【記事】人気銘柄の決算書読み方
エヌビディアの決算書読み方:株価を動かす?!注目すべき4つのポイント
エヌビディアの株価は、年初来で約200%も上昇し、その結果、PER(株価収益率)は約100倍に達しました。この急激な株価上昇は、今後の決算発表への市場の期待をある程度反映している可能性があります。エヌビディアは2025会計年度第3四半期の決算を、11月20日の米国株式市場の取引終了後に発表しました。決算発表は常に投資のチャンスを示唆する可能性がありますが、決算報告書の要点も投資家はおさえておく必要があります。
エヌビディアの決算で注目すべきポイントとは何でしょうか?株価を動かす要因にはどのようなものがあるでしょうか?4つの重要なポイントを見ていきましょう。
1.実績とガイダンス(会社予想)・アナリスト予想の比較
AIの需要拡大により、プロセッサの需要が急増し、過去約2年間停滞していた半導体業界が再び活気づきました。エヌビディアは、半導体業界のリーダーとして、ここ数四半期で最も際立った業績を示してきました。そのため、実際の業績とアナリスト予想の間のギャップは、株価に大きな影響を与える可能性があります。この情報は、アプリを通じて簡単に確認することができます。
実際の業績が予想を大きく上回れば、短期的な株価上昇を促す可能性があります。一方で、業績が予想を下回る場合、株価に下落圧力がかかる可能性があります。
仮に、エヌビディアの業績が期待ほど伸びなかった場合、株価にネガティブな影響を与える可能性があります。というのも、投資家がすでに高い期待を織り込んでいるため、平凡な結果では株価を押し上げるには不十分かもしれません。
また、実際の業績に加えて、経営陣による来期のガイダンス(会社予想)も重要な要素です。予想を上回るガイダンスは株価にポジティブな影響を与える可能性があり、逆に予想を下回るガイダンスは株価にネガティブな影響を与える可能性があります。
2025会計年度第3四半期の決算では、予想されていた売上331.34.億ドルを大幅に超える350.82億ドルを記録し、調整後EPS(1株当たりの利益)は0.78ドルと予想の0.7ドルを上回りました。ただし、ガイダンスは市場予想の中央値を下回る結果となりました。
なお、2025会計年度第2四半期の決算では、予想されていた売上233.57億ドルを超える300.40億ドルを記録し、調整後EPS(1株当たりの利益)は0.68ドルと予想の0.65ドルを上回りました。同時に、第3四半期のガイダンス(会社予想)を325億ドルと示しました。市場の強気予想の379億ドルには届かず、ガイダンスの印象はやや物足りないと市場が受け止め、この決算発表後、時間外で株価は6.9%下落しました。2025会計年度第1四半期では、売上高と調整後EPSが事前のガイダンスや市場予想を大幅に上回りました。第2四半期ガイダンスも市場の予想を上回る結果となりました。さらに株式分割が発表され、この決算発表後、時間外で株価は6.1%急騰しました。
決算では、実際の業績や会社の示すガイダンスがアナリストの市場予測とどのように比較されるかに注目し、市場の期待を上回る結果を示せるかを見極めることが重要です。
2.データセンター部門の売上
エヌビディアのデータセンター部門は、同社の主要な成長エンジンとして機能しており、その総売上に占める割合は、2021会計年度の37%から2024会計年度第3四半期には80.1%という驚異的な水準に達しました。
2023会計年度第4四半期以降、データセンター部門の売上は過去の減少傾向を克服し、前年同期比および前期比で増加を見せました。さらに、次の5四半期にわたり、ユーザーの好みや過去の行動履歴に基づいて、適切な商品やサービス、情報を推薦するレコメンデーションエンジン、大規模言語モデル生成AIアプリケーションへの需要に後押しされて、データセンター部門の売上は四半期ごとに伸びました。
2025会計年度第2四半期のデータセンター部門の売上は263億ドルでしたが、第3四半期では307億ドルに達しました。データセンター部門の成長が、エヌビディアの総売上を支える原動力となっています。
ここ数四半期のデータセンター部門の売上の成長は目覚ましいものがありますが、今後も同様のペースで成長を続けるのは難しいかもしれません。収益基盤が拡大するにつれ、成長率は次第に減速することが予想されます。
実際、データセンター部門の売上高の前年同期比成長率はすでに減速し始めています。今後は、この減速後もデータセンター部門の売上高成長率が比較的高い水準で安定するかどうかに注目が集まります。この動向は、主に同社の最新AIチップ「Blackwell」の需要と出荷量に大きく依存することが予想されます。
3.在庫状況
在庫状況は、サイクル性の強い半導体業界において重要な指標の一つです。一般的に、需要が低下すると在庫水準が上昇し、販売への圧力が増加することで株価にネガティブな影響を与える可能性があります。一方で、需要が上昇すると在庫水準が減少し、販売が促進され、株価にポジティブな影響を与えることがあります。
在庫の変化を測定する指標として、在庫額を売上高で割る「在庫対売上比率」が挙げられます。この指標が高いほど、在庫の相対的な水準が高く、販売に対する圧力が大きいことを示します。
例えば、2022会計年度第4四半期以降、エヌビディアの在庫対売上比率は一貫して上昇しました。この動きは、同時期に株価のトレンドが反転したタイミングと一致しています。
しかし、エヌビディアは2024会計年度第1四半期から2025会計年度第1四半期にかけて業績を伸ばし、その間に在庫水準を大幅に減らしました。結果として、在庫対売上比率は2023会計年度第4四半期の85.3%から、2025会計年度第2四半期には過去最低の22.4%にまで低下しました。
このような在庫比率の低下は、エヌビディアにとってポジティブな兆候と考えられます。今後の決算報告でも、この比率がどのように推移するかを引き続き注視していきましょう。
4.収益性
現在進行中の景気循環の上昇局面では、エヌビディアの収益性の向上が市場で注目されています。エヌビディアの粗利益率は、景気サイクルの底を脱しつつある中で、ここ数四半期にわたり徐々に改善しており、2025会計年度第1四半期には過去最高の78.35%に達しました。しかし、2025会計年度第2四半期では75.15%に低下しました。この低下は、新型チップ「Blackwell」の量産初期段階における素材の仕込みや小規模な試験運用が原因で、コストが増加したためと考えられます。
純利益率もここ数四半期で急速に上昇しており、2025会計年度第1四半期には57.14%に達しました。しかし、第2四半期では粗利益率の低下に伴い、純利益率も約55.26%に下落しました。2025会計年度第3四半期の粗利益率は74.56%、純利益率は55.04%と両方低下傾向にあります。
今後も注目すべき点はBlackwellチップの本格的な大量生産が進む中で、粗利益率および純利益率が短期的な低下を経て、比較的高い水準で安定するかどうかです。
注意点
エヌビディアの時価総額が3兆ドルを超える現状では、その高いバリュエーションが懸念材料になる可能性があります。また、半導体業界自体が持つリスクにも注意が必要です。投資戦略を考える際は、これらのポイントを踏まえ、自身のリスク許容度に合った判断を行うことが求められます。