2024年11月19日
株式会社NTTデータグループ
株式会社NTTデータグループ(以下、NTTデータグループ)は、Gaia-X注1の重要機能の一つであるデータスペース参加者のコンプライアンスを検証・認証する「デジタルクリアリングハウス注2(GXDCH:Gaia-X Digital Clearing House)」を、国立大学法人東京大学(以下、東京大学)のデータスペースのテストベッド注3(実証実験環境)に実装しました。欧州外でのGXDCH実装は初めてです。
昨今、企業間・業界間でデータを安全・公正に管理してデータを交換・流通させるデータスペースへの取り組みが活発化しています。安全・公正なデータ流通を行う際に、参加者のコンプライアンスを自動的に検証・認証する機能がGXDCHをはじめとするトラスト注4フレームワークです。
東京大学のテストべッドには、株式会社東芝、ソフトバンク株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社などの大手企業が参画しており、今回GXDCHを実装できたことにより、テストベッド上でGXDCHを利用した各種検証を行えます。
NTTデータグループでは今後、トラストフレームワークの仕組みも活用し、ウラノス・エコシステム注5などの日本のデータ連携基盤と、海外のデータ連携基盤との相互接続に向けた活動についても推進していきます。
背景
現在、データスペースは世界的に取り組みが活発化しており、各国において多数のデータスペースが構築されています。一方、それらのデータスペースは異なる実装・技術・ルールで運用されており、それらの間の互換性や異なるデータスペースの併用時の難しさが課題となっています。NTTデータグループでは、欧州のIDSA(International Data Spaces Association)注6やCatena-X注7などと連携し、国内外のデータスペースの相互接続性を検証しつつ、欧州や日本のデータスペースの標準仕様にフィードバックするなど、複数のデータスペースの運用を促進する活動を行っています。
データスペースの技術を利用できる環境の整備も進めています。例えば、東京大学のテストベッドは、欧州、日本の実装・技術を利用できる環境が整備されており、さまざまな技術の評価が可能です。NTTデータグループはその中で客員研究員としてテストベッドへのOSS(オープンソースソフトウエア)を利用した環境の実装や、信頼性を担保するトラストの実装、自社および参画企業のデータスペースの相互接続検証などを行ってきました。
概要
今回、東京大学のテストベッドで検証できる技術の一つとしてGXDCHを実装しました。テストベッド参画者は自由に利用することができ、GXDCHのコンプライアンス検証等を行うことができます。
GXDCHは、Gaia-Xのルールに基づいてデータスペースでのデータ取引のコンプライアンスを自動的に確保できるトラストフレームワークのコンポーネントのひとつです。Gaia-Xは、欧州のデータエコシステムを強化し、データの安全な流通を促進することを目的に、GXDCHによってデータ取引中とデータ取引前後の各フェーズで法的、財務的、技術的な側面からデータ取引の安全性を確保するために必要となる機能を提供します。
図:Gaia-X Digital Clearing Houseの位置づけ(Gaia-X Architecture Document24.04より引用)
GXDCHは下記のような仕組みで、データ取引の透明性と信頼性を高め、「企業間のデジタルトランスフォーメーション注8」を促進します。
- コンプライアンスの自動化:GXDCHは、Gaia-Xのルールに基づくコンプライアンスを自動で取得できるため、利用する企業は手間をかけずにデータ取引のために必要な確認を行えます。
- データの安全性確保:データ取引の各フェーズで監視とロギング機能注9を提供し、セキュリティーリスクを最小限に抑えることに寄与します。
- 分散型ネットワーク:GXDCHは分散型ネットワークとして構成されており、柔軟性とスケーラビリティーを提供します。
今後について
NTTデータグループではGaia-Xが提供するトラストフレームワークの仕組みも活用し、ウラノス・エコシステムなどの日本のデータ連携基盤と、海外のデータ連携基盤との相互接続や横断的な利用に向けた活動を推進していきます。
