エヌビディアだけじゃない!「AI 3銃士」も!24年下期の米国株投資~順張り5銘柄 VS 逆張り5銘柄~
2024年も早くも年後半に突入。下期の米国株式市場を見通すにあたり、焦点は「エヌビディア1強」に代表されるAIブームは続くかどうかに尽きるだろう。もっとも、この疑問は今年初めにも投げかけられていた。蓋を開けてみると、 $エヌビディア (NVDA.US)$の株価は上期に2.5倍になった。他のテックやAI関連株も総じて堅調で、2024年上期は「テック主導のAI相場」となった。
2023年との違いは、米ビッグテック7社(マグニフィセント7)のうち出遅れ組が現れたこと、そして「隠れAI株」として電力株が浮上し、代表格の $ビストラ・エナジー (VST.US)$はエヌビディアに劣らないほど急騰したことだ。その意味でいうと、2024年下期もテック主導のAI相場が続いた場合、中身は少し変わってくる可能性もありそうだ。下記では、テック主導のAI相場を支える2大要因を確認したうえ、”中身の変化”の可能性を考慮した「順張り5銘柄」と「逆張り5銘柄」を取り上げる。
テック主導のAI相場を支える2大要因
1)利下げ観測
米主要経済指標の動向は引き続き、FRB(連邦準備制度理事会)の利下げを支持しており、年後半の利下げ観測は根強い。テックやAI関連株にとって有利な相場環境は下期も続くと予想される。
1)利下げ観測
米主要経済指標の動向は引き続き、FRB(連邦準備制度理事会)の利下げを支持しており、年後半の利下げ観測は根強い。テックやAI関連株にとって有利な相場環境は下期も続くと予想される。
2)テックやAI関連株の成長性
業種別S&P500指数の今後2四半期の予想利益成長率は、依然として情報技術とコミュニケーション・サービスの2大テック業種が他の業種を勝る。中でもAI関連株が高く、AI投資ブームの恩恵は引き続き、関連企業の業績を押し上げると予想されている。
業種別S&P500指数の今後2四半期の予想利益成長率は、依然として情報技術とコミュニケーション・サービスの2大テック業種が他の業種を勝る。中でもAI関連株が高く、AI投資ブームの恩恵は引き続き、関連企業の業績を押し上げると予想されている。
したがって、テックやAI関連株は下期も選好されることとなりそうだ。
他方、上期と違う点は、下期は11月に米大統領選が控えている。大統領選に向けた初のテレビ討論会は6月27日に行われた。討論会の後はトランプ氏の優勢が明らかになった。その後の相場動向を確認してみると、金融や医療保険、石油などトランプ氏の返り咲きで恩恵を受けるとみられるセクター(※)が買われたと同時に、テックやAI関連株も堅調だった。業種別上昇率ではマイクロソフトやエヌビディアを筆頭とする半導体株で構成されている情報技術が引き続き、1位を維持した。
(※6月28日付の「米大統領選で「バイデン対トランプ」再現!注目すべき銘柄は?」も参照されたい。)
トランプ前大統領は保護主義で有名だが、大型減税といった政策は、当時のテック株の株高につながった。テックなどの大企業は一般的に納税額が大きく、減税のメリットは大きい。返り咲きを狙っているトランプ氏は、2025年末に期限を迎える減税の延長と追加減税を訴えている。現実となれば、前回と同様にテック株にとってプラスになる可能性がある。なお、米大統領選をめぐっては依然として不透明感もあるため、下期はボラティリティ(株価変動)が高まるかもしれない。もっとも不透明感が強い相場環境下では、バランスシートが強固で安定的かつ高い利益を創出できる大型テック株の方が有利になりやすい。
順張り5銘柄
「AI半導体 3銃士」+ ビッグテック2社
順張り5銘柄は、下記の基準で選出した。
「AI半導体 3銃士」+ ビッグテック2社
順張り5銘柄は、下記の基準で選出した。
・上期にS&P500指数を上回ったパフォーマンスを記録
・今四半期と次四半期の予想EPS(1株当たり利益)成長率が20%以上(あるいは黒字転換)
・直近の決算発表後にアナリストたちによる目標株価の上方修正率が5%以上
・直近の決算発表で会社側がAIによる業績への寄与が大きくなる見通しだと示した銘柄
