エヌビディア「1強」終焉へ?ブロードコム好決算で4割急騰!カスタムAI半導体需要は大幅拡大見通し
エヌビディア「1強」の時代は終焉に向かっているのか?ここ2日間の米国株市場では、そのような疑問が上がっている。
きっかけは、AI半導体No.2の $ブロードコム (AVGO.US)$ が12月12日(金)に好決算を発表した後、2日間で38.4%急騰したのに対し、シェアNo.1の $エヌビディア (NVDA.US)$ は3.9%下落したからだ。ブロードコムはカスタムAI半導体の好調を支えに、今後3年間のAI収益について強気な見通しを示し、買いが膨らんだ。
ブロードコムの躍進は、エヌビディア「1強」を脅かすことになるだろうか。それを探るため、AI半導体をめぐる競争の構造を確認したうえ、エヌビディアとブロードコムの主要顧客、AI半導体収益や業績見通し、株価バリュエーションなどを総点検する。
足元でAI半導体株に明暗
足元でAI半導体株が好調だが、これまでとは違う景色となっている。それは、けん引役が王者のエヌビディアではなく、競合のブロードコムであることだ。
足元でAI半導体株が好調だが、これまでとは違う景色となっている。それは、けん引役が王者のエヌビディアではなく、競合のブロードコムであることだ。
ブロードコムは12月12日の決算でカスタムAI半導体について強気な見通しを示し、2日間で株価が38.4%急騰した。それに対し、エヌビディアは3.9%下落した。ブロードコムはAI半導体市場において断トツ1位のエヌビディアには遠く及ばずシェア2位だが、カスタムAI半導体ではシェア1位となっている。
半導体株の代表的な指数であるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)構成銘柄の騰落率を確認してみると、ブロードコムに次いで上昇率が高かったのは、ブロードコムと同じくカスタムAI半導体を手掛ける $マーベル・テクノロジー・グループ (MRVL.US)$ (14.5%上昇)、AI半導体メモリーを製造する $マイクロン・テクノロジー (MU.US)$ (10.2%上昇)、カスタムAI半導体のテスト装置市場で高いシェアと持つ $テラダイン (TER.US)$ (7.1%上昇)、AI半導体の受託生産で世界首位の $台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング (TSM.US)$ (5.6%上昇)となっている。
一方、エヌビディアと同様に下落した銘柄は、アナリストが投資判断を引き下げた $マイクロチップ・テクノロジー (MCHP.US)$ (3.9%下落)のほか、エヌビディアと同じく”汎用”(後述)AI半導体を手掛ける $アドバンスト・マイクロ・デバイシズ (AMD.US)$ (3.0%下落)だった。
したがって、ここ2日間の株価パフォーマンスは、”カスタム”AI半導体関連株>AI半導体市場全般に関わる銘柄>”汎用”AI半導体関連株の順となっていると言える。AI半導体をめぐる競争の構造とブロードコムの決算内容が明暗を分かれた要因とみられる。
AI半導体をめぐる競争の構造
●AI半導体市場全体
エヌビディア「1強」の構図、エヌビディアの市場シェアは現在8-9割とされている。
◇うち”汎用”(※)AI半導体
シェア1位がエヌビディア、次いで2位はAMD
◇うち”カスタム”(※)AI半導体
シェア1位がブロードコム、次いで2位はマーベル・テクノロジー
●AI半導体市場全体
エヌビディア「1強」の構図、エヌビディアの市場シェアは現在8-9割とされている。
◇うち”汎用”(※)AI半導体
シェア1位がエヌビディア、次いで2位はAMD
◇うち”カスタム”(※)AI半導体
シェア1位がブロードコム、次いで2位はマーベル・テクノロジー
(※AI半導体市場では、エヌビディアやAMDが開発しているものに対し、顧客の特定用途やニーズに合わせて開発したカスタムAI半導体がある。現時点では前者の規模がはるかに大きく、エヌビディアの存在感が圧倒的に高いが、カスタムAI半導体に対する需要も急拡大している。本レポートでは、カスタムAI半導体と区別するため、エヌビディアやAMDが開発しているものについて便宜上、”汎用”AI半導体とする。)