具体的には、年内に今回テストベッド上に構築したGXDCHの検証を開始し、テストベッド参加者の利用を支援しつつフィードバックを得てトラスト技術の今後の改善に役立てていきます。
関連リンク
- GXDCHの概要:
trust framework - main.png(3702×1487)(gaia-x.eu) - NTT DATAのデータスペースに関する取り組み
- 今、知っておくべき「データスペース」の現在地
注釈
- 注1「Gaia-X」は、ヨーロッパのデータインフラを強化するためのプロジェクトで、2020年にドイツとフランスが主導して設立されました。ベルギーに本部を置く非営利団体「Gaia-X AISBL」が運営し、データの主権とセキュリティーを確保しつつ、クラウドサービスの相互運用性を高めることを目指しています。欧州全体でのデータエコシステムの構築を目指し、デジタル経済の発展を支援します。
- 注2デジタルクリアリングハウスは、データ取引の信頼性を確保するために、法的、財務的、技術的な情報を管理します。データ共有前に取引の適格性を確認し、共有中は監視とログ取得を行い、違反が発生した場合は迅速に対応します。これにより、安全で信頼性の高いデータ流通を実現します。
- 注3テストベッドとは、新技術の実証実験に仕様される実証基盤のことであり、東京大学テストベッドでは、CADDE、EDCなどのコネクタや、それらに必要なネットワーク基盤、認証基盤を提供しています。
- 注4トラストとはデータの安全性とプライバシーを確保しつつ、データ共有を促進するための概念です。具体的には、データ主権(データ所有者のコントロール)、透明性(データ処理の明確化)、セキュリティー(不正アクセス防止)、相互運用性(異なるシステム間のデータ共有)を含みます。これにより、信頼性の高いデータエコシステムを構築し、安心してデータを共有・活用できる環境を目指しています。
- 注5「ウラノス・エコシステム」は、企業や業界、国境を越えたデータ共有とシステム連携を促進するための取り組みです。経済産業省が主導し、データの自由な流通と信頼性を確保しつつ、産業競争力の強化を目指しています。特に蓄電池のトレーサビリティーなど、具体的なユースケースを通じて実装が進められています。
- 注6「IDSA(International Data Spaces Association)」は、データ主権を確保しつつ、安全かつ公正なデータ共有を促進するための標準とルールを策定する組織です。現在は22カ国以上の企業や組織が参加しています。IDSAは、データ提供者の意図に沿ったデータ利用を保証し、データの安全な流通を実現するためのデータスペースプロトコルを策定しています。
- 注7「Catena-X」(Association Catena-X Automotive Network e.V.)は2021年に設立され、ドイツのベルリンを拠点にしていますが、国際的な拠点やグローバルな分散型コミュニティーの形成に尽力しています。創設者は、BMW AG、Deutsche Telekom AG、Robert Bosch GmbH、SAP SE、Siemens AG、ZF Friedrichshafen AGなどです。Mercedes-Benz AG、Volkswagen、Ford、Denso、Magna、Valeo、IBM、google、Azure、AWS、BASF SE、Henkel AG&Co.なども参加して、自動車のバリューチェーンの企業が平等に参加でき素早く拡張できるエコシステムを形成するために、自動車のグローバルバリューチェーン全体にわたるエンドツーエンドのデータチェーンの構築、運用、共同利用のための環境を提供することをめざしています。Catena-Xは、ISO/IEC/ITUおよびCEN-CENELC/ETSIといった国際標準化団体に従っています。
- 注8「企業間のデジタルトランスフォーメーション」は、従来のDXを企業内に閉じたデジタル化と捉え、企業間にまたがるシステムをデータスペースを活用してデジタル技術で結合していくことを弊社では企業間のデジタルトランスフォーメーションと定義しています。
- 注9データの送信、受信、データ使用ポリシーが順守されたかどうかを記録する機能です。
- 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部
Innovation技術部
IOWN推進室
金子、土橋、岡本
E-mail:trusted-ds@kits.nttdata.co.jp