ことし最後の重要イベント!12月利上げ見送りなら「トランプリスク」不可避&円安加速?【日銀会合プレビュー】
国内市場にとってことし最後の重要イベントが、日銀による12月18~19日の金融政策決定会合だ。19日昼頃に決定内容を発表し、午後に植田和男総裁が記者会見する予定。
焦点は、ことし3度目となる政策金利の利上げに踏み切るか、年明けに持ち越すか。「円安=株高」のセオリーを踏まえると、12月利上げなら「円高→株安」に振れるため一見ネガティブに見えるが、25年を展望すると、いずれは避けて通れない“悪材料”を年内に消化した方がポジティブと捉えることもできる。各社報道では12月の利上げ見送りがメインシナリオになっているようだが、12月に利上げが見送られた場合、複数のリスクが浮上することも想定される。
焦点は、ことし3度目となる政策金利の利上げに踏み切るか、年明けに持ち越すか。「円安=株高」のセオリーを踏まえると、12月利上げなら「円高→株安」に振れるため一見ネガティブに見えるが、25年を展望すると、いずれは避けて通れない“悪材料”を年内に消化した方がポジティブと捉えることもできる。各社報道では12月の利上げ見送りがメインシナリオになっているようだが、12月に利上げが見送られた場合、複数のリスクが浮上することも想定される。
12月見送りなら「利上げリスク」越年
前回10月の会合が開かれた前後は、12月の利上げが市場のメインシナリオになっていた。10月会合後の記者会見で植田総裁は利上げ判断に関して、9月会合時に用いた「時間的な余裕がある」という表現を「今後、使わないことになる」と語り、利上げ時期が迫っているとの印象を与えた。さらに11月30日付の日本経済新聞へのインタビューで、利上げ時期について「経済データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいていると言える」と述べ、「12月利上げに向けた地ならし」とも受け取られた。
ところがその後、12月利上げ観測は急速に後退した。ブルームバーグは12月9日、日銀の氷見野良三副総裁が25年1月の金融政策決定会合前に異例の懇談会を開くことに触れ、「市場の1月利上げ観測を高める可能性がある」と報道。さらに11日、日銀は「追加利上げを急ぐ状況にはない」「1月以降に利上げを先送りした場合も大きなコストは伴わない」との認識だとも報じた。背景には、17~18日に開かれる米FOMCで0.25%の利下げが確実視されており、円安圧力への懸念が弱まっていることがある。為替レートは、12月利上げ見送り観測が報道されて以降は円安に振れているものの、現時点では1ドル=153円台程度にとどまっている。
ブルームバーグが5~10日に行った52人へのエコノミスト調査では、利上げ時期は1月との予想が52%で、12月は44%だった(12日付ブルームバーグ)。13日時点での金利スワップ市場の値動きをもとに東短リサーチなどが算出した利上げ確率は、12月会合は15%前後、1月が56%(13日付日本経済新聞)という。
12月の利上げが見送られた場合、株式市場に影響する「利上げリスク」が25年に持ち越されることになる。
前回10月の会合が開かれた前後は、12月の利上げが市場のメインシナリオになっていた。10月会合後の記者会見で植田総裁は利上げ判断に関して、9月会合時に用いた「時間的な余裕がある」という表現を「今後、使わないことになる」と語り、利上げ時期が迫っているとの印象を与えた。さらに11月30日付の日本経済新聞へのインタビューで、利上げ時期について「経済データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいていると言える」と述べ、「12月利上げに向けた地ならし」とも受け取られた。
ところがその後、12月利上げ観測は急速に後退した。ブルームバーグは12月9日、日銀の氷見野良三副総裁が25年1月の金融政策決定会合前に異例の懇談会を開くことに触れ、「市場の1月利上げ観測を高める可能性がある」と報道。さらに11日、日銀は「追加利上げを急ぐ状況にはない」「1月以降に利上げを先送りした場合も大きなコストは伴わない」との認識だとも報じた。背景には、17~18日に開かれる米FOMCで0.25%の利下げが確実視されており、円安圧力への懸念が弱まっていることがある。為替レートは、12月利上げ見送り観測が報道されて以降は円安に振れているものの、現時点では1ドル=153円台程度にとどまっている。
ブルームバーグが5~10日に行った52人へのエコノミスト調査では、利上げ時期は1月との予想が52%で、12月は44%だった(12日付ブルームバーグ)。13日時点での金利スワップ市場の値動きをもとに東短リサーチなどが算出した利上げ確率は、12月会合は15%前後、1月が56%(13日付日本経済新聞)という。
12月の利上げが見送られた場合、株式市場に影響する「利上げリスク」が25年に持ち越されることになる。
最大の「利上げリスク」は利上げそのものより「予見性」の無さ