なお、AI半導体分野では売上規模や成長性の尺度からすると、依然としてエヌビディアが突出して高い。他方、通期のAI半導体関連の売上高が100億ドル、あるいは数十億ドルを超える見通しになった企業も現れ始めた。それぞれブロードコムとマイクロン・テクノロジーだ。両社もこれからAI投資ブームの恩恵を受ける見通しで、AI半導体をめぐっては「エヌビディア1強」から「AI 3銃士」に変わる可能性もあるかもしれない。
★ $エヌビディア (NVDA.US)$
・今四半期の予想EPS成長率:152.7%増
・次四半期の予想EPS成長率:86.8%増
・平均目標株価:134.77ドル
・株価の上昇余地:5.1%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS成長率:152.7%増
・次四半期の予想EPS成長率:86.8%増
・平均目標株価:134.77ドル
・株価の上昇余地:5.1%(7月3日終値対比)
エヌビディアは、AI半導体市場で世界シェア8割強を占める。 $マイクロソフト (MSFT.US)$や $アルファベット クラスA (GOOGL.US)$、 $メタ・プラットフォームズ (META.US)$などのAI向け投資拡大の恩恵で業績拡大が続いている。過去6四半期連続で市場予想を上回る業績を発表し、アナリストたちは後追いで目標株価を上方修正している。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、生成AIを新しい産業革命の始まりだとし、今後は1年リズムで新製品を打ち出す計画を示した。現在最も売れているAI半導体H100の次世代品であるH200と、最新AI半導体のBlackwellに対する需要はいずれも好調。両製品の出荷開始(年後半)とともに業績への貢献も大きくなると予想される。
★ $ブロードコム (AVGO.US)$
・今四半期の予想EPS成長率:47.9%増
・次四半期の予想EPS成長率:63.7%増
・平均目標株価:1888.71ドル
・株価の上昇余地:9.2%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS成長率:47.9%増
・次四半期の予想EPS成長率:63.7%増
・平均目標株価:1888.71ドル
・株価の上昇余地:9.2%(7月3日終値対比)
ブロードコムの事業内容は、半導体ソリューションとインフラストラクチャー・ソフトウェア(クラウドサービス含む)の二本柱。クラウドサービスは2022年に買収したVMwareが担う。AIブームの恩恵を受ける2つの事業を抱えている点は、同業他社の中でもユニークと言える。主要顧客はアップルに加え、カスタム半導体の自社開発を進んでいるアルファベットやメタが並ぶ。無線向け半導体のイメージが強いブロードコムだが、エヌビディアの主要顧客であるハイパースケーラー向けにカスタムAI半導体も作っている。AI半導体関連の売上は昨年から急増。会社側は需要好調を反映し、通期のAI関連半導体の売上高見通しを従来の100億ドルから110億ドルに上方修正した。エヌビディアと直接対決はせず、AI半導体市場のパイの拡大による恩恵が受けられる。
★ $マイクロン・テクノロジー (MU.US)$
・今四半期の予想EPS:黒字転換し、1.11ドルに(前四半期は0.45ドル)
・次四半期の予想EPS:黒字転換し、1.73ドルに
・平均目標株価:163.88ドル
・株価の上昇余地:19.8%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS:黒字転換し、1.11ドルに(前四半期は0.45ドル)
・次四半期の予想EPS:黒字転換し、1.73ドルに
・平均目標株価:163.88ドル
・株価の上昇余地:19.8%(7月3日終値対比)
マイクロンは半導体メモリー大手。AIデータセンターで不可欠なHBM(広帯域幅メモリー)市場において世界シェア3位(1位はSKハイニックス、2位はサムスン電子)。これまでHBM市場で後れを取っていたが、今年から急速に追い上げを図っている。2月にエヌビディアのAI半導体「H200」GPUに搭載する「HBM3E」の量産を開始。エヌビディア向けに製品供給を始めたことで、今後はシェア拡大が期待できる。直近の決算発表で経営陣は、「データセンター製品に対する需要は、AI主導で旺盛だ」と表明。HBMの売上高は2024年8月期に数億ドル、2025年8月期には数十億ドルに達する見込みだと示した。黒字転換後、業績回復は続く見通し。