AI半導体市場はエヌビディアが8-9割のシェアを有しているとされており、「1強」の構図が鮮明だ。エヌビディアのライバルとしてこれまで最も有力視されてきたのは、エヌビディアと同じく”汎用”AI半導体を開発しているAMDだった。AMDは10月末の決算発表で、AI半導体の今年の売上高見通しを従来の45億ドルから50億ドルに上方修正した。しかし、その水準は投資家に期待に届かず、エヌビディアにもはるかに及ばなかった。
一方、”カスタム”AI半導体を開発しているブロードコムは12月12日に、市場予想を大幅に上回る見通しを示した。ブロードコムは2024年度のAI収益が122億ドルに急拡大(前年度の3.2倍)しただけでなく、今後3年間について強気な見通しを示した。ブロードコムこそがエヌビディアにとって最有力のライバルになり得るかもしれないと示唆された。
エヌビディアとブロードコムの主要顧客
Bloombergのサプライチェーン機能を用いて、エヌビディアとブロードコムの主要販売先を確認してみると、下記の通りとなった。
Bloombergのサプライチェーン機能を用いて、エヌビディアとブロードコムの主要販売先を確認してみると、下記の通りとなった。
両社共通の顧客には、 $マイクロソフト (MSFT.US)$ 、 $メタ・プラットフォームズ (META.US)$ 、 $アルファベット クラスA (GOOGL.US)$ 、 $デル・テクノロジーズ (DELL.US)$ が入っている。テック企業の中で顧客としての違いは、エヌビディアの主要顧客に $アマゾン・ドットコム (AMZN.US)$ と $テスラ (TSLA.US)$ が入っているのに対し、ブロードコムには入っておらず、代わりに $アップル (AAPL.US)$ が主要顧客となっている。ブロードコムの最大顧客が半導体商社(※)であることを踏まえると、アップルはテック大手としてブロードコムの最大顧客となる。
(※ブロードコムの最大顧客としてリストに入っている台湾企業・文曄科技は半導体商社大手として、主に中国やアジア向けの販売を担う。)
アップルに次いでブロードコムの主要顧客になっているアルファベットとメタは、ブロードコムとパートナーシップ関係にある。両社はエヌビディアから大量なAI半導体を購入していると同時に、ブロードコムにカスタムAI半導体を注文している。今回のブロードコムの決算では、その規模が市場予想を上回っていると示された。
ブロードコムの決算内容
◇2024年度8-10月期:AIネットワーキングの売上高は前年同期より158%増加した。主に、3つのハイパースケール向けAIアクセラレータの出荷が倍増したことと、AI接続製品の収益が4倍に増加したことによるものだった。
◇2024年度8-10月期:AIネットワーキングの売上高は前年同期より158%増加した。主に、3つのハイパースケール向けAIアクセラレータの出荷が倍増したことと、AI接続製品の収益が4倍に増加したことによるものだった。
◇2024年度通期:売上高は過去最高を記録した。AI製品が好調だったほか、買収したVMware(仮想化ソフトウェアのリーダー)も業績拡大に貢献した。カスタムAI半導体とネットワークを含むAI収益は122億ドルとなり、2023年度の38億ドルから3.2倍に拡大した。AI収益が半導体ソリューション部門の売上高に占める比率は、5年前の5%未満から41%に拡大した。
◇今後3年間の見通し:「2027年度には、3つのハイパースケール各社が単一のファブリックに100万個の半導体クラスターを展開する計画となっている。これにより、AI半導体とネットワークを含むAI収益のSAM(獲得しうる市場規模)は、2024年度の150~200億ドルから2027年度には600億ドル~900億ドルになると予測している。」(決算説明会でのCEOコメントより)
AI収益の獲得しうる市場規模が最大900億ドルに上る見込みとなったことが、ブロードコムの株価急騰につながった。この水準は市場予想を上回っている。同時に、ブロードコムが示した予測値は、ハイパースケーラー3社顧客のロードマップに基づいた予測値となっている。エヌビディアの顧客でもあるハイパースケーラーのカスタムAI半導体に対する需要は非常に強いことが示された。
”汎用”AI半導体 vs "カスタム”AI半導体
今回のエヌビディアvsブロードコムの構図は、”汎用”AI半導体vs"カスタムAI半導体の構図と言えよう。
今回のエヌビディアvsブロードコムの構図は、”汎用”AI半導体vs"カスタムAI半導体の構図と言えよう。
AI向けに莫大な投資を行っているハイパースケーラーが”汎用”AI半導体と"カスタム”AI半導体を両方購入しているのは、それぞれメリットとデメリットがあるためと考えられる。