24年8月の「令和のブラックマンデー」は、利上げの最大の「リスク」は、利上げそのものの影響よりも「どれだけ市場が利上げの可能性を予見できていたか」だということを実証した。
足元のマクロ指標は日銀の「オントラック(想定通り)」といえ、仮に日銀が12月に利上げを決定したとしても、市場の納得感を得られるだけのデータが揃っている。それだけに、逆に12月に利上げをしなかった場合、「マクロ指標が好調→利上げ」という構図が崩れる可能性がある。そうなると、1月以降は、マクロ指標を基にした利上げの「予見」が難しくなることも想定される。
直近のマクロ指標では、総務省が11月29日に発表した11月の東京都区部の消費者物価指数(速報)は、生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月比で2.2%上昇となり、2カ月ぶりに2%台を回復した。日銀が12月11日に発表した11月の企業物価指数(速報)も、前年同月比3.7%上昇と3カ月連増で上昇率を伸ばし、23年7月の3.6%上昇以来の上昇率となっている。
植田総裁が最も重視する賃金動向は、12月6日に厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計調査(速報)での実質賃金が前年同月比0.0%と、3カ月ぶりにマイナスを脱した。名目賃金は2.6%増だった。
さらに、日銀が13日に発表した12月の短観(全国企業短期経済観測調査)では、業況判断指数(DI)が前回の9月の14から15へと、わずかに改善した。
24年8月の「令和のブラックマンデー」は、利上げの最大の「リスク」は、利上げそのものの影響よりも「どれだけ市場が利上げの可能性を予見できていたか」だということを実証した。
足元のマクロ指標は日銀の「オントラック(想定通り)」といえ、仮に日銀が12月に利上げを決定したとしても、市場の納得感を得られるだけのデータが揃っている。それだけに、逆に12月に利上げをしなかった場合、「マクロ指標が好調→利上げ」という構図が崩れる可能性がある。そうなると、1月以降は、マクロ指標を基にした利上げの「予見」が難しくなることも想定される。
直近のマクロ指標では、総務省が11月29日に発表した11月の東京都区部の消費者物価指数(速報)は、生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月比で2.2%上昇となり、2カ月ぶりに2%台を回復した。日銀が12月11日に発表した11月の企業物価指数(速報)も、前年同月比3.7%上昇と3カ月連増で上昇率を伸ばし、23年7月の3.6%上昇以来の上昇率となっている。
植田総裁が最も重視する賃金動向は、12月6日に厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計調査(速報)での実質賃金が前年同月比0.0%と、3カ月ぶりにマイナスを脱した。名目賃金は2.6%増だった。
さらに、日銀が13日に発表した12月の短観(全国企業短期経済観測調査)では、業況判断指数(DI)が前回の9月の14から15へと、わずかに改善した。
12月見送りなら「トランプリスク」が不可避に
市場では25年1月の利上げがメインシナリオになっているが、一部では1月の利上げは困難との見方もある。
1月の会合は23~24日を予定しているが、開催3日前の1月20日は、トランプ氏の大統領就任日に当たる。「タリフマン(関税男)」を自認するトランプ氏は「就任初日は独裁者になる」と予告しており、メキシコとカナダの全ての輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加の関税を課す意向を示している。選挙期間中は全ての輸入品に10~20%、中国からは60%の関税をかけるとも主張していた。
植田総裁は前出の11月30日付日本経済新聞のインタビューで、利上げの時期が「近づいていると言える」と述べたのに続けて、「ただ米国の経済政策の先行きがどうなるか、大きなクエスチョンマークがある。当面、どういうものが出てくるか確認したい。例えば(トランプ次期大統領から)関税の話が出てきているが、どうなるか見極めが必要だ」と語っている。植田総裁の発言を『利上げはトランプ大統領の経済政策の影響が確認できた後に行う』と解釈すれば、トランプ大統領の就任初日が予想以上の平穏に終わらない限り、1月会合で利上げに踏み切る可能性は低いことになる。1月に利上げできない事態になっていた場合、株式市場は「トランプリスク」と日銀の「利上げリスク」の両方を抱えこむことが想定される。
市場では25年1月の利上げがメインシナリオになっているが、一部では1月の利上げは困難との見方もある。
1月の会合は23~24日を予定しているが、開催3日前の1月20日は、トランプ氏の大統領就任日に当たる。「タリフマン(関税男)」を自認するトランプ氏は「就任初日は独裁者になる」と予告しており、メキシコとカナダの全ての輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加の関税を課す意向を示している。選挙期間中は全ての輸入品に10~20%、中国からは60%の関税をかけるとも主張していた。
