株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役:小林 一俊)は、唇のあれやすさの一因はバリア機能を担う細胞間脂質の密度の低さにあることを発見しました。唇の細胞間脂質の密度は肌よりも低いことも明らかとなり、その点が肌よりも唇があれやすい要因であるともいえます。また、リポソーム製剤をあれた唇に連用することで、その外観やあれ状態が改善することを確認しました。
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図1 唇の水分量と細胞間脂質の構造の関係(構造は電子線回折から解析)
研究の背景
唇は人の印象を決める上で重要な部位であり、美しく血色感のある唇は健康的な印象を与えます。しかし、ひび割れ、皮剥けといった唇あれに悩む人は多く、唇の乾燥を慢性的に感じている人も珍しくありません。これらの唇のあれや乾燥に対し、リップクリームなどでの保湿は有効な手段ですが、それでも慢性的な唇の不調を抱える人もいます。
ここで唇の構造に注目すると、皮脂腺や汗腺がない、角層が薄い、ということが知られています。これらは表面を保護する皮脂や汗が出てこない、バリア機能として重要な角層が少ないという点で、水分量が少ない、水分蒸散量が多いといった唇の乾燥しやすい性質をある程度説明しています。一方で慢性的な唇の悩みを解消するためには、さらに別角度からのアプローチが必要だと考えました。
そこで本研究では唇のあれやすさを解明することを目指し、バリア機能として重要な角層の細胞間脂質の構造に着目して研究を行いました。また、唇あれへのアプローチになりうる製剤の開発を検討しました。
唇は肌よりも細胞間脂質の密度が低く、あれやすさにも繋がることを発見
角層の細胞間脂質はセラミドや遊離脂肪酸といった成分で満たされた充填構造をしており、その密度が十分でないとバリア機能が低下することが知られていました。そこでこの細胞間脂質の充填構造の密度を唇と肌で比較検討しました。電子線回折という細かな充填構造を解析する手法と、赤外分光法を用いた充填密度の測定による検証を重ねた結果、唇は肌よりも細胞間脂質の密度が低いことが分かりました(図2)。そのため、唇は肌よりもバリア機能が低く、内部の水分が蒸散しやすい、外部から刺激物が侵入しやすいといった、唇のあれやすさに繋がる新たな知見を得ることができました。
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図2 赤外分光法による唇と肌の細胞間脂質の密度の比較
さらに、唇のあれ状態と細胞間脂質の充填構造の関連を評価するため、目視による唇あれと水分量の低さが相関している唇を対象に、電子線回折による充填構造の解析を行いました。その結果、水分量が少なくあれた唇では充填構造の密度が低く、バリア機能も低い流動相という構造が多く、一方でバリア機能が高い結晶構造が少ないことが明らかになりました(図1)。このことから、唇あれを改善するためには細胞間脂質の充填構造の密度を高めることが重要であることが分かりました。
リポソーム製剤による唇あれ改善効果の検証
次に、唇あれの改善のための製剤開発を行いました。今回の発見から、唇の細胞間脂質の充填構造の密度を高める必要があることが分かったため、肌において細胞間脂質のバリア機能の改善効果が確認されているリポソームを含んだリップケア製剤を開発しました。
唇あれのある30名に開発品を4週間連用してもらい、連用前後の唇の外観、水分量、水分蒸散量からあれ状態への影響を評価しました。その結果、外観の改善、水分量の増加、水分蒸散量の低減といった唇あれの改善効果を確認することができました。また、特に改善効果の高かった実験参加者の唇の細胞間脂質の充填構造の解析を行ったところ、連用前後で高密度な部分が明らかに増加しており、今回開発したリポソーム製剤による細胞間脂質への改善効果が示唆されました(図3)。