★ $アマゾン・ドットコム (AMZN.US)$
・今四半期の予想EPS成長率:101.5%増
・次四半期の予想EPS成長率:63.1%増
・平均目標株価:220.63ドル
・株価の上昇余地:11.7%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS成長率:101.5%増
・次四半期の予想EPS成長率:63.1%増
・平均目標株価:220.63ドル
・株価の上昇余地:11.7%(7月3日終値対比)
アマゾン・ドットコムは米オンライン小売最大手かつクラウド最大手。消費者が支出に慎重な姿勢を取っているなか、直近の決算では電子商取引部門の売上高が市場予想をわずかながら下回ったものの、クラウド部門は過去1年で最も高い伸び率を記録した。AIサービスを含めた技術プロジェクトへの企業の支出再開が追い風となった。経営陣は、生成AIは数十億ドル規模の年間売上高となる見通しだと表明。クラウド部門は収益性が高く、同社の業績拡大を支えると予想される。
★ $アルファベット クラスA (GOOGL.US)$
・今四半期の予想EPS成長率:28.6%増
・次四半期の予想EPS成長率:20.6%増
・平均目標株価:197.57ドル
・株価の上昇余地:6.3%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS成長率:28.6%増
・次四半期の予想EPS成長率:20.6%増
・平均目標株価:197.57ドル
・株価の上昇余地:6.3%(7月3日終値対比)
アルファベットはグーグルを傘下に持つ。検索エンジンやオンライン広告、クラウドサービスを提供。グーグルは検索エンジンで世界最大手。グーグルクラウドはAWS、マイクロソフトのAzureと並ぶ3大クラウドベンダー。AI関連製品・サービスの投入がマイクロソフトに後れを取っていた関係で、それによるオンライン広告やクラウド・コンピューティング事業への影響が懸念されたが、業績は予想外に堅調。直近の決算では、クラウド・コンピューティング部門の成長が寄与し、売上高は市場予想を上回った。AI向け投資がクラウドサービスの需要促進に貢献。経営陣は、「AI機能の収益化についてうまく対応できると確信している」と表明。
逆張り5銘柄
出遅れのビッグテック2社 + AIソフトウェア 3社
出遅れのビッグテック2社 + AIソフトウェア 3社
逆張り5銘柄は、上期にS&P500指数を下回ったパフォーマンスとなったテック株のうち、AI関連の材料が業績への好影響を与える可能性が高くなっている銘柄を選んだ。マグニフィセント7のうち出遅れの2社に加え、AI半導体に対して出遅れ感が鮮明なAIソフトウェア株にフォーカスした。AI相場が2年目に入ってくる中、データセンター投資で恩恵を受ける半導体からAIサービスの導入で収益を上げるソフトウェア株へ関心が向かうと予想されるためだ。
★ $セールスフォース (CRM.US)$
・今四半期の予想EPS成長率:69.2%増
・次四半期の予想EPS成長率:80.9%増
・平均目標株価:294.93ドル
・株価の上昇余地:13.0%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS成長率:69.2%増
・次四半期の予想EPS成長率:80.9%増
・平均目標株価:294.93ドル
・株価の上昇余地:13.0%(7月3日終値対比)
セールスフォースはソフトウェア大手。クラウドベースのビジネス支援ソフトでは世界最大手。顧客管理システム(CRM)やアプリケーションを開発する。AIを活用したワークフローの自動化も提供。直近の決算発表で経営陣は、「我々は、AIを活用して顧客とまったく新しい方法でつながる大きなチャンスの始まりにいる。世界No.1のAI CRM企業として、我々は今後10年間で企業がAIの可能性を実現できるよう支援する絶好の立場にある」と強調。顧客基盤を踏まえると、AIによる収益化は比較的容易と考えられ、業績拡大が期待できよう。
