中国バイオ企業に賭ける世界の医薬品大手-トランプ次期政権が変数に
2024年12月3日 16:29 JST
医薬品でディールメーキング、中国と欧米の数少ない協力分野に
「特許の崖」見据える製薬大手、新薬探しで中国に熱視線
地政学的緊張による影響が半導体や電気自動車(EV)などの業界に広がる中、医薬品を巡るディールメーキングは中国と欧米の協力が進む数少ない分野となっている。トランプ次期米政権の発足後にこうした状況がどう変わるのか、業界関係者は固唾(かたず)をのんで見守っている。
医薬品でディールメーキング、中国と欧米の数少ない協力分野に
「特許の崖」見据える製薬大手、新薬探しで中国に熱視線
地政学的緊張による影響が半導体や電気自動車(EV)などの業界に広がる中、医薬品を巡るディールメーキングは中国と欧米の協力が進む数少ない分野となっている。トランプ次期米政権の発足後にこうした状況がどう変わるのか、業界関係者は固唾(かたず)をのんで見守っている。
ディールフォーマによると、今年これまでに製薬大手7社が中国由来の新薬向け分子を巡るライセンス契約や取得に踏み切り、少なくとも計31億5000万ドル(約4730億円)相当の前払い金と資本を投じた。また、ダイヤモンドの原石を見つけるべく、現地でプレゼンスを高めている企業もある。
スティーフル・ファイナンシャルの投資銀行部門が10月に公表したリポートによれば、医薬品大手各社の研究開発(R&D)責任者はここ1年で少なくとも一度は中国を訪れた。
アッヴィやブリストル・マイヤーズスクイブは上海で現地企業との会合のため、パートナリングデーを開催する一方、ロシュ・ホールディングやバイエル、イーライリリーなどは創業から間もないスタートアップとの関係構築でインキュベーターを開設済み、あるいは今後設けることにしている。また、ファイザーは広く注目を集めた最近の博覧会で、今後5年で中国に10億ドルを投資すると発表した。
スティーフル・ファイナンシャルの投資銀行部門が10月に公表したリポートによれば、医薬品大手各社の研究開発(R&D)責任者はここ1年で少なくとも一度は中国を訪れた。
アッヴィやブリストル・マイヤーズスクイブは上海で現地企業との会合のため、パートナリングデーを開催する一方、ロシュ・ホールディングやバイエル、イーライリリーなどは創業から間もないスタートアップとの関係構築でインキュベーターを開設済み、あるいは今後設けることにしている。また、ファイザーは広く注目を集めた最近の博覧会で、今後5年で中国に10億ドルを投資すると発表した。
米欧の製薬大手が中国の研究開発プロバイダーから遠ざかったり、中国向けに特化した生産施設を同国国内に設けたりする中でも、バイオテクノロジーを巡る取引は西側の医薬品メーカーにとって見逃すわけにはいかなくなるほど魅力的になっている。
ロシュのアジア・新興国パートナリング活動責任者を務めたダレン・ジ氏は「これほど多くの多国籍企業が中国に来て国内を探し回っているのは見たことがない」と話す。
中国は外資系製薬会社のアウトソーシング拠点として、そしてすでに市場に出回っている既存薬と構造がほとんど変わらない「me too」医薬品の生産国として、長い歴史を持っている。だが、一部の最先端産業を支援する政府の取り組みもあり、今では全く新しい治療薬を巡る重要な猟場になりつつある。
アストラゼネカでオンコロジー研究の責任者を務め、20年にわたり新薬発掘を目的に中国を訪れているスーザン・ガルブレイス氏は、「真のイノベーションが見えてきている」と指摘。中国の学習と適応のペースについて「正直なところ、世界のどこよりも速いのではないか」と話す。
アストラゼネカでオンコロジー研究の責任者を務め、20年にわたり新薬発掘を目的に中国を訪れているスーザン・ガルブレイス氏は、「真のイノベーションが見えてきている」と指摘。中国の学習と適応のペースについて「正直なところ、世界のどこよりも速いのではないか」と話す。
製薬大手にとって、規模が小さめのバイオテクノロジー企業から資産を買い取るのは日常茶飯事だ。医薬品メーカーの研究部門は独自の分子を開発するが、パイプラインを埋めるために他社の発見にも目を向け、会社全体を買収することもある。
大手製薬会社ががんや炎症性疾患などの治療薬について2030年までの特許切れを見据えている現在、ポートフォリオの補充が特に必要となっている。いわゆる「特許の崖」によって、1800億-3600億ドル相当の年間売上高が脅かされる可能性があるとアナリストらは試算する。一部の医薬品大手幹部は、少なくとも年間10億ドルの売り上げをもたらす可能性のあるブロックバスターに軸足を置いている。
中国の新薬候補試験で得られた有望な初期データが、より大規模なグローバル試験でも再現できるかどうかについては疑問が残る。また、再現できたとしてもこうした分子化合物が市場に届くまでには数年かかる可能性もある。
だが、世界の医薬品メーカーは中国の科学がその価値を証明するのは時間の問題だとみている。
中国の新薬候補試験で得られた有望な初期データが、より大規模なグローバル試験でも再現できるかどうかについては疑問が残る。また、再現できたとしてもこうした分子化合物が市場に届くまでには数年かかる可能性もある。
だが、世界の医薬品メーカーは中国の科学がその価値を証明するのは時間の問題だとみている。
スティーフルのマネジングディレクター、ティム・オプラー氏は「10年前、中国企業はジェネリックの類似品を開発しており、正しい成分を含んでいないことさえ懸念されていた。中国製のアスピリンを買っても、それはアスピリンではなかったかもしれない」と指摘。「それから10年、中国企業は米国のベストなバイオテクノロジー企業に引けを取らない本当に優れた分子を開発している」と語る。
ブルームバーグが取材した企業は、貿易摩擦があってもディールメーキング計画は変更していないと回答した。しかし、バイデン政権下で醸成され始めたデカップリング(切り離し)の脅威はトランプ次期政権でも緩和しそうにない。
ロシュのトーマス・シネッカー最高経営責任者(CEO)は「地政学的な緊張を高めるようなことは何であれ良いことではない」とし、サプライチェーンに混乱が生じる恐れがあると指摘。「これは医薬品業界だけの問題ではなく、世界全体の問題だ」と述べた。
ブルームバーグが取材した企業は、貿易摩擦があってもディールメーキング計画は変更していないと回答した。しかし、バイデン政権下で醸成され始めたデカップリング(切り離し)の脅威はトランプ次期政権でも緩和しそうにない。
ロシュのトーマス・シネッカー最高経営責任者(CEO)は「地政学的な緊張を高めるようなことは何であれ良いことではない」とし、サプライチェーンに混乱が生じる恐れがあると指摘。「これは医薬品業界だけの問題ではなく、世界全体の問題だ」と述べた。
終わり
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