予防医療事業への適用で、医療費節減効果と健康改善効果がともに2倍になる施策候補を導出
当社は、自治体の施策(Policy)をデジタルツイン上で再現することで、施策による社会への影響をシミュレーションし、多様な視点で施策の効果を最大化できる技術「Policy Twin」を開発しました。まずは自治体の予防医療事業での効率的なサービス提供を支援する「Policy Twin」の技術を、2024年12月6日より、当社の先端技術を試せる「Fujitsu Research Portal(注1)」を通して公開します。
高齢化を背景とする医療費増加や医療人材不足などの社会課題を解決するために、限られた社会資源の中で、どの様な人にどの様なサービスを提供するかを定めた自治体の施策を適切に策定し、施策の効果を最大化する必要があります。しかし、例えば予防医療事業では、専門家でも施策の効果を事前に算出することが難しいため、多くの場合、勘や経験に頼って施策が立案されています。さらに、医療機関や住民、行政などのステークホルダーの意見が異なるため、合意形成に時間がかかっています。
今回開発した「Policy Twin」では、実績のある複数の自治体の過去の施策をデジタルツインに再現した上で、それらの複数の施策を参考に新たな施策候補を再構成し、生成された施策候補の効果を過去の施策の実績データをもとにデジタルツイン上で算出することで、効率的な施策立案を支援します。
実際に予防医療事業で本技術を検証したところ、保健指導の提供リソースの要件を満たしつつ、保健指導による医療費の節減効果と健康指標の改善効果をともに前年度の約2倍に向上させる施策候補を導出できました。このように、経済性や健康改善など複数の目標指標を同時に改善する施策の立案が可能となり、施策立案の時間短縮や合意形成の容易化も期待できます。
当社は今後、「Policy Twin」を活用した「健康医療EBPMサービス」(注2)の2025年度中の提供を目指します。さらに、「Uvance Wayfinders」のコンサルティングサービスにおいて本技術を活用することで、自治体に限らず様々なステークホルダーが行っている事業をデジタル化し、人材不足へ対応したサービス再編、防災・減災、サプライチェーンのレジリエンスなど社会課題解決に貢献していきます。
「Policy Twin」の概要
当社はこれまで、複雑な社会課題の解決を支援するために、AIを含むICTに最新の行動経済学の知見を取り入れた技術群であるソーシャルデジタルツイン(注3)の研究開発を行っており、人々の行動をデジタルツイン上に高度に再現し、施策の効果や影響を事前に検証可能とするデジタルリハーサル技術の開発に取り組んできました。
このたび、デジタルリハーサル技術を拡張し、経済的な合理性に基づいて社会資源を適切に分配するための理論である実証経済学に基づいて、デジタルツイン上に再現した自治体の施策を事前検証し、効果の最大化や比較検討を可能とする技術「Policy Twin」を開発しました。
図1:文書化された施策情報を機械可読なフロー形式に変換する例(糖尿病性腎症重症化予防事業の例)
図2:「Policy Twin」によるデジタルリハーサルの概要「Policy Twin」で効果的な施策を探索する流れは以下の通りです。
施策をフロー形式に変換:
大規模言語モデル(LLM)などによって、文書として公開されている各自治体の施策情報を、提供サービス(保健指導や受診勧奨など)とサービスを提供する対象者を絞り込むための条件分岐(血糖値や腎障害の条件など)から成る機械可読なフロー形式に変換します(図1)。これにより、地理的な特性や人口構成を考慮し、類似する複数の自治体の施策のフローの違いを比較できます。
新たなフロー候補の生成:
図2のように、複数の自治体の中から実績のある施策のフローを参考にして、条件分岐や提供サービスの中から一部を組み合わせて再構成することで新たなフロー候補をいくつか作成します。この際に、実証経済学の資源配分の検討プロセスを参考にして、サービス利用の定員など限られたリソースの配分可能な範囲を制約条件としてフローの組み合わせを選定します。
サービス提供のシミュレーション:
作成したフロー候補の上で、フローの開始から人々がどの条件分岐を通って、結果としてどの様な提供サービスに至るかを、人の行動選択を考慮した機械学習(独自の行動選択モデル(注4))などにより実績データに基づいてシミュレーションします。さらに、健康指標や医療費、リソースなどの自治体が目指す目標指標がどの様に変化するかを算出します。ある自治体における予防医療事業を対象にシミュレーションの正確さを検証したところ、国民健康保険のデータに基づいて「Policy Twin」で算出した保健指導の件数は、実績値と誤差5%以内の範囲で一致することを確認しました。このように、複数のフロー候補でそれぞれ複数の指標をシミュレーションし、それらの指標が最大となるフロー候補を選択します。
