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イノベーションを生み出すLIXILの企業文化
ジュリア・ダイスター
LIXILのHydrific リーダー | Hydrific CEO兼共同創設者
なぜLIXILに入社しようと思ったのですか?
大きなきっかけとなったのは、学生時代にLIXILのGROHEブランドによる3年間の研修プログラムに参加したことでした。このプログラムは、仕事の実務と授業のカリキュラムが組み合わされており、実際の仕事を体験すると同時に、講義やワークショップなどの研修も受けることができます。私は大学で学士号の勉強をすると同時に、このプログラムによってビジネスの現場からいろいろな実務や考え方を学ぶことができました。ドイツでこのようなプログラムに選ばれるのは毎年全学生の3%で、その1人になれたことを光栄に思っています。
この研修では、3カ月から6カ月ごとに、マーケティング、営業、オペレーション、戦略、M&A、財務といった、複数のグローバルな部門を経験しました。貴重な実践的スキルが身につき、国際市場を深く理解することができたと思っています。プログラムを終えた時にはLIXILが自分のキャリア形成の理想的な出発点になると確信していました。
3年間の研修プログラムを終えた後、LIXILではどのようなキャリアを歩まれましたか?
研修プログラムを終えた2014年、私は最初の仕事として、業界初となる検索エンジンマーケティング(SEM)キャンペーンの立ち上げに携わりました。小さなチームでしたが、とても刺激的な仕事でした。ニューヨークに移り住むことができ、会社が立ち上げた全く新しい部門の一員になれたからです。そして私たちのチームは1年も経たないうちに、サイトを閲覧した人がLIXILの顧客になる転換率(コンバージョンレート)を3倍に伸ばし、Amazonから名誉ある賞を獲得しました。
こうした成功と評価は、LIXILにおける私のキャリアの方向を決める重要な要因となりました。チームに加わった1年後、私はeコマース(電子商取引、EC)サービスを拡大する仕事のマネージャーに抜擢されました。eコマースは、トイレやキッチン設備(システム)を売る販路にはあまり適していないと思われるかもしれませんが、私たちはそこに潜在的な、新しい市場の可能性を感じていました。
小さなチームをAmericas地域で最も早く成長し、最も収益性の高い部門に育て上げました。新入社員の私が、新しい部門をゼロから立ち上げる権限を与えられ、グループのディレクターにまで昇進できたことは、入社した当時は想像もしなかったような展開でした。
2021年、私のキャリアは再び刺激的な展開を見せました。私はeコマース部門を監督するとともに、初めて商品を直接消費者に販売する「ダイレクト・トゥ・コンシューマー (D2C)」チームのリーダーにも選ばれました。その直後、さらに新事業を育てるインキュベーション事業の推進役に任命され、そこでHydrific社の共同設立者となる栄誉を得ました。HydrificはLIXILの新しいベンチャー組織で、節水を楽しく簡単にするための事業を展開しています。そこでは水の使用を最適化するために設計された革新的なスマートホームIoTデバイス「Droplet」を販売し、水の使用を最適化することを目指しています。LIXILでは単に製品を作るだけでなく、持続可能な未来の実現に貢献しており、私は自分の仕事に大きなやりがいを感じています。
LIXILで新たな責任を担いながら、同時にコロンビア大学ビジネススクールでのエグゼクティブMBAの取得をめざす日々は容易なものではありませんでした。とりわけパンデミックという未曾有の難局が厳しさに追い打ちをかけました。しかし、私はこの変化に富んだ1年を通じて、LIXILの経営陣との定期的なやりとりや、ベンチャー育成の機微を知る機会など、貴重な経験を積むことができました。仕事を通じて多くを学び、それが仕事の面白さをさらに高めています。
LIXILにおける私のキャリアは、絶え間ない学びの連続であったと言えるでしょう。その中で、私は個人としてもLIXILの一員としても成長することができています。
これまでに体験した困難、そして乗り越え方を教えてください。
LIXILで最も若いマネージャーの一人になれたことは本当に光栄でしたが、キャリアの初期段階にはそれなりの困難が伴いました。eコマースのチームリーダーに任命されたとき、私は管理職という立場に早く適応し、能力を発揮しなければなりませんでした。自分の価値を証明するために、私はひたすら一生懸命に働くことが必要だと自分に言い聞かせていました。こうした努力と絶え間ない実績があったからこそ、私自身も同僚もお互いに対する考え方が変わり、信頼と尊敬を得ることができたのだと思います。
LIXILは、従業員の個々の才能を見抜き、成長の機会を与えてくれます。若い管理職に大きな責任を任せるという会社の姿勢は、新鮮であり、大きな励みになります。LIXILでは「こうあるべき」という先入観にとらわれず、従業員一人ひとりの長所に応じてチャンスを与えてくれます。
Hydrific はどのようにして生まれましたか?
