験ができなくなる、以前と同じ品質のモノは得られなくなる、このようなことを意味します。

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    ここ数年で急速に円安が進行しましたが、もし今後いっそう円安が進むと仮定すると、すべての資産を日本円で保有していると日本円の価値が下がり、日本円建ての資産価値全体が目減りしていきます。したがって、資産の一部を外貨建て資産にしておけば、円安になったとしても、為替レートの影響により資産を増やすことができると考えられます。

    ただし外貨建ての資産には以下のようなリスクも存在します。

    • 為替変動リスク

    • 商品そのものの価格変動リスク

    • 今後も円安が続くとは限らない

    円建て資産と外貨建て資産をバランスよく保有することが一般的に推奨されています。

    日本投資戦略としてのドル円を考える

    例えば、トヨタ自動車のような輸出主導型の企業にとっては、為替レートが業績に直接的な影響を与えます。円安がトヨタの自動車に海外での価格競争力をもたらすだけでなく、海外での外貨収益を円換算する際に有利に働くため、収益の増加に直接的につながります。トヨタは過去に公表した資料で、1円の円安が年間の営業利益に及ぼす影響は数百億円規模になると示しています。円安によって得られる為替差益は、トヨタの業績を大きく左右する重要な要素です。

    moomooニュース:円安恩恵輸出企業の想定為替レート

    この事例から分かるように、ドル円の動向を考慮した投資判断は、日本株に投資する際の重要ポイントのひとつです。特に輸出企業や輸入依存度の高い企業は、ドル円の変動に敏感であり、業績にも大きく影響を及ぼすため、投資戦略を練る上で為替の変動を注視する必要があります。

    円安銘柄円高銘柄を理解し、それぞれの状況に応じた投資戦略を立てたり、購入時には銘柄の分散を考えることは投資のパフォーマンス追求やリスクヘッジの観点からも重要です。現在のような円安環境では、輸出企業や、外需、外国人観光客の増加が期待される企業の株(インバウンド関連)が有利になります。一転して、円高環境となった場合には、輸入企業や、内需、国内消費者の購買力が向上することから恩恵を受ける企業の株式に注目すると良いでしょう。

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    円安銘柄

    円高銘柄

    ここでは円高が有利に働く企業と定義します。

    為替相場の変動要因

    為替相場は、供給と需要のバランスによって常に変動しますが、その背景にはさまざまな要因があります。主な要因としては、各国の金利差、経済成長率、要人発言、政治的要因、貿易収支、社会経済の動向や国際情勢などが挙げられます。すべてを一度に理解するのは難しいため、今回は日米の金利差に焦点を当てます。

    • 日米金利差

    一般的に、金利の高い国の通貨は金利の安い国の通貨に比べて、買われやすい傾向があります。金利の高い通貨に投資をした方がより大きなリターンを狙えるからです。例えば、米国の金利が上昇すると、リターンを求める資金が米ドルに流入し、結果として「円安ドル高」につながります。

    高金利の通貨を保有したり運用した方が高い利益が見込めるため、投資家は金利が低い通貨を売って、金利が高い通貨を買います。そのため、米ドルを買う動きが強まって「円安ドル高」になります。より分かりやすく説明するために、単純に外貨預金をする例で見てみましょう。

    日本円

    米ドル

    金利

    0%

    3%

    100万円を1年間運用すると

    100万円

    103万円

    たとえば、日本円で預金すると金利が0%、米ドルで預金をすると金利が3%の場合、100万円を1年間運用したとすると、日本円は1年後に100万円のままであるにも関わらず、米ドルのほうは1年後は103万円に増えます。(※為替と税金は考慮していません。)

    どちらの通貨でお金を増やしたいか?と聞かれた場合、金利の高いほうの通貨である米ドルと大半の人が答えるでしょう。結果として、「日本円よりも米ドルで資産を運用したい」という人が増え、投資資金が米ドルに流入します。このように、金利が高い通貨のほうが安い通貨に比べて、買われやすい傾向があります

    具体例として金利差について焦点を当てた解説をしましたが、為替相場の変動要因は金利差だけではありません。例えば、真新しい材料として、当局の為替介入という懸念もあります。多くの要因が複合的に絡みあうので、最初は難しく感じるかもしれませんが、少しづつ学んでいきましょう!

    金利はいつどこで決定される?

    金利は、各国の中央銀行が開催する金融政策会合で決定されます。日本銀行が開催する「日銀金融政策決定会合」、米国であればFRBが開催する「FOMC」です。日本は「金利のある世界」に、そして米国は金融緩和に舵を切る局面に迫るため、2024年の金融政策の動向は投資家必見です。moomooの経済カレンダーを活用して、これらの会合を見逃さないようにしましょう!

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    まとめ

    円安は日本円の価値が下がることを意味し、日本の輸出企業には有利です。逆に、円高は円の価値が上がることを指し、輸入企業に有利となり、輸出企業には不利となります。円安・円高がもたらす経済的影響を把握して、投資戦略に活かしましょう。

    株式投資において為替の理解が重要である理由は、為替レートの変動が直接的に日本企業の業績に影響を及ぼし、それが株価に反映されるからです。

    米ドルが基軸通貨として国際貿易や金融取引で広く使われているため、ドル円の為替レートは特に注目に値します。ドル円が動く要因のひとつに、日米金利差が挙げられます。金利を決定する金融政策会合を見逃さないようにしましょう。

    (2024年3月28日執筆)

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    これらの内容は、情報提供及び投資家教育のためのものであり、いかなる個別株や投資方法を推奨するものではありません。

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