植田総裁は前出の11月30日付日本経済新聞のインタビューで、利上げの時期が「近づいていると言える」と述べたのに続けて、「ただ米国の経済政策の先行きがどうなるか、大きなクエスチョンマークがある。当面、どういうものが出てくるか確認したい。例えば(トランプ次期大統領から)関税の話が出てきているが、どうなるか見極めが必要だ」と語っている。植田総裁の発言を『利上げはトランプ大統領の経済政策の影響が確認できた後に行う』と解釈すれば、トランプ大統領の就任初日が予想以上の平穏に終わらない限り、1月会合で利上げに踏み切る可能性は低いことになる。1月に利上げできない事態になっていた場合、株式市場は「トランプリスク」と日銀の「利上げリスク」の両方を抱えこむことが想定される。
利上げ見送りなら円安加速→「為替リスク」の懸念
仮に12月に利上げを見送った場合に重要になるのは、日銀が見送りの理由をどう説明するかだ。12月の利上げの可能性が低いとの観測が報道されたことで、既にドル円レートは5円ほど円安に振れている。日銀会合の内容や植田総裁の発言が、日銀が利上げに消極的、もしくは利上げ時期が遠のいたと市場に受け止められると、一気に円安に加速する可能性がある。さらに米FOMCで25年の米国の利下げペースが減速すると見通しが強まった場合は、円安加速を阻止するには利上げに対する踏み込んだ発言が求められることも想定される。
急速な円安も為替リスクだが、急速な円安に対して、物価高に神経質な政府による為替介入や介入への思惑に伴う円高急転リスクは、それ以上の為替リスクといえる。令和のブラックマンデーは、急速な円高による海外ヘッジファンドらの円キャリー取引の急速な巻き戻しが大きな要因になった。
今回はトランプ政権の為替に対するスタンスが明確でないという点でも、「為替リスク」は大きくなっているといえる。
仮に12月に利上げを見送った場合に重要になるのは、日銀が見送りの理由をどう説明するかだ。12月の利上げの可能性が低いとの観測が報道されたことで、既にドル円レートは5円ほど円安に振れている。日銀会合の内容や植田総裁の発言が、日銀が利上げに消極的、もしくは利上げ時期が遠のいたと市場に受け止められると、一気に円安に加速する可能性がある。さらに米FOMCで25年の米国の利下げペースが減速すると見通しが強まった場合は、円安加速を阻止するには利上げに対する踏み込んだ発言が求められることも想定される。
急速な円安も為替リスクだが、急速な円安に対して、物価高に神経質な政府による為替介入や介入への思惑に伴う円高急転リスクは、それ以上の為替リスクといえる。令和のブラックマンデーは、急速な円高による海外ヘッジファンドらの円キャリー取引の急速な巻き戻しが大きな要因になった。
今回はトランプ政権の為替に対するスタンスが明確でないという点でも、「為替リスク」は大きくなっているといえる。
国内にも政治要因
日銀による利上げ判断に関する政治の影響は、トランプ政権になる米国のみならず国内からも受ける可能性がある。
補正予算案に賛成し、自公連立政権と「部分連合」している国民民主党は、玉木雄一郎代表が利上げに慎重な姿勢を示している。玉木代表は11月1日にブルームバーグへのインタビューで「物価上昇プラス2%の名目賃金上昇率が安定的に達成するまでは金融緩和と積極財政をやるべきだ」と語り、3月まで利上げを「すべきではない」と発言。同日のロイター通信に対しては「向こう半年は利上げを急ぐべきではない」とも語っている。
仮に12月に利上げを見送った際に、日銀の判断に国内の政治要因も加わっていると市場が受け止めた場合、次回の利上げ時期に関する「予見」はさらに難しくなるだろう。
日銀による利上げ判断に関する政治の影響は、トランプ政権になる米国のみならず国内からも受ける可能性がある。
補正予算案に賛成し、自公連立政権と「部分連合」している国民民主党は、玉木雄一郎代表が利上げに慎重な姿勢を示している。玉木代表は11月1日にブルームバーグへのインタビューで「物価上昇プラス2%の名目賃金上昇率が安定的に達成するまでは金融緩和と積極財政をやるべきだ」と語り、3月まで利上げを「すべきではない」と発言。同日のロイター通信に対しては「向こう半年は利上げを急ぐべきではない」とも語っている。
仮に12月に利上げを見送った際に、日銀の判断に国内の政治要因も加わっていると市場が受け止めた場合、次回の利上げ時期に関する「予見」はさらに難しくなるだろう。
ーmoomooニュースMark
出所:日銀・総務省・厚生労働省HP、日本経済新聞、Bloomberg、ロイター通信
出所:日銀・総務省・厚生労働省HP、日本経済新聞、Bloomberg、ロイター通信
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