「Policy Twin」の効果
このように、より効果の高い予防医療事業の施策の策定に「Policy Twin」を活用することで、自治体が目指す住民の健康改善、医療費節減、疾患予防など複数の目標指標を同時に達成し、ウェルビーイング向上への寄与が期待できます。「Policy Twin」は、立案した施策の根拠も示すことができるため、多様なステークホルダー間の合意形成や社会への実装を容易にすることが期待されます。さらに、複数の自治体で本技術を活用することで、施策のベストプラクティスの導出や、自治体間での施策の相互参照、施策の標準化への応用も期待できます。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
注1
Fujitsu Research Portal:
本ポータルサイトは、アカウント登録をすることで当社の先端技術をトライアル利用できるものとして、2023年6月より社外に公開。本ポータルサイトを通じて当社の先端技術を、法人に限らず個人の利用者にも公開する。
注2
EBPM(Evidence Based Policy Making):
証拠に基づく政策立案。平成30年度内閣府取組方針では「政策の企画立案をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで政策効果の測定に重要な関連を持つ情報やデータ(エビデンス)に基づくものとすること」と定義されている。
注3
ソーシャルデジタルツイン:
実世界のデータをもとに、人や物の状態だけでなく、経済・社会の活動をまるごとデジタルに再現することで、社会の実態や問題発生のメカニズムを把握すると共に、多様で複雑化する課題の解決に向けた施策立案などを支援する技術群。
注4
行動選択モデル:
行動経済学の代表的理論の一つであるプロスペクト理論と機械学習を組み合わせた技術で、多くの人に共通する行動特性をもちつつ人による選択の違いを表現できる。
関連リンク
- Fujitsu Research Portal
- 富士通のコンバージングテクノロジー
- 複数の交通手段を組み合わせた移動を高精度に再現する複合型行動選択モデル技術を開発(2024年2月26日Updates from FUJITSU)
- 高齢化社会に対応した持続的で柔軟な地域医療提供の実現に向けて、富士通と津田塾大学がソーシャルデザインの共同研究を開始(2022年8月25日プレスリリース)
当社のSDGsへの貢献について
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。
本件が貢献を目指す主なSDGs![big]()
本件に関するお問い合わせ
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容などは発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。
予防醫療事業への適用で、醫療費節減効果と健康改善効果がともに2倍になる施策候補を導出
當社は、自治體の施策(Policy)をデジタルツイン上で再現することで、施策による社會への影響をシミュレーションし、多様な視點で施策の効果を最大化できる技術「Policy Twin」を開発しました。まずは自治體の予防醫療事業での効率的なサービス提供を支援する「Policy Twin」の技術を、2024年12月6日より、當社の先端技術を試せる「Fujitsu Research Portal(注1)」を通して公開します。
高齢化を背景とする醫療費増加や醫療人材不足などの社會課題を解決するために、限られた社會資源の中で、どの様な人にどの様なサービスを提供するかを定めた自治體の施策を適切に策定し、施策の効果を最大化する必要があります。しかし、例えば予防醫療事業では、専門家でも施策の効果を事前に算出することが難しいため、多くの場合、勘や経験に頼って施策が立案されています。さらに、醫療機関や住民、行政などのステークホルダーの意見が異なるため、合意形成に時間がかかっています。
今回開発した「Policy Twin」では、実績のある複數の自治體の過去の施策をデジタルツインに再現した上で、それらの複數の施策を參考に新たな施策候補を再構成し、生成された施策候補の効果を過去の施策の実績データをもとにデジタルツイン上で算出することで、効率的な施策立案を支援します。
実際に予防醫療事業で本技術を検証したところ、保健指導の提供リソースの要件を満たしつつ、保健指導による醫療費の節減効果と健康指標の改善効果をともに前年度の約2倍に向上させる施策候補を導出できました。このように、経済性や健康改善など複數の目標指標を同時に改善する施策の立案が可能となり、施策立案の時間短縮や合意形成の容易化も期待できます。