LIXILは「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」を目指しています。それを実現するために最も重要なのは、企業として常に革新を続けることです。この姿勢はLIXILのCEOである瀬戸欣哉が自ら範を示しています。瀬戸は米国ダートマス大学タックビジネススクール(Tuck)のVijay Govindarajan氏の「スリーボックス・ソリューション」を提唱しています。事業革新をめざす社内の様々な取り組みを共通のフレームワークで推進しようという目的のもと、LIXILはTuckと協同し、「Tuck-LIXILプログラム」を立ち上げました。この取り組みを通して「水の持続可能性の追及」が更なる変化を促進し、新しいビジネスアイデアを発掘するために重要な分野として注目されました。
Hydrificに参画する機会が訪れた時、私はエグゼクティブMBAを修了したばかりで、「これから何をすべきか、どうすればさらに成長できるか」を自問していました。eコマースのエキスパートとしての仕事には満足していましたが、一方で、これまでに経験したことのないHydrificとスタートアップの世界は、とても刺激的に見えました。私自身の価値観に沿って考えれば、社会にインパクトを与える仕事が自分の進むべき道だと感じてはいましたが、次の一歩を踏み出せたのは友人からの貴重なアドバイスがあったからです。彼女はこう言いました。「ジュリア、常に新しい挑戦を受け入れ、自分の殻を破るべきよ。そこにこそ、あなたが最も成長できる可能性があるのだから」彼女の言葉、そして私が誇りを持てる新たな価値を創造する機会を与えてくれたLIXILにはとても感謝しています。
インキュベーション事業の初期段階はどのようなものでしたか?
インキュベーション事業をどう進めるか、具体的なプランがあったわけではありません。当時6人の小さなチームに課せられた仕事は、自分たちの力でプロジェクトを進める道筋を描くことでした。唯一の指針は、水の持続可能な利用方法を切り開くパイオニアになるという使命感だけでした。
創業当時、私たちはカリフォルニアのある機関と緊密に協力し、二人三脚で活動を推進していました。ベンチャー事業を率いることの複雑さや新興企業の立ち上げに関する点について、日々、細かな点まで学ぶことができました。
また、LIXILの経営陣は一貫して私たちのベンチャー事業を支援し、見守ってくれました。経営を熟知した彼らの知識に助けられ、私たちは独自のプロセスを構築し、戦略的思考を発展させ、協力的な雰囲気を醸成することができました。私たちのチームにとってとても心強かったのは、経営陣とベンチャー事業の取締役会の両方から資金調達の承認を得たことです。それは、私たちのビジョン、注ぎ込んだ努力、そしてアイデアが上層部に信任されたということを意味していました。LIXILが私たちに与えくれた大きな信頼やサポートは、LIXILがいかに従業員を支えてくれる会社なのかを示しています。
Hydrificへの異動は期待通りのものでしたか?リーダーシップはどのようなものでしたか?
Hydrificへの異動は、私にとって変革であり、挑戦でもありました。特定の業務に深く没頭し知識を深めていた専門的な役割から、より広い責任を持つ指導的立場に移り、新興企業のCEOのように、営業、マーケティング、財務からHR、オペレーション、研究開発まで、Hydrificのすべての業務を監督しています。自分自身のリーダーシップのあり方も変える必要がありました。現在、個々の業務の細部にまで直接関与するのではなく、各チームメンバーの専門知識を信頼し、積極的に耳を傾け、戦略的に彼らを指導するリーダーシップに徹しています。
私は自信に満ちたリーダーに見えるかもしれませんが、リーダーとして自分のスタイルを確立し、成長に結びつけるマインドセットを身につけたことは、自分自身が進化した結果だと思います。私は、キャロル・ドウェックの著書「マインドセット」から、失敗を恐れず前向きな考え方を持ち続ける方法を学びました。不確実性の中でも動揺しない、というのは多くの人にとって必ずしも自然にできることではありません。以前の私も同じでした。しかし今は、不確実性に向き合うことが最も好きな仕事のひとつになっています。私は成長し、自分を革新し、インパクトを生み出す機会を常に求めています。
LIXILの一員であることをどのように楽しんでいますか?
私がLIXILの一員であることに誇りをもてるのは、LIXILが「正しいことをする」、「敬意をもって働く」、「実験し、学ぶ」のLIXIL Behaviorsを体現している会社だからです。組織はしばしば、その目的や理念を複雑にしすぎることがありますが、私たちの考え方や行動の基盤となるLIXIL Behaviorsは明確かつシンプルで、それゆえ力強さを生み出すことに成功していると思います。
経営陣が私たちのチームに提供してくれる指導や助言にも心から感謝しています。困難な場面でも、上長はとても協力的で、私のリーダーシップのあり方について、参考になるような指導を継続して与えてくれます。解決策を示すのではなく、洞察に満ちた質問を投げ、私が自分なりの答えを見つけるよう促してくれるのです。彼のアプローチは私自身が決断力を養い、チームリーダーとしての自信を築く足がかりとなりました。
指導される側から指導する立場に変わった今、私はチームに責任と自信を持たせることを一番の目標にしています。チームのメンバーに主体的な意思決定を促し、LIXIL Behaviorsに沿ってそれを実行していけば、チーム内の大きな可能性を引き出すことができると信じています。
いま取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。
Hydrificが展開する家庭内での水の使用量をモニターする節水ソリューション「Droplet」が発売され、事業面で大きな進捗がありました。コンセプトの段階から発売まで、全過程を見守ることができ、非常にやりがいを感じています。現在、Dropletが導入された家庭にインパクトを生み出しています。消費者に水の使用に関する即時のデータと洞察を提供することで、生活をより良くする手助けができていることを実感しています。
LIXILでのキャリアをめざしている人に一言お願いします。
LIXILはイノベーション、持続可能性、そしてインパクト(良い影響)を生み出す多様性を重視しています。様々な地域や部門を行き来する多彩なキャリアを実現することが可能です。従業員のスキルを高めるための場を提供するだけでなく、個々の才能を伸ばし、さらに自己啓発を深めることができるよう支援してくれるはずです。