アドビはソフトウエア大手。PDFの作成や編集などでおなじみの会社。主力のDocument Cloud事業では、PDFがビジネスと消費者のワークフローを⾃動化するための世界標準となっており、Acrobatはこれらのドキュメントの表⽰・編集・共有・共同作業に最適なプラットフォームとなっている。同社はほぼすべての製品やサービスにAI機能の搭載を進めており、それによる新規獲得とマネタイズを強化している。その成果について懐疑的の見方もあったが、直近の決算発表ではその懸念を払しょくした。経営陣は、自社製品にAI機能を組み込む取り組みが顧客の間で支持を集めていとし、「AIのパイプラインを収益化に変えることに注力していく」と表明。AI製品・サービスのマネタイズは一段と進む可能性があろう。
★ $ジースケイラー (ZS.US)$
・今四半期の予想EPS:黒字転換し、0.70ドルに(前四半期は0.12ドル)
・次四半期の予想EPS:黒字転換し、075ドルに
・平均目標株価:235.03ドル
・株価の上昇余地:18.5%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS:黒字転換し、0.70ドルに(前四半期は0.12ドル)
・次四半期の予想EPS:黒字転換し、075ドルに
・平均目標株価:235.03ドル
・株価の上昇余地:18.5%(7月3日終値対比)
ゼットスケーラーはクラウドベースのサイバーセキュリティ企業。世界中の企業向けに、ビジネスの簡素化と保護を実現するソリューションを提供。5~6年前からAIに多額な投資を行ってきており、今はプラットフォーム全体がAIによって支えられている。フォーチュン500企業の4割以上が顧客。経営陣は今後、それの倍に当たる85%を顧客に取り込める自信があると表明。直近の決算発表ではARR(年間経常収益)が100万ドルを超える顧客が前年同期比31%増加。顧客拡大などを反映し、会社側は2024年度通期の売上高予想について3回上方修正した。今後について、AIワークロードを含む新しいユースケースや新製品により、TAM(獲得可能な最大市場規模)は従来の700億ドルに加え、新たに100億ドル~200億ドル増加する見込みだと示した。黒字転換後、業績回復は続く見通し。
アップルはスマートフォン、PC、タブレット大手。iPhoneやMac、iPadなどの消費者向け製品で、iOSやiCloud、ApplePayなども展開。iPhone販売の鈍化やAI戦略の遅れを嫌気し、上期の株価パフォーマンスはマグニフィセント7のうち、下位から2番目だった。しかし、足元では見直し買いが進んでいる。アップルが6月10日の世界開発者会議(WWDC)でついにAI機能を発表したためだ。AI機能搭載のiPhoneは買い替えサイクルを促す可能性があり、秋に発表される新製品に対する期待は大きい。
★ $テスラ (TSLA.US)$
・今四半期の予想EPS成長率:25.4%減
・次四半期の予想EPS成長率:20.8%増
・平均目標株価:194.19ドル
・株価の上昇余地:-21.2%(7月3日終値対比)
・今四半期の予想EPS成長率:25.4%減
・次四半期の予想EPS成長率:20.8%増
・平均目標株価:194.19ドル
・株価の上昇余地:-21.2%(7月3日終値対比)
テスラは米EV(電気自動車)最大手。EV販売の鈍化やAIをめぐる進展遅れが嫌気され、株価は年初から2割下落。ただ、6月中旬以降は急反発。EV販売に回復の兆しが示されたほか、AIをめぐる進展期待も買い材料に。目先は8月に発表される予定のロボタクシーに注目が集まっている。業績悪化を含めた悪材料はある程度株価に織り込んでいるため、今後は悪材料より好材料に反応しやくなるかもしれない。(※7月3日付の「NVIDIAからテスラへ株高のけん引役が交代?テスラ株、次の起爆剤は?」も参照されたい。)
24年7月5日作成 マーケットアナリスト Amelia
出所:会社資料およびBloombergよりmoomoo証券作成
出所:会社資料およびBloombergよりmoomoo証券作成
免責事項:このコンテンツは、Moomoo Technologies Incが情報交換及び教育目的でのみ提供するものです。
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