當社は今後、「Policy Twin」を活用した「健康醫療EBPMサービス」(注2)の2025年度中の提供を目指します。さらに、「Uvance Wayfinders」のコンサルティングサービスにおいて本技術を活用することで、自治體に限らず様々なステークホルダーが行っている事業をデジタル化し、人材不足へ対応したサービス再編、防災・減災、サプライチェーンのレジリエンスなど社會課題解決に貢獻していきます。
「Policy Twin」の概要
當社はこれまで、複雑な社會課題の解決を支援するために、AIを含むICTに最新の行動経済學の知見を取り入れた技術群であるソーシャルデジタルツイン(注3)の研究開発を行っており、人々の行動をデジタルツイン上に高度に再現し、施策の効果や影響を事前に検証可能とするデジタルリハーサル技術の開発に取り組んできました。
我們擴展了數字孿生技術,基於經濟合理性和實證經濟學的理論,開發了在數字孿生上覆制自治體政策、預先驗證效果並最大化比較的技術「Policy Twin」。
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圖1:將文檔化的政策信息轉換爲可機讀的流程格式的示例(糖尿病性腎病惡化預防項目示例)
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圖2:數字孿生的政策復盤概述
在「Policy Twin」中,探索有效政策的流程如下。
將政策轉換爲流程形式:
通過大規模語言模型(LLM)等將各地自治體的政策信息轉換爲機器可讀的流程形式,其中包括提供服務(衛生指導和就診鼓勵等)以及用於縮小服務對象範圍(如血糖和腎損傷等條件分支)的條件。 這樣一來,可以考慮地理特徵和人口構成,比較類似多個自治體政策流程之間的差異(見圖1)。
生成新的流程候選:
如圖2所示,參考多個自治體中已有實績的措施流程,通過組合條件分支和提供服務中的部分內容重新構建,生成幾個新的流程候選。在此過程中,參考實證經濟學的資源分配審查程序,將服務利用的定額等有限資源的分配可能範圍作爲約束條件,選擇流程組合。
服務提供的模擬:
在創建的流程候選上,從流程開始經過哪些條件分岐,最終導致哪些服務提供方案,通過考慮人的行爲選擇的機器學習(獨特的行爲選擇模型(注4))等,基於實際數據模擬。此外,計算自治體的健康因子、醫療費用、資源等目標指標的變化情況。驗證了針對某自治體的預防醫療項目的準確模擬後得出結論,基於國民健康保險數據計算出的健康指導數量與實際值的誤差在5%以內。因此,通過在多個流程候選中模擬多個指標,選擇使這些指標最大化的流程候選。
「Policy Twin」 的效果
通過利用「Policy Twin」來制定更有效的預防醫療項目措施,自治體可以同時實現旨在改善居民健康、節約醫療費用、預防疾病等多項指標,從而有望爲促進福祉做出貢獻。「Policy Twin」能夠表明所制定措施的依據,因此有望使各方達成共識並方便將其落實到社會中。此外,通過在多個自治體中應用此技術,可以期待推導出最佳實踐措施、自治體間措施的相互參照以及措施的標準化。
商標:本文中提到的產品名稱等專有名詞是各自廠商的商標或註冊商標。
所述產品名稱等專有名詞均爲各公司的商標或註冊商標。
註解
備註1
Fujitsu研究門戶:
本門戶網站從2023年6月起向外部公開,通過註冊賬號,可以試用我們的先進技術,不僅面向企業,也向個人用戶開放。
註解2
EBPM(基於證據的政策制定):
根據證據制定政策。內閣府在平成30年的施政方針中將其定義爲「不僅僅依賴當時的片段故事來規劃政策,而是明確定義政策目標,基於對政策效果測量至關重要的相關信息和數據(證據)制定政策。」
注3
社交數字孿生:
基於實際世界數據,通過將人員和物品的狀態以及整個經濟和社會活動數字化再現,支持了解社會現狀和問題發生機制,以及爲解決多樣化和複雜化的問題提供方案的技術組。
注4
行爲選擇模型:
結合行爲經濟學中代表性理論之一的前景理論和機器學習的技術,能夠表達多人共同的行爲特徵以及人們選擇差異。
相關鏈接
- 富士通研究門戶
- 富士通的收斂技術
- 開發了結合多種運輸方式的移動的高精度複合型行動選擇模型技術(2024年2月26日富士通更新)
- 爲應對老齡化社會,實現持續靈活的地域醫療服務,富士通與津田塾大學開始了社會設計的共同研究(2022年8月25日新聞發佈會)
關於我們對SDGs的貢獻
2015年聯合國通過的可持續發展目標(Sustainable Development Goals:SDGs)是全球在2030年前應完成的共同目標。我們的目的是通過創新爲社會帶來信任,使世界更加可持續。這承諾了我們對SDGs的貢獻。
本附件旨在爲主要SDGs做出貢獻
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有關此事的詢問
按照公告日的內容,新聞發佈中所提及的產品價格、規格、服務內容等均爲當前的內容。之後有可能會有未經預告的更改,請事先知悉,謝謝。