トランプ氏の重要政策法制化、債券市場や予算ルールが壁に
トランプ次期米大統領が掲げる重要政策の法制化に向けた道のりは、就任前から早くも壁に突き当たっている。確かに共和党は立法府と行政府の双方を抑えた。しかし10年ぶりの規模となる税制改正と移民問題、エネルギー政策の全面的見直しを実現する上では、ややこしい予算ルールや議会の機能不全、神経質な国債市場が悩みの種だ。こうしたリスクは8日、残存20年の長期国債利回りが5%前後に急上昇したことでより鮮明になった。全ての政策を抱き合わせて一本化した法案を通そうとすれば、市場の動揺が加速し、共和党の目論見は頓挫する恐れが出てくる。
トランプ氏は今週、共和党幹部との会合で重要政策の法制化について具体的な戦略を策定する見通し。各政策を詰め込んだ一本の大型法案にするか、目玉を2つの法案に分けるかで党指導部の意見は割れている。この法制化戦術を巡ってはバイデン大統領も苦しみ、当初は一本の大型法案を目指したが、結局政策細切れの法制化を余儀なくされた。
問題は時間が限られていることだ。議会は次の選挙まで2年前後しか残されていない。2017年の第1次トランプ政権下で成立した減税措置は今年期限を迎える。さらに悪いことに、市場が大騒ぎして事態をはっきりさせるよう求めている。米連邦準備理事会(FRB)が利下げしているにもかかわらず、国債利回りは上昇。これは、乱暴な公約が米国財政の健全性を一段と損なうのではないかとの懸念を反映した異例の現象と言える。
ジョンソン下院議長がこれらの課題に対処するには、かろうじて過半数という下院における共和党の勢力はあまりにも危なっかしい。ジョンソン氏は、国境警備強化と不法移民強制送還、エネルギー政策関連と税制改正を全て盛り込んだ法案を提出したい考え。一方上院共和党は、移民とエネルギー問題を優先し、その後税制改正に手を付ける作戦を望んでいる。
いずれの戦術もリスクを伴う。共和党の一部議員は財政赤字を出さない法案を要求しつつも、歳入増を狙った増税を考慮することは拒否している。ただ社会保障プログラム予算の削減は政治的な弊害が大きい。また再生エネルギー分野での税控除措置撤回でさえ、党内から反対の声が出ている。とはいえ検討中の減税を全て実行すれば、それに見合う財源を確保しない限り、向こう10年で7兆8000億ドルもの赤字が生じる、とタックス・ファウンデーションは試算する。もしもあれこれ詰め込んで一本化された法案が、財源なしの大盤振る舞いと化せば、債券市場の「反乱」は一段と激しさを増しかねない。そうなると、米国債は世界の金融機能を支える安全で確実な資産という考え自体が、幅広い批判にさらされる危険が出てくる。
状況を複雑にしているのは、上院共和党が単純過半数で可決できるのは歳出・歳入・財政赤字の変更に関する法案だけという厳しい予算ルール(財政調整措置)に従う必要があることだ。それ以外の通常法案可決には、より多くの賛成票(60票)が義務づけられる。この仕組みにより、移民やエネルギー政策の法案を最初に通過させようとすれば、終わりが見えない政治的対立を招いてもおかしくない。
第1次トランプ政権は、大型減税を成立させるという実績を残せた。今回それ以上の成果を生み出せるかどうかは、今後数週間で決める重要政策法制化の戦略次第になりそうだ。
●背景となるニュース
*トランプ次期米大統領と議会共和党指導部は、20日の政権発足を前に重要政策の法制化戦略を練っている。スーン上院院内総務は、まず移民問題に注力し、その後減税に取り組む2段階アプローチを提唱。ジョンソン下院議長は、できる限り多くの重要政策を詰め込んだ一本の法案の提出を主張している。トランプ氏は双方の戦術ともにメリットがあると認識しているが、今のところどちらを選択するかは決めていない。
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