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米商務省が26日発表した7-9月期の米実質国内総生産（GDP）速報値は前期比年率4.9％増、市場予想の4.3%を上回った。コロナ禍からの回復期だった2021年第4四半期以来の高水準となった。伸び率は4-6月期の2.1%から急拡大し、5四半期連続のプラス成長となった。この強靱性を支えている最大の要因は底堅い労働市場であり、それが家計の需要を押し上げ続けている。一方で、足元には不安材料が多く、減速ペースに焦点が移る。

GDPの約7割を占める個人消費速報値は4％増、市場予想の4％と一致、2021年第2四半期以来の高水準。前期が0.8％増。

米金融当局が重視するインフレ指標である食品とエネルギーを除いた個人消費支出（PCE）コア価格指数は、前期比2.4％増と2020年以来の低いペース。市場予想の2.5％増を下回り、前四半期の3.7％増から減速した。ハト派的なコアデフレータが、タカ派的なGDP成長率サプライズに覆いかぶさったと一部の債券トレーダーが主張。2年物国債利回りは低下した。

企業の設備投資は4〜6月期の7.4%増から0.1%減と2年ぶりにマイナスに転じた。住宅投資は2.2%の減少から3.9%の増加に転じた。輸出は6.2％増、輸入は5.7％増といずれも伸びた。政府支出は4.6％増加。

米GDP速報値は予想を上回るかなり強い内容だったが、米国債利回りが下げの反応を見せている。米10年債利回りは4.95％付近から一時4.93％台へと低下の反応。ドル相場は一瞬買われたあとは、ドル売り方向に振れている。

米FRBが高インフレを抑えるために利上げを昨春から続けており、企業や個人がお金を借りづらくなって景気が冷えるはずの中で、米経済の強さが際立っている。一方、このような強さは、間もなく試練に直面する可能性がある。

米長期金利の上昇、ウクライナや中東での戦争、全米自動車労組のストライキ、米国政府の一部閉鎖の可能性と10月からの学生ローンの返済再開などは、経済に亀裂を生じさせる要因である。米経済は10-12月期に鈍化するとの予想が多い。

パウエル議長は物価抑制に向けて「適切なら金利をさらに引き上げる用意がある」として慎重に対応を進める考えを示しており、急加速した今回のGDPを踏まえ難しい判断を迫られそうだ。今回の強いデータをもってしても市場では、来週のFOMCでの金利据え置きの見方に変化はないようだ。短期金融市場でも据え置きをほぼ確実視している。米金利先物市場では、来年半ばに利下げを開始するという観測が強まった。

国内総生産。米国内で新たに生産された財やサービスの付加価値を合計した名目GDPから、物価変動の影響を除いたもの。個人消費、設備投資、住宅投資、在庫投資、政府支出、純輸出（輸出から輸入を引いたもの）で構成される。国内全体の生産活動を把握することができ、注目度が高い。米商務省経済分析局から四半期ごとに、速報値、改定値、確報値の3回に分けて発表される。速報値は当該四半期終了後の翌月末（1－3月期のGDPであれば4月末）に発表される。市場の注目度は速報値がもっとも高い。