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図3 リポソーム製剤の唇あれに対する効果検証の一例 (外観および赤外分光法による解析)
今後の展望
本研究により、唇があれやすい原因の1つは唇の細胞間脂質の充填構造の低さにあることが明らかになりました。また、リポソーム製剤を用いることで、唇あれを改善することができることを確認できました。この成果は今後の商品開発に応用するとともに、今後も肌のみに留まらない基盤研究や効果のある製剤開発を推進していきます。
株式公司资生堂(总部位于东京都中央区,代表取缔:小林一俊)发现唇部脂质间隙的密度不足是唇部毛病的原因之一,它是负责唇部屏障功能的细胞之间脂质密度不足。并且,唇部细胞间脂质的密度比肌肤低,这也说明了这一点是唇部易发生干裂的原因。并且,已经证实了反复使用多种生物脂质制剂可以改善其外观和症状。
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图1 唇部水分和细胞间脂质结构的关系(结构用电子衍射解析)
研究背景
唇部是决定人印象的重要部位,美丽而富有血色感的唇部会给人留下健康的印象。然而,许多人受到唇部干燥、龟裂和脱皮等毛病的困扰,甚至有些人长期感受到唇部干燥。虽然保湿唇膏等会在一定程度上有所帮助,但这些干燥的唇部状况仍然存在。
关于唇部的结构,人们已知其没有皮脂腺和汗腺,角质层薄等。这些知识指出皮肤和唇部的差异之处在于,皮肤和唇部在维护表面的皮脂和汗液不出来的屏障功能时要依靠角质层,然而角质层的数量在唇部比在皮肤中要少,并占据了保湿而言的长於皮肤的缺陷部分。如果要解决与唇部长期有关的问题,需要从不同的角度出发考虑,这一点是十分重要的。
因此,在本研究中,我们的目标是探讨唇部干燥的原因并研究细胞脂质层对其屏障功能的影响。同时,我们还考虑了可能对解决唇部毛病有帮助的制剂开发。
发现唇部比皮肤的细胞间脂质密度低,且容易导致唇部症状。
细胞脂质层是由包含鞘磷脂和游离脂肪酸等成分的填充结构组成的。已知如果这些密度不足,将会影响其屏障功能而导致问题。因此我们对唇部和肌肤中的细胞脂质层密度进行了比较。通过电子衍射和红外分光法,我们发现唇部细胞脂质层密度比肌肤低(图2),因此唇部屏障功能较差,内部水分易挥发,外部刺激易导入,促成了唇部毛病的发生。
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图2 使用红外分光法对唇部和皮肤细胞脂质层密度进行比较
为了了解唇部症状与细胞脂质层填充结构的关系,我们针对唇部症状和水分量较低的实验对象进行了电子衍射分析。结果表明,唇部症状严重,水分量较少,但填充结构密度低,屏障功能不够,呈现流动相结构,这种结构对特别好的实验参与者的唇部改善非常有帮助(图1)。因此,我们认为,提高细胞脂质层填充结构密度是解决唇部毛病的重要步骤。
通过使用生物脂质制剂改善唇部毛病
因此,我们开发了在润唇膏中添加了包含细胞脂质层屏障功能改善效果的生物脂质制剂的唇膏。
我们让30个患有唇部毛病的人不断使用这个开发品,连续4周后评估他们的唇部外观、水分量和水分蒸散量以此评价其对唇部毛病的改善效果。结果,我们确认了唇部毛病得到了改善。此外,一些表现良好的实验参与者的细胞脂质层填充结构密度分析表明,使用生物脂质制剂后,其填充结构密度明显增加,因此我们提供了生物脂质制剂可以对细胞脂质改善的结论(图3)。
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图3生物脂质制剂用于改善唇部毛病的效果(外观和红外分光法分析示例)
展望未来
这项研究发现了唇部毛病的一个因素是唇部细胞间脂质密度不足。同时,证明了使用生物脂质制剂可以改善唇部毛病。这一成果可以应用于今后的商品开发,同时我们还会推动基础研究和生物脂质制剂的开发,以便不仅应用于皮肤,也能用于身体其他部位。