エヌビディアのAI半導体は性能面で圧倒的にリードしており、AIレースに勝ち抜くことを願っているハイパースケーラーにとって”喉から手が出る”ほど欲しいものとなっている。ただ、エヌビディアの製品は高性能がゆえに高価で、かつ需給ひっ迫が続いているため、ハイパースケーラーは「買いたい分を買えない」状態にある。テスラのイーロン・マスクCEOがエヌビディアのAI半導体について「麻薬よりも入手困難」と発言したことがあるほどだ。
ハイパースケーラーがカスタムAI半導体に注目した理由は、自社の特定用途やニーズに合わせて開発できるうえ、価格はより安価に抑えることができるためと考えられる。それほど高性能じゃない場面に使用するAI半導体については、カスタムAI半導体を活用すれば、全体的にはコストダウンにつながる。
ハイパースケーラーが”汎用”AI半導体と"カスタムAI半導体にどのように資金を振り分けしている(する予定)なのかは不明だが、ブロードコムが示した市場規模の予測値は、"カスタム”AI半導体の成長率がこれまでの市場予想を上回る可能性があることを示した。たとえば、ブロードコムの決算発表前までは"カスタム”AI半導体の市場規模は2028年におよそ400億ドルに達する可能性があると予想されていた。しかし、ブロードコムは2027年度にはすでに600億~900億ドルに達するだろうと予測している。
なお、エヌビディアは11月20日の決算で、ハイパースケーラーのエヌビディア製AI半導体に対する需要は依然として「クレージー」だと示した。
エヌビディアとブロードコム
●AI収益の売上比率と成長率
(直近四半期の8-10月期)
エヌビディアのAI半導体の売上高は、コンピュートとネットワーキングからなるデータセンター部門に計上される。データセンター部門の売上高構成比は2024年8-10月期に88%に拡大した。データセンター部門の増収率は直前年同期比で112%、うちコンピュートは158%となっている。過去数四半期に比べると、伸び率が鈍化しているが、依然として高水準にある。
●AI収益の売上比率と成長率
(直近四半期の8-10月期)
エヌビディアのAI半導体の売上高は、コンピュートとネットワーキングからなるデータセンター部門に計上される。データセンター部門の売上高構成比は2024年8-10月期に88%に拡大した。データセンター部門の増収率は直前年同期比で112%、うちコンピュートは158%となっている。過去数四半期に比べると、伸び率が鈍化しているが、依然として高水準にある。
ブロードコムの場合、カスタムAI半導体の売上高は半導体ソリューション部門のネットワーキングに計上される。半導体ソリューション部門は2024年8-10月期に売上高全体の59%、ネットワーキングは31%を占める。したがって、売上高構成比に占めるAI収益はエヌビディアのほうがはるかに高い。つまり、AI収益による業績全体への貢献および影響はエヌビディアのほうが高い。
AI収益の規模をみた場合、ブロードコムのカスタムAI半導体とAIネットワーキング製品を合計しており、その規模はざっくりいうと、エヌビディアの1/10程度と試算される(8-10月期のブロードコムのAI収益は37億ドルだった)。ただし、成長率でみた場合、ブロードコムのAI収益は前年同期比で150%増加しており、エヌビディアのデータセンター部門のコンピュートの増収率(158%)には及ばないものの、ネットワーキングを加えたデータセンター部門全体の増収率(112%)を上回る。
●今後3年間の業績見通し
ブロードコムが決算発表後に急騰したのは、直近の業績もさることながら、今後3年間のAI収益について強気な見通しを示したためだ。ブロードコムはカスタムAI半導体とAIネットワーキング製品のSAM(獲得しうる市場規模)は、2024年度の150~200億ドルから2027年度には600億ドル~900億ドルになると予測している。これはアナリストたちの従来予想を上回っていたため、多くのアナリストがブロードコムの業績予想を上方修正した。
ブロードコムが決算発表後に急騰したのは、直近の業績もさることながら、今後3年間のAI収益について強気な見通しを示したためだ。ブロードコムはカスタムAI半導体とAIネットワーキング製品のSAM(獲得しうる市場規模)は、2024年度の150~200億ドルから2027年度には600億ドル~900億ドルになると予測している。これはアナリストたちの従来予想を上回っていたため、多くのアナリストがブロードコムの業績予想を上方修正した。
上方修正を反映したブロードコムの業績見通しとエヌビディアの業績見通しは、下記のグラフ通りだ。
増収率や調整後EPS(1株当たり利益)の成長率でみた場合、絶対値では各年度ともエヌビディアのほうが圧倒的に高い。AI収益の売上比率の違いによるものと言えよう。ただ、ブロードコムはAI収益の拡大により、2025年度の調整後EPSの伸び率が前年度を上回る見通しとなっている。
●バリュエーション(株価水準)
株価水準を確認してみると、ブロードコムは足元の急騰により、エヌビディアよりやや割高感が出ているようだ。過去5年平均の株価水準と比較した際も、エヌビディアの方が割安と言えそうだ。ブロードコムの場合、過去5年平均値にはAI収益に対する高い期待が含まれていないと想定されるため、過去5年平均と単純比較するのは妥当でないかもしれない。ブロードコムの足元のバリュエーションは今後の業績期待を反映していると言えよう。
株価水準を確認してみると、ブロードコムは足元の急騰により、エヌビディアよりやや割高感が出ているようだ。過去5年平均の株価水準と比較した際も、エヌビディアの方が割安と言えそうだ。ブロードコムの場合、過去5年平均値にはAI収益に対する高い期待が含まれていないと想定されるため、過去5年平均と単純比較するのは妥当でないかもしれない。ブロードコムの足元のバリュエーションは今後の業績期待を反映していると言えよう。
●平均目標株価との乖離率
ブロードコムが好決算を発表した後、大多数のアナリストが同社の目標株価を引き上げた。ただし、2日間で株価が4割近く上昇したため、平均目標株価との乖離率はマイナスになっている。それに対し、エヌビディアは足元で株価が軟調だったため、平均目標株価との乖離率は3割超となっている。両社に対する投資判断については、いずれも「買い」を推奨しているアナリストが圧倒的に多い。
ブロードコムが好決算を発表した後、大多数のアナリストが同社の目標株価を引き上げた。ただし、2日間で株価が4割近く上昇したため、平均目標株価との乖離率はマイナスになっている。それに対し、エヌビディアは足元で株価が軟調だったため、平均目標株価との乖離率は3割超となっている。両社に対する投資判断については、いずれも「買い」を推奨しているアナリストが圧倒的に多い。
なお、ここ2日間の機関投資家の売買動向を確認してみると、エヌビディア株のポジションを少し減らしたファンドが多かったのに対し、ブロードコムについてはポジションを増やしたファンドのほうが多かった(Bloomberg端末より)。王者のエヌビディアについては過去2年間で業績拡大と株高が続いたため、多くの機関投資家はエヌビディア株をある程度保有しているのに対し、比較的”新星”のブロードコムについては保有比率がそれほど高くなかった可能性があるためと考えられる。投資家の売買動向を予想することは難しいが、今後は需給も両社の株価に影響を与える可能性がありそうだ。
総合的にみると、 $エヌビディア (NVDA.US)$ 「1強」の時代はまだ続くと予想されるが、 $ブロードコム (AVGO.US)$ の決算からは今後は「2強」時代へ向かう可能性があると示唆された。AI投資ブームにおいて、これまではエヌビディアだけ大きな恩恵を享受してきたが、今後は両社とも恩恵を受けることとなりそうだ。多くのアナリストが 両社を同時に、有望なAI半導体株に挙げる所以であると考えられる。
ブロードコムの決算まとめについては、「AI半導体No.2のブロードコムが14%急騰!AI収益は2027年度に4倍に拡大?」を参照されたい。
24年12月17日作成 マーケットアナリスト Julie
出所:会社資料およびBloombergよりmoomoo証券作成
出所:会社資料およびBloombergよりmoomoo証券作成
免責事項:このコンテンツは、Moomoo Technologies Incが情報交換及び教育目的でのみ提供するものです。
さらに詳しい情報
コメント
サインインコメントをする
浜っコ : 2026までの売上げ成長率はブロコムよりマーベルの方がかなり高いのはナイショです
いい野菜♫福来る♡♡ : 終焉とかいう言葉を使うな。
やな053 : 悲観は買いだよ・:*+.\(( °ω° ))/.:+
すずか777 : Teslaのターンが終わったら次は王者NVIDIAのターンなんだよね
じっと待ってます
卓也600 : 何を言おうがエヌビディア一強状態はしばらく続くという事になりますね